見出し画像

キャンセルされたイギリスのクリスマス

イギリスのクリスマスは特別なイヴェント。
日頃めったに会わない家族や親族でも、たとえ気が乗らなくても、1年に1度だけ集まって七面鳥ディナーを前に食卓を囲む。
日本のお正月のようなものですね。
それが今年は、どたキャンになってしまって、大混乱したんです。

イギリスのロックダウンNo.2

秋になって感染が増えたところでイギリスはロックダウンNo.2を導入。12月初めまでの1か月の予定でした。クリスマスだけは例年通り過ごせるように、タイミングを合わせようという思惑もあったのだと思います。おかげで感染はいったん下火になりました。

けれども規制緩和の数週間後である12月中旬になると、コロナの感染がまた広がりました。「通常通りクリスマスを祝うのはリスクが大きいのではないか」と心配する声もありました。

でも、ジョンソン首相はクリスマスの数日間だけは特別に規制を緩和する方針を発表していました。直前の国会でも「大丈夫なのか」と質問する野党労働党首に「イギリス国民からクリスマスのお祝いを取り上げるなんてことはできない」と言い切ったのです。

突然のクリスマスキャンセル発表

けれども、ジョンソン首相はその舌の根も乾かない3日後の19日に、クリスマスのキャンセルを発表したのです。

その理由は「コロナ変異種が確認され、感染が急増している」から。

それまでの政府発表を聞き、どうやらクリスマスはお祝いができるようだと期待して、家族の集まりなどを計画していたイギリス人はがっかり。すでにプレゼントやごちそうの買い物を済ませ、クリスマスディナーの計画や準備もした後というタイミングです。

期待させたあとでの急な政策変更は政治的にもマイナスなはずなのですが、それだけ事態が切羽詰まっていたということなのでしょう。この変異種はこれまでのウィルスより70%感染流行のスピードが速いということなので。

その後の世論調査結果では、クリスマスキャンセルの政策を71%が支持と出ていたのには正直おどろきました。みんな楽しみにしていたクリスマスがふいになって反対意見が多いんじゃないかと思ってたので。

記者会見でのジョンソン首相や、それにもまして信頼されている専門家の説明が、国民に理解されたようです。

ご近所の助け合い

ジョンソン首相のクリスマスキャンセル発表直後、ご近所WhatsAppグループがにわかに活発になりました。WhatsAppというのはLINEのようなものです。

コロナによるロックダウンが春に始まった時、何かあった時に助け合ったり、情報を交換するためにできたのです。こんな時は遠くの親戚より近くの他人が頼りになるからということで「困った時は声をかけてね」というのがそもそもの目的。

幸い、うちの近所はそれほど切羽詰まった状況にはなっていないので、おしゃべりチャットグループのような感じになっています。

クリスマスキャンセルの発表があった時のチャットに、こんなのがありました。

家族5人でロンドンの親族の家にクリスマスディナーに出かける予定だったのに行けなくなった。家でクリスマスを過ごすつもりじゃなかったので、買い物とかの準備を何もしていないのに。

そしたら二人暮らしの老夫婦が

うちは子供と孫の家族が総勢で来ることになっていたのに、来ないと連絡があった。大きな七面鳥を買っているのに無駄になるから、ちょうどよかった。持っていくから使ってちょうだい。
えっ、本当にいいの?助かるわ。じゃあ、うちで七面鳥焼いて2人分をクリスマスの日にもっていくね。
そう?じゃあジャガイモなどの野菜もあげるので、ついでに料理してね。

これも一種の助け合いですね。

我が家のクリスマス

我が家は、クリスマスからお正月にかけて例年は日本に帰るので、クリスマスのお祝いをする習慣がありません。それで特に何もしていないのです。

幸いクリスマス当日は朝から天気がよかったので、三人で散歩に出かけました。お気に入りの公園に行くと、クリスマスらしいセーターを着たり赤い帽子をかぶった人たちがたくさんいて、お互いに「メリークリスマス」とあいさつ。

散歩の後は日本の母に電話しました。元気そうで安心。田舎に住んでいるのでコロナの影響もあまりないようです。

晩ごはんはちょっとだけそれらしくローストチキンを焼きました。我が家の場合、ポテトではなくご飯なのが日本風です。みんなご飯好きなので。

WhatsAppでは「メリークリスマス」のメッセージが飛びかっています。友人からもチャットやメールでクリスマスの挨拶がたくさん。来年は通常通りのクリスマスが祝えますようにと。

「そうなったら本当にいいなあ」と思いつつ、とっておきの赤ワインを飲んですっかり上機嫌。特別なことをしなくても、家族と平和に過ごせるクリスマスも悪くないなと、ほろ酔い気分で夜がふけました。

いつも読んでもらってありがとうございます。