「暗黒面の寓話・#22:舎弟」
(Sub:ヤンチャな弟って心配だよね、、、)
また、俺の舎弟の話をする。
俺はとあるチームのメンバーで、一人のアニキと数人の舎弟がいる。
そのチームは、武力をもって相手を説得する武闘派のネゴシエーターだ。
うちのチームは地元のM7銀河界隈では負け知らずの最強グループだ。
チームには“鬼強い”リーダー(長兄)とNo2の俺、そしてその下に数人の舎弟がいる。
メンバーはみな曲者ぞろいだが、互いを“兄弟“と呼びあって硬い絆で結ばれている。
闘争に明け暮れる俺達だからこそ、ともに戦い生死を共にした仲間への信頼は厚いのだ。
すぐ下の舎弟(No3)は、世間からは“人切り七(ななつ)”、“七人様”、などと呼ばれる手が付けられない暴れ者だったのだが、最近は ”俺の説教“ の効果がでてきて少しだけ自重ができるようになってきた。
その下の舎弟(No4)は、実によくできたヤツだ。
腕っぷしも強いが何といってもやつは頭がいい。
うちのチームには珍しいインテリというやつだ。
少し前に俺がドジを踏んで2度目のお務め(更生プログラム)になりそうになった時、やつが自分から代替わり(身代わり)をかってでてくれたのだ。
《兄貴はチームの要です。今、兄貴を失うわけにはいきません》
《自分が兄貴の替わりに”お務め”をしてきます。》、
そう言ってヤツは俺の身代わりに受刑してくれたのだ。
ヤツからこのセリフを聞いた時、俺は漢泣きに泣いた。
(後日、その借りを返す為、俺は超高価なブレスレットをヤツに送った)
そして、ヤツはその器量が世間に認められて大きく “漢” をあげた。
刑期を終えて戻ってきたヤツは、裏社会では尊敬を込めて “帰ってきた漢” と呼ばれている。
次の舎弟(No5)もかなりの変わり者だ。
そもそも舎弟(?)と呼んでいいのかもよく分からない。
ヤツは “アンドロギュノス(両性具有者)” なのだ。
傍からみると男の部分が多いようにも思うのだが、本人に言わせると男と女の両方が拮抗しており、メンタルに関しては女の部分にイニシアチブがあるらしい。
それはヤツ(?)の戦闘スタイルにも表れており、徹底して相手をシバいてから最後に首を捥ぐ、という “キレたお姉“ のような戦い方するのだ。
それを見ているとむやみにヤツを怒らせることがないようにしようと思えてくる。
そして、今現在、、、
俺の最大の “悩みの種” が新しくチームに加わった新入り(No6)だ。
こいつはとにかくイカレテいる。 頭のネジの飛び方がハンパない。
そもそもこいつは ”とある筋の大物” の子弟だったのだが、その親元で暴れ散らかして(DV)、とうとう扱いきれなくなった親御さんが “つて” を頼ってうちのリーダー(長兄)に預けてきたという経緯があるのだ。
どうも、かつて暴れ者として有名だったうちの “七(なな)” を躾けた実績をかわれてのことだったらしい。
裏社会の大物からの頼みとあってリーダー(長兄)も断ることができなかったようだ。
イカレタヤツとの付き合いは “七(なな)” の件で慣れてはいたが、コイツは更に厄介だった。
こいつは、何かと言うと “自爆“ しようとするのだ。
目が合ったというだけで相手に抱き着いて、“ドカ~ンと一発”、自爆する。
こいつは格闘技も、光線技も、有り余る才能があって、素直に鍛練を積めばすばらしい戦闘力を身につけられたはずだった。
けれどヤツは、その才能を ”斜め上の方向” へ使いきって、
“再生可能な自爆(ウリトラ・ダイナマイト)“ という仇技を身に着けてしまったのだ。
そしてヤツは、その行為(自爆)に心酔しきってしまった。
何かにつけて自爆したがり、次第に他者を巻きこんでそれをするようになったのだ。
フラフラと近づいて来ると、一瞬で抱き着いてきて、
“ニタァ~” と笑いながら囁きかけてくる。
「オレと一緒に爆ぜて気持ちよくなろうよ」
「一緒に小さなカケラになって、まぜこぜになろ~」
それはもう、身の毛もよだつ恐怖でしかない。
俺自身も、自爆のお供にされかけたことがあり、その “気色悪さ” を身をもって体験している。
ヤツ自身は、自爆した後、しばらくすれば元通りに再生されるので性懲りもなく自爆を繰り返すのだ。
因みに、その再生の仕方も気色が悪い。
粉々に砕け散った体のカケラはそれぞれが ”生きて” いて、集結して元に戻るために個々のカケラが独自に ”足” を生やして、もぞもぞと地面をはい回りながら集まってくるのだ。
また、何度も爆裂を繰り返しているせいか、やつの体をまじかで見ると、細かなヒビが無数に入っており、ザラザラとした鱗のような体表になっている。
ヤツはそれを誤魔化すために “七(なな)” のように躰を赤く染めているのだ。
そんなヤツは、当然、裏社会でも異質な存在として恐れられており、“七(なな)” ともどもうちのチームの “狂犬二枚看板” となっている。
ヤツの名前は “まんたろう” といい、巷では “自爆王子”、“発破太郎”、などと呼ばれて恐れられている。
厄介な交渉がもめたときなど、《後日、“まんたろう” を伺わせます》、というだけで大概の相手は “イモを引く“ ほどなのだ。
「もっと、もっとだぁ!」、 「もっと威力がある爆裂がしてえ!」
そう叫ぶ、ヤツの目は狂気に満ちている。
正直なところ、俺はヤツがこのまま “自爆みち” を突き進んでいくのが心配でならない。
爆発の威力が増すたびに、砕け散るヤツの破片がどんどん小さくなってゆくのだ。
このまま破片がどんどん微細化していったら、いつか再生ができなくなってしまうのではないかと、気が気でならない。
「暗黒面の寓話・#23:総会」|十里栗 (note.com)
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