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万葉の湯小旅行、武道館に咲く花、祝杯

11月29日(日)


午前中、溜まっていた洗濯や皿洗いを片づける。

久しぶりに、何週間かぶりにスクワットとヒップリフトをした。そして一泊分の旅支度(主に読みものの厳選)をして昼頃家を出た。

文フリで手に入れたこの2冊と、積読していたレティシア・コロンバニ『彼女たちの部屋』を持っていくことに。

永田町で半蔵門線に乗り換える。南町田グランベリーパーク駅まで30分以上電車に乗っていく。30分以上電車に乗ることも滅多にないのでうきうきと本を開く。僕のマリさんと伊藤さんの日記本『何月何日』。今年の2月5月8月の2人の日記が交互に立ち現れる。連続していないので状況に少しずつ変化があって、書かれていない時間の出来事を想像させる作り。
伊藤さんの日記は奥さんの妊娠が発覚してから赤ちゃん誕生まで。Twitterなどでリアルタイムで知っていたはずなのに、紙の日記で読むとまた味わい深い。

南町田グランベリーパーク駅で生まれてはじめて下車。ショッピングモールには見向きもせず(日曜で混んでいそうだから)目星をつけていたオーガニックカフェに向かう。コロナの影響か、カフェはテイクアウトメインの営業になっていた。それでもイートインもできるというので、店内の片隅の席で、購入したタコライスとエチオピアコーヒーをいただく。

店内のスペースを使って有機野菜即売会をしていたり、地元の常連ぽい客と店員が座席に座っておしゃべりしていたので、知らない人の家を間借りしているような居心地悪さを覚える。オーガニックに疎外されている。
それでも気丈に、コーヒーを飲みながら『何月何日』を読み切る。
人の家でくつろぎ、毎晩酒を飲み、Twitterで話題になったミロを買って健康になろうとするマリさん。到着寸前にマリさんの日記ラストの「私はきっと毎日が誕生日」という言葉に触れて背中に電流がはしったようになった。

いい日記本だった。私は一年間黙々とひとりで日記を書いて、自分の日記だけが載った本を二冊作ったけれど、人の日記と自分の日記が並んだときにどんな相乗効果が生まれるのか気になってきた。

腹を満たしてから目的地「湯河原温泉・万葉の湯・町田館」へ。文フリや諸々の〆切を乗り切った自分へのご褒美で、宿泊とエステチケットのついたプランを予約していた。今日明日で思う存分サウナや温泉に浸かってのんびりするのだ。


脱衣所のロッカーに荷物も服もしまい、早速シャワーを浴びてサウナへ。日曜だけど浴場は空いていて感染症の影響を感じる。サウナは三段あって広々していた。
十二分計が一周したところで水風呂に入りに行くと軟水でやわらかくて気持ちいい。空いていたので露天の休憩用の長いすで寝そべったりしてみる。身体がびろんと伸びていく感覚。幸せだ。

三セットを終えて食堂へ。チェックイン時にもらったドリンク一杯無料券があったので生ビールを飲む。

そして「さうなと2」を開いた。

おひやさんの日記は、鉢植えの花が咲くくだりがめちゃくちゃ印象に残った。今日子さんのエッセイは、サウナでないものにサウナを感じるくだりに激しく共感した。朝自分でコーヒーを淹れるようになって、コーヒーを淹れる時間とサウナに蒸されている時間が似ているような気がしていて、でも、何が似ているのかうまく言葉にできずにいたから、ぴったりくる説明に出会って驚いた。
そして、つなかんやサウナサンに行ってみたくて仕方なくなる。南千住の湯どんぶりはすぐにでも行ってみようと思う。今まさに泊まりでサウナに入りに来ているのに別のいろんなサウナのことを考えるのも浮気っぽいけれど。
前号を手に入れたときは緊急事態宣言中でサウナに行けなくて、家でああああサウナに行きたいとうめきながら読んだので、今回は念願の「サウナ上がりにビールを飲みながら『さうなと』を読む」を達成できて本当に嬉しい。

身体が冷えたので浴場に戻り、露天の薬仁湯であたためながら日没を見守った後、宿泊するツインルームに向かう。
ひとりでツインルームに泊まるのは勿体ないなあと思っていたけれど、自分が使わない方のベッドに服や本を広げられてそれはそれでよかった。
ベッドに入って『彼女たちの部屋』を読む。何も考えずに読書に没頭できる時間が久々でとても幸せだし、同著者の前作『三つ編み』に負けず劣らずこの本もとても良い!

持参したルイボスティーのティーバッグとポモロジーのフルーツバーでお茶をしたり。

夕飯はこれまた持参したオートミールと茶漬けの素で簡単にすませる。

20時頃また浴場に向かい、高温サウナとミストサウナ、そして温泉で三度身体をゆるゆるにした。
21時からバリエステのボディケアを予約していたので頃合いを見計らってリラクゼーションスペースに向かった。アロマオイルを選んで、そのオイルを使ったマッサージを受ける。うつ伏せで右足からスタートしたはずが左足と背中の記憶が全くない。
仰向けを指示する声で目覚め、施術は首肩に進む。心地よい。
マッサージの後はいつも身体が自分の身体でないような、少し宙に浮きあがっているような不思議な感覚になる。いつもは靴を履いたり大荷物を抱えて帰宅する最中にだんだん日常の身体の重みが戻ってきてしまうのだが、今日は館内着に素足で、同じフロアの自分の部屋まで徒歩3分もかからない。半分とろけたような感覚を連れたまま部屋に戻って、ベッドに潜り込んでぐっすり眠った。



11月30日(月)

前日にサウナ温泉エステと贅の限りを尽くしたおかげで熟睡して、朝5時にすっきり目覚めた。窓を覆う戸を開けるとまだ真っ暗な空の中央に大きく明るい丸い月が見えた。
身支度をして朝一の浴場に向かう。誰もいなくて高温サウナを独り占め。シャワーで汗を流すだけで露天に向かい、夜と朝が入り交じった新鮮でつめたい風を浴びて水風呂代わりにしてみる。だんだん空が明るんでいくのを感じながら長いすに寝そべってじっとしていた。温泉に浸かると、すべての体内の邪気が抜けていった感じがあった。

昨日夕飯を軽めにすませたので、朝食ビュッフェで食べたいものを食べたいだけ食べる。

満腹で部屋に戻って、『彼女たちの部屋』の続きを読んだり二度寝したり。読了したところで最後にもう一度温泉に浸かって、11時直前にチェックアウトしたのだった。

新宿に出て伊勢丹パトロール。T氏と落ち合い、珈琲西武でランチを食べた。楽しくて満たされた小旅行の話をたくさん聞かせる。朝食はたくさん食べたけれど、時間が早かったのでもうちゃんとお腹が空いていた。内側にチーズが隠れたオムライスはボリューム満点でとろとろでおいしい。

シネマカリテで「タイトル、拒絶」を観た。大学時代に観たらめちゃくちゃ好き! となっていただろう映画。
地元に戻って地域限定クーポンでドライフルーツを買った。T氏と魚介のおいしい居酒屋で軽く飲み、解散。通販の発送作業をして早寝する。



12月1日(火)

一昨日昨日でリフレッシュしたし、今日はボーナスが出たので今の私は無敵だ。スターを得たマリオばりにぴかぴかしている。

無敵なので、夕方、予約していた歯医者に臆せず向かう。一応定期検診という名目だけど、控えめに言っても左右両方の奥歯がかなり調子が悪い。虫歯になっていた親知らずと隣接していた歯なので覚悟していた。
職場を出る直前に、歯医者を紹介してくれた同僚に、歯の調子が悪いからこれから歯医者に向かうと告げると、キットカットをくれた。最後の晩餐と言う名目ででばりばり食べると、「そうやってお菓子ばっかり食っているから歯がよくならないんじゃない?」と言われる。いつもふざけているおじさんなのに正論すぎた。

痛んでいた歯は案の定虫歯だったので、定期クリーニングは延期して麻酔を打っての治療。奥歯の裏側で治療が難しい部位だと言われる。しかも虫歯を治しても痛みが引くかどうかはわからないとおそろしいことを言われた。これまでの親知らずの抜歯や虫歯の神経を抜く治療で歯茎が傷んでいる可能性もあるらしい。まあ後厄だか仕方ない……ということで自分を納得させる。推しの卒コンまでに何かあったら大変なので、次回の治療の予約は推しの卒コン後にした。22時頃寝る。


12月2日(水)

昨日治療した歯がうずいて5時頃飛び起きる。そのまま布団から出て、せっかくなので珈琲を淹れた。久々の深煎りコーヒー。豆がやわらかくて手挽きのミルのハンドルが軽い感覚や、蒸らすときにぷっくり膨らむ様子がいとおしくて、味も深みがあってやはり深煎りが好きだ、と思う。コーヒーを飲み、クルミッ子を食べて土曜の日記を書く。いつも通りの時間に家を出て職場に向かう。

夕方退勤して、日本武道館で行われる「Hello! Project2020 The Ballad Special Nmber」に向かった。二階席で遠いし、もちろん声援を上げることはできないのだけれど、久々のライブにテンションがあがる。
そしてふと気づけば、私は武道館でアイドルを観るのが初めてなのだった。
ステージに何十人ものきらきら輝く女の子たちが登場して、そのステージをぐるっと取り囲む客席に色とりどりのサイリウムの花が咲くのを見て、ああなんて素敵な光景なんだろうと胸がいっぱいになる。その全ての光がステージ上の誰かに向けられた愛で、その光を、そしてスポットライトを全身に浴びた女の子たちがより一層輝きを放ちながら名曲「ふるさと」を歌っていた。

ハロプロメンバーがグループを超えてユニットにわかれて、ハロプロのバラードナンバーを歌っていく。船木さんのいたユニットがよかったのはもちろんのこと、船木さんの翌日に卒業する宮本佳林さんのソロの「氷点下」の表現力にやられた。船木さんのソロもあるかも、と期待した分、なかったのは残念だったけれど、船木さんが歌う「続いていくSTORY」の「ありがとう、また明日」というパートは本当に良かった。
だんだん気持ちが昂ってラストの全員合唱で号泣。まだ卒業じゃないから今日は泣かないと思っていたのに(ついこないだも同じこと書いた気がする)。着席のままなのもあって最初から最後まで会場はめちゃくちゃ寒かったけれど、心はあたたかい。
ただ、一週間後にこの武道館で船木さんの卒業公演があるというのはまったく実感が湧かない。



12月3日(木)

4時頃目が覚めてしまう。起き出して日記を書こうかと一瞬考えたけれど、さすがに早すぎると思って二度寝。

次に起きたら7時9分だった。普段7時20分頃家を出るのに。飛び起きて化粧をしながらドライいちじくをかじり、いつも通りの時間に家を出た。やればできる。

昼前に仕事関係のめちゃくちゃ嬉しい知らせが届いた。その知らせを待って朝からずっとそわそわ過ごしていた。そわそわしすぎて、近所のコンビニで歯医者を紹介してくれた同僚のために大量のうまい棒を購入してきたりして時間をつぶしていた。仕事相手と一緒にその知らせを見て抱き合って喜ぶ。この会社に勤め始めてから一番嬉しかった。いつも辞めたいとばかり言っているのに、こういうときには、この仕事をやっていて本当によかったと思う。すっかりテンションが上がってしまって、某仕事で自分語りをしすぎた。

無事によい知らせが来たので、その件で先週めちゃくちゃ神頼みをしていた神社に、早速退勤後にお礼参りに向かった。ほんとうにありがとうございます、しか言えない。

ひとりで祝杯をあげるつもりだったのだけれど、結局T氏とお祝い飲みをすることに。サイアム食堂という湯島駅前のタイ料理屋に入ってチキンと天ぷら入りのサラダと揚げ春巻きを頼んだ。いきなり揚げ物ばっかり。ビールとワインをこのうえなく美味しく感じる。大好物のパッタイも注文して幸せ。

それでも、なんとなくひとりでゆっくり喜びをかみしめたくて、T氏と別れて何十分も歩いて帰った。酔いのせいか寒さはちっとも感じなかった。コンビニに寄って酒を追加して帰宅。

ジンのお湯割りとハーゲンダッツでひとりで改めて祝杯。ちゃんと風呂に入って寝る。



12月4日(金)

遅くも早くもない時間に目覚めてコーヒーを淹れた。昨晩祝杯と称して食べ過ぎていたのでお腹が重い。
今日で仕事納めの仕事がいくつか。2020年も、私が今やっている仕事も、着実に終わりが近づいている。

そして推しの卒業も近づいている。というかすぐそこまでやってきている。度重なる卒業延期のおかげで心の準備をする時間だけはたっぷりあって、一年以上かけて卒業を受け入れたつもりでいたけれど、また不安になってきた。ためしに自分の日記本「#恋と似て非なるもの」を開いて、昨年十月に推しが卒業発表したときの記述を読み返したら、日記と呼べるのかわからないカオスな文章が並んでいた。推し卒業発表後の私はホットヨガをしながら泣いたり仕事をしながら泣いたりネットでブランド服を爆買いしたりしていた。失恋後とか離婚後もそんな状態になったことないけど?

お友達や大好きな人が年内に遊ぼうと誘ってくれて、推し卒業後の予定がいくつも入ってきている。推し卒業後に楽しみな予定ができるのは本当にありがたいけれど、推しがアイドルじゃなくなってもう二度と会えない(かもしれない)世界でやっていく自分を、まだうまく想像できない。

2冊の日記本を始めとする拙著は↓のサイトにて通販を行っています。よろしくお願いします。

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