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暗闇で俯いているような気分になるドラマ

2023 いっきみ 8

ダーマー
モンスター:ジェフリー・ダーマーの物語

(2022)

先日、2023年のエミー賞ノミネートが発表された。
その中にNetflixの『ジェフリー・ダーマーの物語』が入っていた。

重たい作品、でも、あの構成脚本、俳優の演技、その評価はやっぱり外せないよなあと、しみじみ。

今年に入っていっきみしたドラマの中でも一番ヘヴィな作品。

アメリカはミルウォーキーでの連続殺人事件の犯人。
10数年の間に17人もの青少年を殺害し、自らの部屋で死体を処理し、その死体からさまざまな部位を切り取り自室の冷蔵庫などで保管。彼が捕まった時には彼の部屋にはいくつかの頭蓋骨も見つかったという。
「ミルウォーキーの食人鬼」とも言われる。
連続猟奇殺人事件の実話に基づいたドラマ。

犯人のダーマー自身の子供の頃のエピソード、成長していく過程から殺人鬼として捕まり、殺害されるまでを全10話でまとめてある

もちろん殺人者ダーマーの猟奇的心理的動向も恐ろしいのだけれど、殺害された人たちの人種、セクシャリティ、それに対する 事件を囲むさまざまな人たちの根底にある大小のレイシズムが、事件解決するまでの時間に大いに絡んでくる。

連続ドラマだからか、さすがにグロいシーンは少なくて、心理描写、殺人者を囲む周りの人の動向やセリフ、演技などで、表現されてる。

見終わったあと、殺人者ダーマー役(エヴァン・ピーターズ)とその父親役(リチャード・ジェンキンス)この二人の俳優は、このヘヴィなドラマの世界から日常に無事に脱することが出来たのだろうか?と、とても心配で仕方なかった。

それくらいに、それぞれの役者のはまり込んだ素晴らしい演技で見せてゆくドラマだ、と、思っていたら、案の定‘23年のエミー賞では主演、助演ともにこの父子を演じた二人がノミネート。これは納得。

グロいシーンは苦手だけど、シリアルキラーものはわたしの好きなジャンル。

ここ数年はストリーミングで海外の実話ベースのできる限り苦手なグロいシーンが少ない連続殺人事件ドラマやドキュメンタリーを見続けている。

「切り裂きジャック」や「ダーマー」やいろんな映画やドラマ、欧米のドキュメンタリーで見る女性連続殺人事件とか

その殺人者の心理的動向も興味深いのだけれど、多くの連続殺人事件が連続殺人事件となって時間が経過してしまう底辺には何かしらのレイシズムが潜んでいたんだな、というのがここ数年の発見。(今更?苦笑)

このNetflixのドラマ『ジェフリー・ダーマーの物語』はその世の中の状況を分かりやすく具体的にしてドラマ化されているように思えた。

あるアメリカの連続女性失踪殺人事件のドキュメンタリーで「街に派手な姿で遊びに行ってクスリでもして変な奴に捕まったんじゃないか」と言われる、娘はそんな子じゃない」と被害者の親はいう。

けれど捜査する側に警察官の大方がそういう発想を持っていたら....
これが白人の地位のある男性が被害者だったら?と。

ちゃんと対応していると捜査する側が言ってはいても、世の中に蔓延る大小様々なレイシズムのタネがこういった連続事件早期解決を阻んでいるのかもしれないし、シリアルキラーと呼ばれる人たちはその心理的弱さのために、意味のない次の殺人を繰り返さなければならなかったのかもしれない、と。

ちなみにNetflixではジェフリー・ダーマー自身の肉声や当時関わった人たちへの取材で語られるドキュメンタリーもあるけれど、ドラマより実際の証拠写真が出てきてドラマ以上にグロい気がしたので、ご覧になる方はご注意ください。
(わたしゃ見なけりゃよかったと反省した)

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