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生まれ変わったらエイになりたい【日記:2023/08/26】

昨日、池袋に行ったので、ついでに”サンシャイン水族館”にも立ち寄った。
実は、年間パスポートを持っている。
別にマニアというわけではないが、二回行ったら元が取れるとのことだったので、なんとなく取得してしまったのだ。

平日の午後、会社員の定時前だったため人影は比較的まばらだった。
家族連れとカップルがぽつぽつと水槽の前にいる感じ。
相変わらず独り身なのは私くらいのものだが、人が少ないのはいい。ノイズを抑えて、揺らめく者達の動きに身を任せることができるから。

お気に入りなのは、エイが入った大水槽。
奥を見渡せない青の濃さと細かさを感じる白い砂底のハーモニー、そして行きかう魚たちの多様な個性を見るのが楽しい。
もちろん、単純にエイが好きというのもある。
大きい身体と愛嬌のあるとぼけた顔のギャップがたまらない。スーパー縦長の水槽で飼ってやりたいな。

ぼんやりと10分ぐらいは眺めていたと思う。
右に行って、左に行って、上に行って、下に行って、一周回って戻って来る魚たち。ミクロな視点で非周期的な彼らもマクロな視点では周期的でもある。混沌と調和、そのバランスが丁度よく落ち着く。
気が付けば、走り回っていた子供も去っていて、声も遠く2ブロック程先に移動していた。

私もそろそろ行くか、と思い柱に預けていた背中を引き出し上体を起こす。
歩き出す、その刹那、もう一度だけ大水槽に視線を落とす。
魚たちは変わらず泳いでいた。楽し気に、優雅に、あるいは何も考えていない様子で、ライトアップされながら綺麗に。

ふと、「いいなぁ」と彼らの生活に憧れてしまう自分がいるのに気づいた。
少しばかり住処は狭いけど、エサはただで貰えるし、いつ寝てもいつ泳いでも怒られないのがいい。それどころか、ただ普通に生活しているだけで「可愛い」なんて言われて褒められるなんて最高だ。
元々は大して珍しくもない、少なくとも何千と同族がいる中の平凡な一匹だったというのに、都市部に運ばれてライトアップされればアイドルなんて夢がある。

生まれ変わったら貝になりたい、なんて言葉があるが、貝じゃ水族館のメインは張れないので、私はエイか海月になりたいなと思う。
デートの肴にされるのは少しシャクだけど、ライトアップしてラベルを張って展示してくれるなら我慢する。
だから…………

一通り展示を見て外に出る。大空が見える、鳥が飛んでいる。
かつて子供の頃、自由が一番、空を駆ける鳥が一番カッコいいと思っていた。その思いは今でも変わらないけれど、魚たちの演出込みの美しさを良い、と感じ始めている自分もいる。
これが成長なのか諦観なのかは分からないけれど、水族館を好きになれたのは良いことだと思う。年間パスポートをあることだし、また来よう。
同じ水槽がいつでもある、というのも水族館のいいところだしね。



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