【夜のハルジオン 2】
毎日、リアルは退屈で不安。
朝なんて憂鬱で仕方ない……
そんな日々の中で、紫苑はユキと話すのが楽しみになっていた。
仕事の合間には、SNSで何かしらを呟きユキが反応してくれるのが嬉い。
紫苑はユキが気になっていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
家に帰ればユキと時間を合わせてログインし、一緒にオンラインの世界で通話をしながら遊ぶ。
耳障りのいい声を聞きながら、ゲームはそっちのけでただ会話する時間だけが長い日もあった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ユキは大学生。
就職先は決まっていて、春には新社会人だ。
自分の進路も決まって、息抜きの時間もちゃんととれる余裕もある。
ただ『彼女』と言う存在は、今まで出来た事がない。
友達とかそういうものから発展するのだろうか?
告白するとか、しないとか…そういう類いの感情も、ユキはよく分からない。
でも、紫苑との時間は楽しい。
今日もユキは紫苑と夜の時間を過ごす。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
紫苑はユキへの感情が次第に膨れ上がっていた。
行き場に迷う感情を、どうすればいいのか相談したのは、SNSやゲームで友達になったツキだった。
「つっきー……大変です。」
「どうした!」
ツキとの付き合いは長く、顔も合わせた事もある。
時間が合えば2人は通話もよくしていた。
「実は……」
通話のイヤホン越しに、紫苑はツキにユキへの感情を話し始めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「春だねぇ~!」
紫苑の話を聞き終えたツキは、一言そう言う。
ツキの言葉に照れながらも、紫苑は「はぁ……」と溜息をつく。
「これは……ユキくんに言ってしまっても良いんだろうか。」
紫苑は衝動的に動きたくなるタイプだ。
恋の駆け引きなんて、焦れったい事はしたくない。
「そうしたいなら、そうすれば良いよ!」
ツキは背中を押して欲しいであろう、紫苑の気持ちを察して言う。
「もし、ダメだったら……反省会して下さい。」
「あはは!わかったよ。とりあえず、結果報告待ってるわ。」
紫苑は久しぶりにする恋愛の感情に、胸がざわついて仕方なかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ツキと話した後、紫苑はいつもの様にユキと通話しながらゲームを楽しむ。
そろそろ、終わろうと言う雰囲気を、紫苑が「あのね…」と遮る。
「どうしたの?」
ユキの言葉が途切れると、紫苑は話し始めた。
「ユキくん、こんな事言われて困るかもしれないけど……」
紫苑はとにかく感情のままに言葉を並べた……
ユキとの時間が、楽しみになった日々。
ゲームをするよりも、会話に夢中になった時間。
ユキの声や話すテンポが心地いい。
気付けばユキに恋心を抱いていた事。
「ーーだから、遠距離になっちゃうけど付き合って欲しいです。」
紫苑は言い切るまで、静かに言葉を聞いていたユキ。
「はい、宜しくお願いします。」
通話のイヤホン越しに、両手で顔を隠しながらユキはそう答えた。
「すごく嬉しい。」と、零すユキに紫苑は気持ちを昂らせた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
紫苑とユキの物理的な距離は、県を5つほど跨ぐくらい離れている。
それでも互いに気持ちを優先したものの、紫苑は不安と喜びの狭間にいた。
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