桃山商事「クソLINE研究所」で過去をお焚き上げる。
7月21日(日)
頭痛と口の中の異常な乾きで目が覚める。完全に二日酔いだが、今日は選挙に行って、友人と西荻窪散策をして、桃山商事さんのイベント「クソLINE研究所〜オフィスラブedition」(新宿Naked Loft)に行くので、ダウンしてはいられないのだ。
西荻窪駅のホームで落ち合った早稲女同盟の伏見ふしぎは、私がほしかったアニエスベーのワンピースの緑を着ていた。私が買おうとしていたのは赤だったので、もしも二人して着ていたら完全にクリスマスを待ちわびる人たちだった。
南口を出て商店街を抜け、さらに歩いて目指すは古民家カフェ・松庵文庫。
おばあちゃんちのようなどっしりとした佇まいで、使っているグラスや器にも繊細な気配りが感じられるすてきなカフェだった。
ランチのご飯セットは彩り豊かで、おかずはどれもとても丁寧に作られていて、ごはんもお吸い物もおいしくて、ゆっくりゆっくり味わいながら食べた。普段「サラダチキン!」or「そうめん!」or「酒!」みたいな食事をしているから、汁ものとおかずとごはんがある食事をしたのも久々だった。
その後、本屋BREWBOOKSにふしぎちゃんを案内したり、もう一軒古民家カフェRe:gendに入って葛切を食べたり、さらに駅前のパン屋田島でメロンパンを食べたりした。
早稲女同盟の新しい企画について話し、今日のイベントの予習でお互いに自分の手元にあるクソLINE(※主に男性から女性に送られる、性欲を隠さない唐突なLINE。深夜に送られてくる「今から会える?」「エッチしたい」など)を見せ合うなどした。
今回は我々のクソLINEを桃山商事さんにも提供(というよりお焚き上げのお願い)したのだが、第三者の目で見るとやはりめちゃめちゃ気持ち悪い。
仕事相手にこんなLINEを送って平気なほど、自分に自信があるのはなんでなんだろうね、というところから、内省しない男たちについてひとしきり話し合う。
時間はあっという間に流れ、クソLINE男の生態の謎を探るべく私は新宿の奥地Naked Loftへ向かった−–。
生ビールを飲みながら待機する。
19時30分になると、桃山商事の清田さん、森田さん、ワッコさん、そしてゲスト『なぜオフィスでラブなのか』著者の西口想さんが登壇した。盛り上がる場内。会場内には男性も多くて、男性も興味があるテーマなんだな、自分のLINEを省みたり恋愛とハラスメントの境目を知るために来ているのかな、なんて思っていたら、隣の席の男性二人がワッコさんに「かわいいー」と叫んだり、いちいちヤジをとばしたりしていたので、あれ、そういう雰囲気なんだ、と少し意外に思った。
前半は、主に社内の上司や先輩から送られてきたクソLINEのスクリーンショットを紹介しながら、クソLINEの特徴やキモさを一つずつ紹介していく。
桃山商事さんのすごいところは、膨大な恋バナやクソLINEのデータ収集をベースにした、対象を正確に分析する能力&摩訶不思議な現象にぴったりの名前をつけて笑いに変える能力だ。
「夜11時は勃起のゴールデンタイム」「しんにょうの〈逢〉=ミスチルの〈逢〉」「(笑)は勃起みを隠すスパイス」「ちんこに脳を支配されてる」「仕事トークの中に一瞬だけエロを挟んでくるクソLINE=サブリミナル」
などなど、「言われてみればたしかに!!!」と膝を打ちたくなるような名言が書ききれないほどたくさん出てきた。
クソLINEという得体の知れない不気味なものに対するガチガチの恐怖感が、名付けと笑いによってお焚き上げられていく。
そして、桃山商事さんはクソLINEをただ笑いに変えておもしろがるだけではなくて、「深夜にこんなのが届いたら怖いよね」「仕事相手との関係を悪くしたくないから、優しい言葉で返信せざるを得ないよね」等のコメントを忘れず、いつでも相談者(クソLINEの受信者)の心情に寄り添ってくれていた。
ゲストの西口さんも、オフィスラブ専門家の見地から、LINEという公私混同しがちな密室空間における隠れた権力関係の問題を、よく響く美声で明確に言語化してくれていた。特に、
「クソLINEを送る人は相手の気持ちには鈍感だけど、ただ鈍感なわけじゃなくて相手が断れない立場にあるっていう権力関係には敏感なんですよね。権力をうまく利用している」「LINEのやりとりのなかで呼び名を変化させる(苗字呼び→名前ちゃん付け、など)のは、相手との関係性を変更する権利が自分にあると思っているからですね」
等のコメントに首がもげるくらいうなずいた。『なぜオフィスでラブなのか』買ったので読みます!!
前の職場の上司から、クソLINEをもらったり、深夜に家の最寄り駅まで来られたり、個室居酒屋やドライブに誘われたり、何度も何度も電話がかかってきたとき、どうしても突っぱねたり窓口に相談することができなかった。仕事や信頼を失うのがこわくて、だから相手に嫌われたくなかった。当時、そのことを親や信頼できる目上の人に話すと、心配してくれる一方で「あなたが媚びて期待させるようなことを言うから」「おまえには隙がある」と言われたりもした。今回も、桃山商事さんにスクショを送るにあたって自分の返信を見返して、「もっとうまく対応できたんじゃないか」と思ったりしていた。
そんな経緯があったから、イベント冒頭からヤジを飛ばしたり大声でしゃべっていた男性二人が、「(職場の若い)女を女としてしか見ないのなんて当たり前だろ」「こんなに優しい返信が来たら、そりゃ男は勘違いするよ!!」などと完全にクソLINEを擁護する発言を聞こえよがしにしていて、それを隣で聞いていたら過去の自分が責められているような気がした。気づいたら全身が重だるくなっていてトークも頭に入らなくなりそうだったので、いったん離席しようかな、と思った。
するとその瞬間、森田さんがその男性二人に「男の人の大声ってこわかったりするので、声小さくしてもらえますか」とやんわり、でもきっぱり制止してくれた。
そうだ、人の話を聞いているようで聞いていなくて、自分の意見を大声で言うことでこちらを黙らせようとする男の人のことが、私はずっとこわかったんだ。
今日だけじゃない、こわくてこわくてたくさん不利益もこうむってきたのに、建前だけ男女平等みたいなこと言われて既婚のおっさんに平気で口説かれてめちゃめちゃ傷ついてきたんだ。
それを桃山商事の人たちがちゃんとわかってくれていることに、声に出してくれたことに安心して泣きそうになった。
今回のイベントを通じて、クソLINE(や、きっといろいろなハラスメント)の原因がそれを受ける側の落ち度ではない、ということをありとあらゆる言葉で伝え続けてくれたのは本当にありがたかった。
ちなみに、注意された男性二人は「つまんねー。飲み行こう」とふてくされて途中で連れの女の子と一緒に出て行った。典型的な内省のない男(無い内省)だった。絶対あいつらクソLINE送ってる。
どんなに言葉を尽くしても受け手は自分に都合のいいようにしか受け取らない、というのは、私たちも早稲女同盟をやっていた中でもしょっちゅう感じていたことだ(どんな本を作っても必ず「高学歴こじらせ女子の自意識」みたいなわかったような全然わかってないこと言われる、とか)。桃山商事さんほど真摯に、あらゆる人に寄り添いながら、たくさん本を出したりイベントやったり動画配信をしていても、こんなに言葉が通じないことってあるんだ! というのを目の当たりにして驚いた。
それでも、私のように桃山商事さんの活動に本当に救われている人がたくさんいると思うので、これからもたくさん活躍してほしいし、またイベントに行って前を向く力をもらいたいなと思う。
この夏の必読書2冊。私も心して読む!
#日記 #西荻窪 #桃山商事 #クソLINE研究所 #クソLINE #オフィスラブ
案の定というかなんというか、お気に入りの傘を会場のネイキッドロフトに忘れたので近々取りに行きます。今回は青い鳥現象は起きなかった。