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パーティクルライブの定量的分析による類別の試みとその課題について

本記事は、「ョョョねこ Advent Calendar 2020」の23日目の記事です。間に合っていれば。

本記事では、「パーティクルライブの定量的分析による類別の試みとその課題について」と題しまして、パーティクルライブ/VRMV(ついでにパリピ砲)とそれらを定量的に分析するために必要な諸概念を包括的に定義した後に、実際のパーティクルライブ等にに対して諸概念を適用し考察を行い、最後にその結果と現段階の課題を提示することを目標とします。

はじめに - 自己紹介など

GlinT Frauleinです。Twitterは @GlinTFraulein です。

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著者近影。かわいいですね。

VRChat上で「大安吉日集会」という集会を主催していたり、168時間VR体験実験をしてみたり、「VRCUnity勉強会」の管理人だったりします。
パーティクルライブが好きです。好きすぎて自分でも制作しました(見出し画像がそれ)。パーティクルライブ見ながらオタクトークできる人を募集しています。


1 - きっかけ

「パーティクルライブ」「アニメーションライブ」「VRMV」などの用語が乱立する中、実際には「音楽に合わせて視覚演出を行う」という点で共通しているこれらを、統合的に語るための理論的な接点が欲しかったというものです。実際にはもうちょっと軽い気持ちですが。

加えて、最近(ここ1ヶ月くらい)パーティクルライブを作り始める人とかが多くて非常にアツい分野だと思います。これからパーティクルライブに挑戦する人、今挑戦している人に向けて、少しでも「パーティクルライブ」という概念に対する解像度が上がってくれたら嬉しい、という気持ちがあります。


2 - 定義

本項では、この記事で扱う概念を定義していきます。あくまで、定義はこの記事内のみで完結することに注意してください。

パーティクル:UnityのParticle Systemを用いて作られたであろう演出のこと。観覧者は演出が実際にParticle Systemを用いて作られたかどうか確認する術がないので、作られた「であろう」という形を取っています。パーティクルこねこねするのは楽しいョ……

オブジェクト:UnityのParticle Systemを使わずに作られたであろう演出のこと。例えばアバターや建物などのモノがそれにあたります。観覧者は演出が実際に(ry

パーティクルライブ:音楽に合わせて視覚演出を行う行為全般の総称。
本記事では、たとえパーティクルを一切使っていなかろうと「パーティクルライブ」と表現します。「VRMV」「アニメーションライブ」「パリピ砲」などの隣接分野も包括して「パーティクルライブ」と表現します。

パーティクルライブワールド:パーティクルライブがいつでも観られるようにVRChat内にワールド形式で設置されているもの。

パーティクルライバー:パーティクルライブを制作する人のこと。パーティクルライバーに「パーティクライブ観たいんですけど」と声をかけると大抵出してくれます。

OP値:オブジェクト-パーティクル値の略。0-1の範囲を取る。パーティクルライブにおいて、視覚表現に占めるオブジェクトの割合が多いほどOP値は0に近づき、視覚表現に占めるパーティクルの割合が多いほどOP値は1に近づきます。OP値とパーティクルライブの優劣に関連性は一切ありません。

分かる人向けですが、OP値が低い作品よく作るパーティクルライバーとして分かりやすいのが、れみーとさんやまな[MANA]さん、OP値が高い作品よく作るパーティクルライバーとして分かりやすいのが、煉獄丸さんやhanyuu_hikaruさん、といった感じです。多分。私の中ではそういう印象です。

SD値:スタティック-ダイナミック値の略。0-1の範囲を取る。パーティクライブにおいて、酔いにくく静的な表現であるほどSD値は0に近づき、酔いやすく動的な表現であるほどSD値は1に近づきます。カメラワークの揺れ動きや激しい視界ジャック、光の明滅等でSD値が上昇します。SD値とパーティクルライブの優劣に関連性は一切ありません。

分かる人向けですが、SD値が低い作品よく作るパーティクルライバーとして分かりやすいのがYORIMIYAさんやManaMomerさん、さん、SD値が高い作品よく作るパーティクルライバーとして分かりやすいのが、ゆゆ..さんやLittleBlueさん、といった感じです。多分。私の中ではそういう印象です。


3 - 仮説

実際の分析に入る前に以下のような仮説を立てます。

・"VRMV"はパーティクライブの中でも、OP値が低いものを指して言われるのではないか。
これは、"VRMV"という単語がわざわざパーティクルという語を避けていることが気になったための仮説です。"VRMV"作者からは「パーティクル全然使ってないからパーティクルライブという呼び方は不適」という声をそれなりに耳にしますから、それなりに信憑性はありそうです。

・"パリピ砲"はパーティクライブの中でも、OP値もSD値も高いものを指して言われるのではないか。
"パリピ砲"はパーティクライブとは別の文脈から生まれた存在で、主に海外勢から伝播したものだそうです。イメージ的には派手なビームと視界ジャックが非常に印象的なので、それなりに信憑性はありそうです。


4 - 準備

今回は以下の条件でパーティクライブをラベル付けしていきます。

・対象:パーティクライブワールドとして設置してあるパーティクライブの中で、私が観測できたもの"ほぼ"全て(62作品)
例外として、あまりにも長いmemexの「解釈不一致」アーカイブ、長い(らしい)ことに加えて期間限定の可能性があるVket5 MIYAVIライブ、この2つは知っているが今回は除外とした。

・方法:実際にパーティクライブを鑑賞し、OP値とSD値を確定させる。また、その結果を2次元平面上に図示し、分析を行う。

・結果:下記を参照。VRCID順>楽曲文字順であるが、念のためVRCIDは伏せさせて頂きます。
ワールド「○」は題名検索で概ね探せるもの、ワールド名があるものは探しにくいもの、Privateはプライベートワールドである。(ただしsummer leapに関しては最近Public化された)

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5 - 検証

まずは散布図を観察する。OP値が0~0.1付近に点が多い傾向が見られるが、概ね全体的に広がっている。SD値の高い部分が過疎なのは、「rakugaki」ワールドでSD値の上限が大幅に押し上げられただと考えられる。実際。「rakugaki」ワールドの2作品がSD値トップ2つである。

点がないからといって現存する作品が無いわけではなく、あくまでこの結果は「パーティクライブワールド」に留まることに留意してほしい。世界にはまだ多くのパーティクルライバーが存在し、その中には演出や権利の都合上ワールド化することができないライブも多数含まれる(演者が実際に動き回るものやリアルタイムにパーティクルを制御するものも存在する)。


仮定を解決しよう。まずは"VRMV"に関する仮説である。以下に示すのは、全データを母数としたものから「VRMV」「MV」であることをワールド説明やワールド内など、どこかに明記したものを抽出した群(VRMV群)である。

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上記全データを母数としたものよりも、OP値が全体的に低めの傾向があることが見て取れる(あくまで"傾向"であり、その全てがOP値の低いものという訳ではない)。

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こちらは逆に、VRMV群「以外」を抽出した散布図である(表略記)。OP値0~0.1ラインがやや寂しくなったのが見て取れる。

よって、第一の仮説「"VRMV"はパーティクライブの中でも、OP値が低いものを指して言われるのではないか」は、「OP値の低さと"VRMV"の呼称との間にはそれなりの関係性がある」ことが言える。


続いて"パリピ砲"についての仮説である。次に示すのはOP値0.6以上、かつSD値0.6以上のものを抽出した群(パリピ群)である。

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SD値の定義上、かなり激しい作品のみが残っているのは自明だが、例えば「逃避ケア」はパリピというよりポップな作風であるし、「Effective Breakthrough」に関しては確かにパリピ寄りな作品だが自らを「VMV」と呼称している。
今回の検証に際して、いわゆる"パリピ砲ワールド"はワールドの数、ワールドに置かれている砲の数共に多く、加えて私のPCにトドメを差して動作不能になりかねなかったのでデータを取ることを控えた。追検証のためにはより多くの"パリピ砲"を摂取する必要があると考えられる。

よって、第二の仮説「"パリピ砲"はパーティクライブの中でも、OP値もSD値も高いものを指して言われるのではないか」は、「現状のデータでは一概に語ることはできないため、追検証が必要である」という結論となる。


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その他、思いつきで「歌詞の表現に力を入れている群」を抽出したが、そこまで面白いデータは取れなかった(当然、逆もそこまで面白くない)。


6 - 問題

ここでは、現状の問題点と思われる部分について記述していきます。

・2つの値として「OP値」「SD値」を設定するのは適切かどうか。他により良い基準があるのではないか。
今回の研究では上記2つの値を設定したが、他にも例えば演出を行う空間の広さで定義される値や、文字を表示する割合で定義される値などが考えられる。今後の研究においては今回の尺度以外にも基準を取り入れるなど、より多次元的にパーティクライブを解釈する必要があると考えられる。

・「OP値」「SD値」の評価方法が不適切ではないか。
現状、上記2つの値を評価する方法が「主観」以外に存在しない。そのため、観測者によっては結果が大きく変化することも考えられる。また、見る順番やその時の観測者の状態によって値が変化しうることも考えられる。定性的なものを定量的なものへ落とし込むために必要な部分ではあるが、例えば複数人による評価の平均を取るなどして、結果の個人差を減らす必要はあるだろう。
また、

・母数が少ないのではないか。
パーティクライブワールドのみを母数としているために起きる問題である。例えば複数のパーティクルライバーに協力を仰ぎ、浴びるようにパーティクライブを観測することで母数を倍以上に増やすことができると考えられる。今思いつくだけでも、総計150以上にはなるだろう。

・そもそも、パーティクライブという「芸術」の分野を定量的に分析する試みが間違っているのではないか。
それはそう。それでも私は、パーティクライブが大好きなのでより理解を深めたかったという一点に尽きる。自分が好きな作品はどのような傾向があって、逆に他の人が好きな作品から同じような傾向の作品をおススメできると嬉しかった。

・ョョョねこ要素がないのではないか。
あります。

パーティクルこねこねするのは楽しいョ……

パーティクルを制作する際に「こねる」「こねこね」という表現を使うことが稀によくあります。そう、「こ"ねこ"ね」しているのでねこ要素が存在し、語尾を「楽しいよ」ではなく「楽しいョ」にすることでョ要素も達成しています。よってョョョねこ要素はあります。

また、ョョョねこ史2020によると、

各人の解釈を得て拡大したョョョねこはいかようにも利用できてしまうということです

とあることから、創作者だけにとどまらず観測者も含めて各人の解釈を得て今もなお拡大を続けているパーティクライブは、ョョョねこと非常に隣接した分野だと考えられるでしょう。次にパーティクライブを制作するのは、今画面の前でョョョっているあなたかもしれませんし。


7 - まとめ

パーティクルライブは、いいぞ。

今は総合して「パーティクルライブ」という名称ではあるけれど、実際はパーティクルを使わなくちゃいけないルールなんてなくて、自分のやりたい表現のために何を使って、何を工夫するのが近道か考えるのが大事なのかもしれませんね!
https://twitter.com/GlinTFraulein/status/1319617781180952576?s=20

いかがでしたか?
って記事の最後に書いておくと記事の信憑性が一気に減るらしいです。あまり真面目に受けられ過ぎても困るので、この辺で信憑性を下げておきます。っていうかョAdCの周りが想像以上にガチガチのガチでどうしようかと思った……。

多分こんなことを考えているのは世界で指折り数えるくらいの人しかいないので、こんな記事のことは忘れていいからパーティクルライブを見てくれ。絶対後悔させないので。

どれから見ればいいか分からない人はとりあえずWAVE見てもらって。VR初心者含め超万人向けです。記事投稿時点ではVket5中なのでMIYAVI LIVEから入るのも良いですね!

歌詞出し系が好きそうならパノプティコン再会、光の明滅とかVR酔いとか全然大丈夫ならアノニマスファンファレECHOも観てほしい。
パーティクルに魅せられたならRaiti's FireWorks!!でゆっくり花火を眺めるのもいいし、Fly to the moonCyber Dolls (Trance demo)なんて選択肢もある。Lost Itとかは玄人向けだけど私は最近のお気に入り首位だったりする。
他にも、Amnéhilesie逃避ケアHeaven and Hellあたりは観ていて面白いと思うので推したい。
あとパーティクライブ集会が年に数回あるのでそれを逃さずにキャッチしてほしいですね!多分次は4月くらいだと思います!

そしてこの記事を最後まで読んでくださった全人類と全ョョョねこのみなさん、パーティクライブにちょっとでも興味を持ってくだされば幸いです。あわよくば生産者になってくれ~~~~~!!!!!

私もそろそろ次の作品作らなきゃ…… (おわり)

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