グローバルM&Aを成功させるためには?

グローバルM&Aを成功させるにはどうすべきかを見てみましょう。

経済産業省の「我が国企業による海外M&A研究会」報告書によると、海外M&Aが成功した要因は、一番は「経営・事業戦略上の買収意義の明確化」となっています。

何で買収する必要があるのか、買収するとどういう意味があるのか、を明確にしておかないと、買収後に買収先から「今後どうしたいのか?」と聞かれた時に答えられなくなり、マネジメントは成長に不安を覚え、ロックアップの期間を過ぎれば辞めてしまう可能性が高まります。

「経営・事業戦略上の買収意義の明確化」は成功の要因というよりかは、前提条件のようなものですが、意外なことで日本企業でこれが不明確なまま買収を行っているケースがあるのも実態です。

次の二つがシナジーについてで、「シナジー実現に向けた施策推進の徹底」「シナジー創出により十分回収できる買収価格の設定」となっています。

シナジーによるプレミアム価値を含まない額で買収できたケースは、成功企業でも36%しかありませんので、2/3の場合において、シナジーを実現しないと成功とは言えない状況です。

そのために、しっかりとシナジー施策を計画し、行う、また行える額で買収することが重要となります。

そして4番目の42%が「買収後の統合(PMI)に対する方針の明確化及び浸透」を挙げています。シナジーの実現もここに含まれるため、PMIがM&Aの成否を分けることを示しています。


自社を冷静に分析することが実はM&A成功のカギ

PMIに対する方針の明確化と浸透をする上で、もう一つ重要なのが企業文化・価値観の共有です。

成功したM&Aでは、76%のケースで日本本社の企業文化・価値観を買収先に共有することで、買収した企業の行動様式に変化が見られたとしています。

PMIに対する方針は、「どこに向かうかを示すコンパス」のようなもの。企業文化・価値観は「日々の仕事のプロトコル」です。

企業買収を結婚に例えると「将来どういう人生を歩みたいか」をお互い定めただけではうまくいかないということを示しています。どう家計をやりくりするか、どう予定を決めていくか、どういう価値観で食事を決めるか、などが一致していないと、心地よく将来の目標に向かって一緒に歩むことはできないのと同じことです。

ところが国際結婚ですので、この常識が大きく違うのです。日本人同士だとあうんの呼吸で合意できることも、そう簡単にはできません。

グローバルM&Aの場合には、これを大げさな位に、多くの機会を設ける必要がありますが、これができていない企業が多いのが実態です。

なぜなら、あまりにも毎日の自然のことで、自分の文化や価値観を表現できないからです。

自社を冷静に見つめ直して、企業文化や価値感を客観的に表現することが最初からできれば、違いに敏感になりますし、それを融和することも容易になり、結果としてM&Aの成功確率も高まります。

グローバルM&Aの成功の大きな秘訣は、実は自社を見つめ直す作業を事前にできるかなのです。

Global PMI主宰:山並 憲司 | マッキンゼー&カンパニーで多数のM&Aに従事後、楽天で執行役員として楽天市場の成長に貢献。その後、米国の買収先に赴任し、PMI及び事業変革を担当。楽天USAに移り、戦略及びM&Aを担当し、買収により米国事業の黒字化を実現。経済産業省出身。M.I.T. Sloan School修士、Duke Law修士、東京大学工学修士、シリコンバレー在住

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