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【24/05/15】香港、今とこれから

GSJの認定専門家をしております、佐々木久郎です。
渋谷にあります中村法律事務所で弁護士をしておりますが、
もともとは日系メーカーで15年ほど製品設計をやった後、
事業開発部門に異動して、クロスボーダーの事業提携や
M&A案件を数多くやってまいりました。
 
このコラムでは、「自分でやるか、他社と組むか」という
視点で連載をさせて頂いており、今回は「その3」を
お送りするはずなのですが、先日香港を訪れる機会が
ありましたので、少し横道にそれまして、
「香港の今とこれから」についてお伝えしたいと思います。
 
「アジア随一のビジネスハブ。香港は、中国およびアジア
地域全体の膨大なチャンスを活用できる、理想的な位置
にあります。」
これは、中華人民共和国香港特別行政区政府の公式メッセージ
です。
 
本当にそうでしょうか。
 
ご案内のとおり、香港は長らく英国の植民地であった関係
から、1972年にニクソン大統領が訪中し、米国が中華人民
共和国を事実上承認した後も、「西側への窓、ビジネスハブ」
として機能してきました。
このことは、1997年に香港の
主権が英国から中国に返還された後も、変わることが
ありませんでした。
中国がいわゆる一国二制度を認めたからです。
 
しかし、2019年に香港で起きた大規模な反政府デモを
きっかけとして、2020年に香港国家安全維持法が制定され
ました。また、中国本土政府による一国二制度の保証は
2047年には失効するとされています。
これらの事情を踏まえると、状況は大きく変化したと
言わざるを得ません。
 
先日、私は香港を訪問して、香港弁護士会の会長などと
懇談する機会を持ち、また、日本の最高裁判所に当たる
香港終審法院の長官などの話を聞く機会がありました。
これら香港法曹界の主要メンバーの話は全て共通の骨格
を持っていました。

すなわち、
①一国二制度の堅持、
②英国準拠の現在の法制度の維持
③国家安全維持法関連事案の公正な処理
④司法権の独立
という四本柱です。
 
上記の懇談などは、すべて外国人である私に対する
公式発言です。公式発言には常に裏と表があるわけで、
これを裏返してみれば、2047年には、一国二制度が
なくなり、香港が「西側への窓」であることを実質的に
支えている英国準拠の法制度もなくなる、という現実の
危険を香港法曹界の主要メンバーが肌身に感じている
ことを意味しています。
 
これをビジネスの世界に翻訳すれば、これから20年余り
の間に、中国・東南アジア関係ビジネスのハブとしての
香港は消滅することを意味しています。
このことは、一般論としてはマスコミなどの観測記事として言われて
いることですが、現に香港で一定の力を持っている方々
の口から出た言葉の重みには無視しえないものがある、
と私は思います。
 
皆さまは、どのようにお考えになられるでしょうか。
 
次回は、本題に戻って、自分でやるか、他社と組むか
(その3)として、事業提携か資本提携か、あるいは
M&Aなのかについてお話しさせていただきたいと
思います。
 
客員弁護士 佐々木久郎
中村法律事務所
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町4-17 Portal Point 1003
TEL:050-5526-3756
FAX:03-6830-4945
h.sasaki@nakalaw.jp
https://nakalaw.jp/

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