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最近のこと

懐かしいもの。竜の鼓動。野に吹き渡る風。羊飼いの角笛。水辺。水草の揺れる澄み切った水。熱い砂。紺碧の夜空。ウールにくるまって見る天の川。あたたかなお茶をくれるひとの笑み。湯気。花畑。果樹園。煉瓦の塀。鉄の柵の向こうに見える家。高く広い空。


かかりつけの薬局に行く途中で路地裏を歩いていくのだけど、古い住宅地の中になぜかぽつんと煉瓦が使われた元・雑貨屋さんみたいな外観の建物があって、いいな~と通るたびに思ってる。耳をすませばの地球屋さんみたいな感じ。通った人が「ここ何のお店?どうやって経営できてるの?」って思っちゃうようなお店が好き。隠れて暮らす魔女が趣味でやってるようなお店、呼ばれた人しかたどり着けないお店、いつか経営してみたい…。


大嵐がすべてをさらっていって、残されたのは森の奥にある夜の気配だけだった。
月と木星がよく見える。


遠方から風が吹いてくる。視覚が拡大し、体は霧になり、裸足の、血に塗れていた足は、いつしか根を張ることを覚え、そこに寄り添うように花が、小さな花が咲き、厚い苔を踏むと水が流れて。

ピアノ線の上で踊っていたひとは、いつしか、豊かな野原で、自由に、
ただいのちとして。


海と山に挟まれた小さな町で生きていたころ、わたしはとても自由で、とても親しく自然と接していた。家族の中では少し寂しく、けれどそれは一人旅のときに感じるような豊かな孤独であって、わたしを蝕むようなものではなかった。あの町の景色が、何度も、繰り返し頭をよぎる。あのころ手を繋いでいたあの子も、いま、同じ景色を見ているのかもしれない。

あのころのわたしたちには同じ血が流れていて、ただ隣にいるだけで満たされていた。


おおきなうねりに呑まれて息も絶え絶えだったのに、今日はよく晴れて、朝からお風呂に入ったらいろいろなものを脱ぎ捨ててすっきり生まれ変わったみたい。誕生日。