見出し画像

永遠と幸福、遠方へと向かう夏

古い温室に差し込む光の角度
夏という季節が
幾度となく刻み込まれ
わたしたちを調律していく

白い花ばかりを摘んだ
花冠を編む手指に
重なる誰かの
翼の影

東の洞窟の氷柱
ぎんいろの時雨
積乱雲に棲む竜
うすむらさきと
ぎんいろの空が暮れていって

そこかしこに永遠を見つける

だから
わたしたちの意志や想いも
受け継がれるだろう

わたしたちの国が滅び
わたしたちの信じる神々が消えてしまっても
この土地には
わたしたちがいた、
ということが残る
それはちいさな花の種のようなもので
あるいは結界、遺跡、神と信仰の卵
祈りで

……
わたしたちは永遠を生きることができる
ということだ
いのち
という形で
否、形はなく
朝の霧や光や、夕闇に降る雨粒のような
流動する
やわらかなものとして

何を失ったとしても(奪われつくしても、)
わたしたちは「ここ」にいたということ

(そしていまここにあることの幸福)

世界は光に満ちている


祝福の香りと
静かな雨に隠された歌声と
わたしたちのいのち
受け継がれ、流動し、
広く、明るく、ただ懐かしい
遠方へと