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火宅の兎 11

当時は靖子が所謂、水商売で客との同伴か、もしくはパトロンを伴う呑み屋の女将さんに見えたのは言うまでもない。あるいは、この界隈には多い極道の妻に見えたかもしれない。この時にはまだ靖子と長い付き合いになろうなどとは、微塵にも思わなかった。確かに同郷であるが故に、身近に感じられたのも事実であったが。単純に容姿が淡麗で、やや歳上の女に見えたやもしれない。ただそれだけに思えた。

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