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軽薄さと虚栄心のティータイム【日記:2023/09/17】

 昔から、紅茶・珈琲・緑茶はよく飲むが、どれが好きかと言われると悩んでしまう。どれもそこそこ好きだし、そこそこ普通だ。良く言えば、みんな違ってみんな良い。悪く言えば、突出するほどどれにも興味がない。
 優柔不断。私の子供のころからの悪癖だ。

 今日、久しぶりに紅茶を飲んだ。ここ半年は珈琲ばかりだったので、少し懐かしい。頂く銘柄は”レディ グレイ”。フルーツのフレーバーが強く香りが麗しい。甘いクッキーを添えて、ティーカップで飲むとなんだか上等な気分になる。
 ――ふと、懐かしい記憶を思い出した。7年程前、ちょうど高専の5年生だった頃のことだ。

 当時私は、持ちうる時間の多くを学校の研究室で過ごしていた。別に勉学に熱心だったわけではないが、どうにも心地よかったのを覚えている。男女混合で8人1室。6畳程度の広さに各々の小さな作業台と椅子、後はちょっとした私物と真ん中に長机が一つあるだけの簡素な空間。さほどメンバーの仲が良いわけでもなく、一部を除けば外で話すような間柄ではない。でも部屋にいる時は仲間で、一緒に遊戯王をやったり何故か哲学の話をしたりもした。その空気感が良かった。

 そんな場所で、私はよく紅茶を飲んでいた。わざわざティーセットをフルで揃えて、ちょっといい茶葉を買ってきて。時計もあえて砂時計なんかを使っていた。理由はもちろん、カッコいいからで、マウントを取りたいからだ。なんかすげぇ!って言われたかったからだ。

 今思えば、とても下らない。しかも、そんな見栄っ張りにもすぐに飽きて余った茶葉を腐らせるんだから救えない。でも、大人になってからも同じような事ばかりを繰り返し、茶葉にカビを生やしてはため息ばかりしている。
 ろくでもない、軽薄さと虚栄心はそろそろ捨てたい。ちゃんと自身の骨肉に沁み込むような、ちゃんとした趣味にしたい。なんとなくのにわかさは、その場では良くても将来的には不毛なのだ。

 何にもハマれない人間はつまらない。だから、今回ばかりは頑張りたい。スーパーで買ったティーパックを飲み切ったら、今度こそいい茶葉を買って飲み切る。美味い淹れ方も覚えて、いい茶菓子にだって詳しくなってやる。
 理由はどうあれ、紅茶に詳しかったらカッコいい。来世でお嬢様になった時に恥を掻かないよう、今度こそ頑張って紅茶通になるぞ。
 今日はそんな決意をした一日だった。

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