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主治医との対話

精神科通院6年目のある日の診察

(主治医)体調はどうですか?

(私)体調は大丈夫です。毎日暑くて大変です。

(主治医)そうだよね暑いよね。部屋が暑いの?

(私)部屋は涼しいですが通勤が大変で。遠くて。

(主治医)遠くから来てるもんね。幻聴はある?

(私)全然ないです。
気持ちが落ち込む時があります。
生きているべきではないと思うことがあります。

(主治医)うーんそれは問題だね。
あなたは恵まれているほうだよ。
もったいないよ。いつ思うの?

(私)生理のときとか…。

(主治医)なるほど、生理か。生理前に気持ちが落ち込んじゃうのかな。生理はちゃんときてる?

(私)はい、ピル飲んでるのできてます。あと仕事終わって疲れて満員電車で帰っているときとかに思います。週5日働くのを60歳まで続けるのかと思います。理想の生活は、緑の中で本を読みながらコーヒーを飲む、みたいな。

(主治医) あーわかる気がするな。カフェやったら?まあ、仕事は生きるためにやるものという割り切りも必要だよ。理想の生活のためにがんばるので良いんじゃない?

(私)そうですね。

(主治医)何か思うことがあるのかな?

(私)私は子供は欲しくないけど彼氏は相談したいって言います。

(主治医)薬飲んでたり病気持ってたりすることはあまり影響ないよ。心配しすぎなくて大丈夫。

(私)私は自分が生まれ持ったものが嫌で、それが受け継がれるのかと思うと嫌です。

(主治医)例えば?

(私)運動神経悪いとか、見た目とか。

(主治医)運動神経悪いんだ(意外そうな顔)。見た目はそんなに悪くないと思うよ。私だって自分の見た目とか中身で嫌なところあげればキリがないよ。今の人って顔ちっちゃいよね。あなたの見た目とか中身とかを好きになってくれる彼氏がいるんだよ。医者らしくないこと言うけどね、計画的に子供作るのもありだけど、なりゆきだよ。そういうことして、できたらその時考えればいいの。自分によく似た子供が生まれるんだよ。

(私)嫌です。

(主治医)愛せるか不安なんでしょう。大丈夫。ちゃんと愛せるようになるから。私だって、あっちはシュッとしててあっちはかっこよくて、でも自分の子供が一番だよ。薬とか病気とか、そういうのが重荷になってるんでしょう。大丈夫だから。

(私)私も自分は幸せな生活をしていると思うんですけど、希望がないんですよね。

(主治医)どういうこと?

(私)貯金が少ないとか収入が少ないとか。

(主治医)あーなるほどそういうことか。希望はあります。

(私)働くのは生きるため、じゃあ生きるのは何のため?って思います。

(主治医)考えすぎなくていいんだよ。自信を持って。みんな根拠のない自信を持って生きてるんだ。しばいぬさんだって、ちゃんと働いてるし、彼氏もいるし、恵まれているんだよ。

(私)考えすぎちゃうんですよね。

(主治医)あなたは頭の良い人だからね、考えすぎちゃうんだよ。自信を持って。

(私)彼氏に言ったら、働くのは2人で楽しく暮らすためでしょって言われます。

(主治医)うん、本当にそうだよ。人生の転換点にいることも関係ある気がするな。結婚が近づいているとか。マリッジブルー的な。

(私)そうですかね…(まだ婚約もしてないが)。

(主治医)とにかく、自信を持ってください。もったいないよ。お薬はまた2ヶ月分で大丈夫?

(私)はい。

(主治医)もし体調悪くなったら早めにきてね。


子供の頃母に、私は何歳で結婚するのが良いと思う?と聞いたことがあります。母は、私が短大卒で26歳で結婚したから、あなたは4年制大学に行くだろうから28歳とか?と答えました。私は、なるほど、プラス2年か、と納得しました。

病気になる前までは、私は28歳までに結婚して、子供を産んで専業主婦になって、子供が中学生になったらパートを始める、という人生を思い描いていました。

ところが、病気を発症して、自分がふつうの人ではないことに気づき、皆が当たり前にできることが私にはできないのだと思うようになります。
私だって、美人でお金持ちで健康であればなんの疑いもなく子供を望んでいたことでしょう(ただし、無痛分娩に限る)。

主治医は、私がそんな話をしたことがないにも関わらず、私の中の葛藤を読み取って、的確な言葉をかけてくれています。診察が終わった後は気持ちが楽になり、そうか、存在理由とか、病気の発症原因とか、そんな難しいことは考えなくて良いんだ、と思いました。

それでも、私はずっとくよくよと考えてしまうのでしょう。
もう一種のあきらめも必要なのです。私という人間はこれだからこの身体と生きていくしかない、と。

少なくとも、恋人は私と暮らしたいと思ってくれた。
それだけで十分なのです。

私の周りの人は優しいです。

家族、恋人、友人、主治医、職場の人・・・。

私は彼らに散々迷惑をかけてきたであろうにそれでも優しい。

優しい人になる。

これを目標にのんびりと生きていきます。

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