【アカネ落城 8】
柊吾(とうご)は42歳のオーナー。
茜達とは違うショップのオーナーだが、仕事が出来る男として有名だ。
仕事が出来ると聞くと堅物の様なイメージだが、柊吾は口から生まれて来たような人。
人を笑わせるのが得意で、周りを明るくさせる。
そんな柊吾が、茜と別れたと犀太から聞くと「じゃあ、俺行っても良いかな?」と言ったのだ。
犀太とは友人だったが、気持ちには正直になりたいと言う柊吾に「いいよ。」と、犀太は答えた。
そして、茜を呼び出して食事に誘って気持ちを伝えた柊吾。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ーー数ヶ月後。
茜は椿を連れて、今日も居酒屋にいる。
「で、何で柊吾さんとはダメだった?」
椿の質問に茜は「なんだかなぁ~!」と、嘆く。
結果、柊吾とは別れた茜。
茜はサラダを摘みながら話し始めた……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
始めは、柊吾とは上手くいっていたのだ。
疲れた茜を甘やかし、楽しい時間を提供する柊吾。
色々な場所へ茜を連れて行ってくれた。
床上手で、柊吾の腕の中で愛らしく鳴く。
仕事に対する的確なアドバイス。
充分に満たされていた筈だった。
ただ、柊吾は『結婚』を仄めかし始めたのだ……
これに茜は前向きになれなかった。
そもそも、茜には結婚願望はない。
一緒に居て、生活が安定して、思いやれて、満たされていればいい。
結婚と言う契約がなくとも、本人達だ良ければ幸せだ。
だから、柊吾だからと言う訳ではなく、結婚に対する必要性を感じていなかった。
何故、それが必要なのか茜には理解できなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ーーだから、別れたよね。」
茜は淡々と話し終えると、グラスを空にする。
「結婚したくなった人が見付かるまで、恋愛経験を重ねればいいよ、そっちのが茜らしい。」
椿が「そう思わない?」と、声を掛けたのは棗(なつめ)だ。
今日は3人でいつもの居酒屋へ来ている。
棗は椿が可愛がっている後輩の男。
23歳と若いが、考えが大人びている事が気に入って、椿は気にかける様になっていた。
茜達の系列店に居る棗は、たまにヘルプで椿が棗の居るショップに来る為、仲良くなっていたが飲みに誘われたのはコレが初めて。
椿が何となく、飲みに行こうと言ったものの、タイミングがなくて「棗くん、ヒマだったら来る?」と、今日になって誘われたから、来てみたのだった。
茜の恋愛事情は、同じフロアの柊吾から聞いていたので、棗も知っていた……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日は休みだったので、3人で語り明かし、朝日が顔を出す頃に解散した
そして、電車の改札前で椿とは別れる茜。
椿は茜と棗の姿を改札を通る前に見ると、棗と共に茜はバスターミナルへ向かっていた。
「棗くん、地下鉄だったよね?」
その疑問を後日、茜に話すと「ヤバイ!」と顔を赤くして話すのだった。
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