少女マンガだったら恋が始まっちゃう系の再会

9月11日(水)

仕事を早めに切り上げて、初めて参加する趣味の集まりに行く。会場が私の職場からわずか一駅、歩いても20分ほどの距離だったので、よくその会に顔を出しているという人に紹介してもらったのだ。

流派も年齢も違う15,6人が集まっていたが、狭い世界なのでそのうち半数は顔見知りだった。平日夜の時間をやりくりしてでもその趣味を続けたいと思っている社会人の集まりなので、雰囲気が落ち着いていて、集中して取り組めるのがよかった。

会が終わったところで、顔見知りではないある男性に声をかけられた。

「早乙女さん、昔○○の決勝で対戦しましたよね? 顔と名前に覚えがあって、もしやって」

驚いた。本当に驚いた。その人は、16年前の春、私がこの趣味を始めてから今までの間に、最も悔しい負けを味わった、ある試合の対戦相手だった。関東の人ではなかったし長らく大会でも見かけなかったので、10年以上ぶりの再会だった。

あのときの負け方や徒労感、帰りの夜行バスで一睡もできなかったことは今でも驚くほど鮮明に覚えているのに、私から優勝トロフィーを奪い取ったその人の顔は全く覚えていなかった。(ってか向こうはよく私のことわかったな!!私そんなに成長してないかな!!)

駅までの帰り道、お互いの運命を分けたその試合の後の16年分の近況報告をした。

その人は東京で就職したのを機に、私の実家のすぐ近くに住んでいて、大会に出ることはないがこの会にはしばしば参加しているという。

私も、色々なことがあったけれど、なぜだかやめずにこの趣味を続けてきた。

勝負の世界にもしもはないけれど、もしもあのとき私が勝っていたら。あの悔しさを味わわずに次のステップに進んでいたら、私は確実に天狗になっていただろう。そして、その後何度も何度も訪れた挫折に耐えきれずに、どこかでこの趣味をやめていただろうなと思う。

駅に着いて、その人と、次はぜひ対戦しようと約束して別れた。16年ぶりのリベンジマッチだ。負けるわけにはいかない。

これがもし少女マンガだったらここから恋が始まるかもしれないですね。

しかしこれはマンガではなく日記なので、そして私は少女ではなくバツイチアラサーなので、たぶんラブストーリーが突然に始まったりはしない。(リベンジマッチがどうとか言っている時点でどちらかといえばバトルマンガ寄りだし。)

人とのつながりの中で自分のルーツと呼べるような過去と予想外に出会えるのは、一つの趣味を長く続けている人間の特権かもしれない。そして記憶の奥底に眠らせていた過去との出会いは、不安定でアンバランスな今の私にとっては、恋と同じかそれ以上に魅力的なものであるような気がする。自分の強さも弱さも全部知ってもっと先に行きたい。そのために自分が辿ってきた道をちゃんと知りたい。だから毎日、粛々と日記を書いている。

「オラわくわくしてきたぞ!」とか「人の夢は!!!終わらねえ!!!!」とか書いてバトルマンガの知識の浅さを露呈して締めようと思う。


#日記 #エッセイ #再会 #恋と似て非なるもの

※完全に余談かつ黒歴史なのでひっそり追記。

「少女マンガだったら恋が始まっちゃう系の再会」については、私は過去にも経験があって、それは、「大学の授業の発表で同じグループだった他学科のくそまじめなお兄さんと、某企業のインターンで再会して一緒に働いた」というものである。

ちなみにその授業は、いくつかの選択肢から自分の好きなテーマを選んで同じテーマを選んだ人とグループを組んで発表する、というものだった。で、同じゼミで一緒にジェンダー論とかやっていたあげは嬢はナチュラルに〈女性学〉を選んだのに、私は「〈女性学〉は女子しか集まらないだろうから、別のグループ行って出会い探すわ!!」といって別のテーマを選んだ。そうしたらその10歳近く年上のくそまじめなお兄さんと一緒に、全然興味ないそのテーマについてくそまじめに発表準備をする羽目になって、自分の思いつきの浅はかさに泣いたのだった。もちろんあげは嬢にめっちゃばかにされた。

あの人はぜんぜん好みじゃないけれど、もう一回再会したら結婚するしかないと思っている(少女マンガ脳)。

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