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金平糖模様の一筆箋

6月8日(日)

朝7時、体が重いと思いながら動き始める。体重がまた増えていた。せっかく在宅期間中食事の管理や筋トレをやっていたのに、出社開始した途端あれこれ理由をつけてお菓子を食べたり、「飲まなきゃやってられない」と言って酒を飲む度に翌日一キロずつ体重を増やしていたら、あっという間に全部水の泡だ。しかし出社開始してからの方が原因不明の立ちくらみや気分の落ち込みはなくなって元気に過ごせていたりする。

「書物の変!」という一日限りのオンライン同人即売イベントに参加していたので、日中何度かその宣伝をしたりする。出展者募集期間が短かったのと、しゃんぶるぶらんしゅの方の新刊在庫が残り少なくなっていることもあって、メイコに相談することなく個人で出店したのだが、仕事でばたばたしていてお品書きや作品紹介など何も用意しておらず、ツイキャスで自著の朗読などをやってみる勇気もなく、参加者との交流もほとんどできず、自分が一人では何もできないことを改めて思い知ることになった。それでも日記本を購入してくださった方がいて、出店して良かったと思う。対面の即売会と違って直接お礼が言えないのは少し寂しいけれど、スマートレターの封筒に、感謝の気持ちをこめて一筆箋をすべりこませた。金平糖模様の、お気に入りの一筆箋。

朝、久々にスムースベンデールでお腹の掃除をしたら、すっきりはしたのだけれど、胃がきゅうきゅうして一日中しんどかった。直後に飲んだコーヒーがよくなかったかもしれない。昼はヨーグルトとバナナ、夕飯は玄米粥。食材を買いに行った以外何をするでもなくぼんやりと過ごした。

夜になると少し回復したので筋トレをした。そして『灯台より』の小澤みゆきさんの書評を読んで買った多田尋子『体温』を読んだ。六回も芥川賞候補に上がった作家らしい。

中編三作品、どの主人公も若くはない女性で、それぞれの事情で結婚はしない、あるいは子を持たないと心に決めていた。どの作品も主人公の切実な心情が温度を伴って自分の心の中に移ってくるような感覚があって、一作品読み終わるごとに本を投げ出し、ベッドでうずくまってううっとなっていた。

わたしと結婚したことが彼の不幸のはじまりだったのではなかったのか。率子が夫を受けいれようとしなかったのだ。自分が冷たい家庭を作っていながら彼を冷たいと思っていた(「体温」)
もう子供のできるおそれの少い年になった。弱く小さくみじめな、本来の自分らしい生きかたをしてみたい(「秘密」)
身内とでもいうような血のつながりをこの世に残したくない。自分の生命を自分までで終らせられるのは気持よかった(「単身者たち」)

装丁が美しいだけでなく、解説のリーフレットも織り込まれていて、復刊のために動いた人たちの熱量が伝わってくる一冊だった。折りに触れて読み返すと思う。同じ作家のほかの作品も読んでみたい。
23時頃寝た。

#日記 #エッセイ #しょもへん #読書 #多田尋子

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