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クローディア真理:シリア難民の生活調理コンロで救う


ファイアー・フォー・ライフのコンロを手に取るウンムさん。その向こうが一 般的に利用されてきた屋外炉だ

シリアでは2011年の内戦勃発以来、 660万人以上が国外に避難し、現在も 1340万人以上の人が支援を必要として いる。非公式の難民キャンプで暮らす難民 も多く、その生活環境は過酷だ。暖炉・野外 炉を専門に扱うエシア社は、持ち運び可能 な調理コンロを開発し、難民の生活を支援 する。(ニュープリマス=クローディアー真理)

エシア創業者のナイジェ ル・バンフォードCEOは以 前から非公式キャンプで暮ら す難民たちのことを気がかり に思っていた。そのため、 2016年から4年間を費や して、屋外での調理を前提と した調理コンロ「ファイアー・ フォー・ライフ」を開発した。

2020年、難民支援を行 う慈善団体リリーフエイドを 創立・主宰するマイク・シー ライトさんと連絡を取り、リリーフエイドを通して、シリ ア国内の難民に調理コンロを 役立ててもらうことにした。

マイクさんは、シリアの難 民キャンプで調理をするにあ たっての問題を調査した。す ると、浮かび上がってきたの は、薪 の 不 足、コ ス ト、収 集 時間だった。キャンプでは、 粘土や泥・石などで作られた 屋外炉で調理が行われていた。

屋外炉には煙の問題も。煙 を吸った人の中には病気にな る人がいた。薪を燃やすと、 ブラックカーボ ン(黒色の粒子状の物質)が 排 出 さ れ、気候変動が助長される。

料理時の負担を減らす


フ ァ イ ア ー・フ ォ ー・ラ イ フのコンロに代えるだけで、 調理を巡る環境は大きく改善 した。同じ料理を作るのでも、 1日あたりの燃料が屋外炉の 半分以下で済む。ブラック カーボンの排出も半分以下に 抑えられる。煙を出さず、火 はコンロの外には出ないので、 安全だ。軽量なので、簡単に 持ち運びできる。

コンロは、簡単でお金をか けずに送付できる。フラット パ ッ ク( 平 箱 梱 包)設 計 な の で、平たいパレットに収まる からだ。現地到着後は、リリーフエイドのスタッフが組み立 て、配布する。

2021年、シリアに初めて1400個のコンロを届け た。コンロを受け取ったウン ム・アスマアさんは、キャン プに来るまでの生活を「素晴 らしく、幸せだった」と振り 返る。しかし、爆撃が重なり、 2年前に家を後にした。爆撃 の際、夫は負傷した。娘3人 のうちの1人がぜん息患者だ


エシア社のナイジェル・バンフォード CEO

ウンムさんはキャンプでの 新生活に慣れるよう努めてき たが、屋外炉がネックで料理 は重荷だった。火がテントに 燃え移らないかも心配だった。 しかし、エシア社の調理コン ロのおかげで、問題から解放された。

キャンプ生活の厳しさを少 しでも和らげてあげられるな らと、今後もエシア社とリ リーフエイドは協働で活動を 続ける。当面は2カ月に1度、 1200個のコンロを送る計 画だ。近い将来、毎月届けることが目標だ。

「alterna」2022年4月号(No.68)

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