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サッカード素人の相模原市民が浦和駒場スタジアムで90分間の夢を見た話

7月7日、天皇杯第3回戦、浦和レッズ対SC相模原。

ついにこの日がやってきた。
SC相模原にとって、創設初のJ1クラブとの公式戦。

3週間前、天皇杯2回戦を勝ち上がったときから、ずっと待ち望んでいた浦和レッズ戦。

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試合会場は、浦和レッズサポーターからは「聖地」とも呼ばれる浦和駒場スタジアム。
近年多くの浦和ホームゲームが行われている埼玉スタジアム2002ができる前のホームスタジアムで、長年レッズを応援する多くの人の思い出と熱狂が染み付いた、この国のサッカーを牽引してきた由緒あるスタジアムの内の1つ。


仕事を早上がりして、浦和駅からSC相模原・ユーリのユニフォームを着て浦和駒場スタジアムまでの道のりを歩いた。
周りはほぼ赤いユニフォームで、アウェイの雰囲気が心地よかった。

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その狭さと隔絶性から、「出島」の異名を持つアウェイスタンドに入場した。

スタジアムに入って感じたのは、ピッチを囲うように張られたいくつものレッズサポーターの横断幕の圧。

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観客上限5000人での開催ではあったものの、横断幕の圧には正直気圧された。
この国のサッカーの最前線を走ってきたクラブとそのサポーターが生み出す威圧感を嫌というほど感じた。



試合は、前半浦和が攻撃を仕掛け続ける展開が続いた。

相模原陣内で、岩波・槙野・山中と、流石に自分も名前を知っている錚々たるDF陣と両サイドにボールを回され、真ん中を割る機会を常に伺われていた。

浦和が織り成す檻の中に、相模原が囚われていたかのようだった。

敵味方が入り乱れるエリアでは何度も何度も武藤は斜めに走り、相模原のペナルティエリア前では興梠が何度も何度も相模原DF陣の裏を取る走りを見せ、いつ致命的なパスが通ってしまうかとワンプレーワンプレーを緊張しながら見ていた。

試合開始から45+3分が経ち、0-0のまま前半を終了し折り返しを迎えるまでは、心臓がバクバクしっぱなしだった。


後半、しばらくは前半と同じように浦和の攻勢を流す相模原という構図が続いたが、中盤の選手交代で潮目が変わった。

相模原が#9ユーリを投入するや否や、ユーリを起点に一気にカウンターを仕掛ける回数が増えていった。

だが、その間に放った3本のシュートはいずれも浦和ゴールの枠を捉えることができなかった。


後半87分、相模原の選手交代と時を同じくして投入されていた浦和レッズのエースストライカー、キャスパー・ユンカーが相模原の隙をつき高い位置でボールを奪い取ると、そのままゴールまで一直線に駆け上がり、決勝弾を叩き込んだ。

あまりにも一瞬のことだった。
ボールチェックの素早さと、高い位置でボールを奪いに来るときの"気迫"。
自分が今まで見てきたJ2リーグのどのサッカーでも見られなかった、圧倒的な存在感を放っていた。

試合はそのまま終わり、SC相模原のクラブ初の天皇杯本戦は、3回戦で幕を閉じた。



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敗戦後、「出島」に詰め掛けたサガミスタに挨拶をする相模原の選手・スタッフが、僕はどこか誇らしかった。

2008年、相模原市の小学校の校庭から始まったクラブ・SC相模原は、13年の時を経てついに、日本有数のビッグクラブ・浦和レッズとこれほど堂々と戦うまでになった。

サッカーを見るようになる5ヶ月前、まさか自分がドアウェイの浦和であのレッズと真剣勝負を繰り広げる地元クラブを応援しているとは思いもしなかった。

サッカーには、夢がある。


レッズイレブンを上回る高さを見せた#23平松と#3クンデにしびれた。
あの"赤の5番"・槙野智章とフィジカルバトルを繰り広げた#9ユーリに胸が熱くなった。
ピッチを縦横無尽に駆け回り、神出鬼没の動きで浦和を翻弄していた#17星に、未来への光を見た。


浦和レッズは今年相模原が戦ってきたどのクラブよりも強かった。

"もう来ない"と思ったその"もう一歩"が入ってくる感覚。
鮮やかでなめらかなファーストタッチ。
そして何より、正確でミスの無いパスワーク。

力の差が無いと言ったら、正直嘘になるだろう。

けれども、相模原は本当に善戦したと思う。
個々、チームの力を出し切った。

そして、負けたときに、「悔しい」と思えたことが、誇らしかった。


試合後、出島に詰め掛けた相模原サポーターから送られた拍手を返す浦和GK・西川周作の姿が本当に格好良かった。

浦和レッズの堂々とした強さを思い知った。


そして、いつか相模原がこのビッグクラブと真剣勝負をするのが当たり前になる、そんな時代がやがて訪れると感じた。


浦和駒場スタジアムでSC相模原が戦った90分。
それは、いずれ当たり前になるであろう相模原の未来を見た、夢の時間だった。

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