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読書感想文: モモ

著:ミヒャエル・エンデ、訳:大島かおり
朗読:高山みなみ

Audibleで読破。(聴破?)

時間についてのテーマの児童文学を、13時間弱の朗読でじっくり「読む」という贅沢な体験をした。「モモ」は幼い時に読んだ記憶があったし、昔住んでいたアパートの書棚のどこにあったかも思い出せるくらいの印象は持っていた。「モモ」を題材にした演劇も観たと思う。読書感想文も書いた気がする。

しかし、今回得た印象は、当時の不思議な良く分からない感じとは全く異なるものだった。当時は、書かれている文字をちゃんと理解できるくらいじっくり読むことができていなかったのだと思う。当時の僕は、日本の同学年ではトップクラスの成績で、文章の要点を掴むのもうまかった。だから、皮肉にも、「読み進めて読書感想文を手早く書くこと」に集中して、この本のテーマを字面では分かっていても、自分の血肉として感じることなく読み飛ばしていたのだろう。この本のテーマに反して。やれやれ。

時間を使って想像力を膨らませ、空想の世界に旅立つこと。時間を使って物事の本質を見抜くこと。時間を使って人と心を通わせること。時間を使ってひとつひとつを完成させ、丁寧に生きること。今、大切にしたいと思っている全てが詰まっているような感覚だった。そして、モモの好奇心とちょっとした冒険。

みな、1つ1つ輝きの違う時間の花を持っている。Horaから与えられた時間を精一杯生きている。その「精一杯生きる」生き方は、ともすると、私利私欲に集中してしまい、人間の持つ豊かさが失われるということなのだろう。

時間を大切にしようと焦ることで、時間を失っていく。物理的に歩みが早いからといって、睡眠時間が短いからといっても、善く生きている人もいるので、個人差はあるのだと思うけれど。僕のような平凡な人は歩みを緩め、周囲を見た方が良いのだろう。

この本を読んで、やはり丁寧に生きたいと思った。丁寧に生きるというのは、1つ1つをきちんと形にして残すこと。この読書感想文もその1つだ。本を読んだからといって、忙しさにかまけて忘れ去っては、読んでいる意味が「消費のための娯楽」になってしまう。すべてに意味を持たせることもまた、時間どろぼうに時間を奪われる原因になるので、バランスが大切なのだと思うけれど。大切というほど決まり切ったものでもないのだけれど。

高山みなみさんの朗読。はじめはすこし違和感があった。おそらく、名探偵コナンのイメージが強かったのだろう。でも、モモと遊ぶメガネの少年が出た時、コナンの声が出てきたのには吹いた(笑)。そして、様々な登場人物の人格を多彩に声で使い分け、徐々に彼女の朗読の世界に引き込まれていった。なかなかの秀作だと思う。

解説書には、日本人の妻を持ち、日本で児童文学作家と心を通わせたエンデの姿が描かれていた。新宿の安居酒屋で、他の児童文学作家たちとの話に没頭するなどのエピソード。そういう人間らしさもまた良い。

流れる時を感じながら、一歩ずつ歩めるだろうか。

2020年の僕のWorkdayはあと8日。Day-offは13日。何ができて、何を感じられるだろう。

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