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【散文詩】歓楽街の灯

きらびやかなあのばしょを
ぼくはずいぶんまえからながめています
とおくからながめているだけで
こんなにもまばゆいのですから
きっとちかづけば
もっとまばゆいにちがいないのです

ひどくみわくてきなそのばしょに
だけどぼくはいけません
おかあさんにとめられているからです

あんなところはいけないよ
めがくらんでみをほろぼすだけなのだから

とてもかなしそうにいわれたものですから
ぼくはどうしたっていけないこころもちです

おとうさんはもうずいぶんまえにでていったきりです
まえにいちどだけおかあさんに
いつかえってくるのとたずねたら

おまえがここでまっていたら
かえってくるのだよ

とおいめをしてそうこたえてくれました
そのさきがあのばしょでしたから
きっとおとうさんはあそこにいるのだとおもいます

かえってこないのならあいにいこうよと
そういったけれどもおかあさんは

つまとこはまつものだよ

そういってとりあってはくれませんでした

あるひおかあさんがたおれました
わるいびょうきです

おかあさんはぼくに
しきりにそばによるようにいいましたが
ぼくはくるしむおかあさんをみたくありませんでした

そのうちおかあさんはうわごとで
おとうさんをよびつづけるようになりました

そこでぼくはひらめいたのです

ぼくがおとうさんをさがしにいこう

ぼくがおとうさんをさがしにいけば
ぼくはおかあさんのくるしむすがたをみなくてすむし
おとうさんがかえってくれば
きっとおかあさんもよろこんでくれます

ぼくはあのばしょへといきました

とてもまばゆくてめをあけていられませんが
どうしてもおとうさんをみつけるために
ぼくはのどをさくほどさけびました

おとうさん、おとうさん

だけどへんじはありませんから
からだがちぎれるくらいにはやく
ぼくはどんどんきらびやかなほうへといきました

おとうさん、おとうさん

ぼくのからだはばちっときをつけになって
めのまえがまっくらになり
なにかがからだをはしりぬけました

なるほどこれがえれくととか
えれきとろとかいうやつか

そうおもいましたが
みぎもひだりもわからなくなって
ぼくはぽとりとじめんにおちました

おわり

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