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【駄文】浅慮の末の恥晒し

  私の実家には、祖母の部屋にしかエアコンがない。扇風機も1台しかないので、家族の集まる部屋に自ずとそれは置かれている。つまり、私や祖母以外の家族が各々使う部屋には電気を使う冷房機器が一切ない。下敷き等であおぎながら、両手の塞がっている際にはなす術もなく汗だくになりながら、涼しい季節へ思いを馳せる。幼少時代の私はそんな風にして夏を過ごしていた。
  数日前、何を思ったか私はそんな実家で部屋の掃除を始めた。先述の通り、室温を下げる方法のない部屋の掃除を、である。案の定数分も経たぬ内に体表が汗に覆われた。数十分後にはもう動く気力は失せ、床へへたり込んでいた。
  部屋の掃除の醍醐味といえば自分の過去と再会することであるが、今回においても例に漏れず、やや懐かしいものを見つけた。
  懐かしい、といっても10年以上前のものではない。私が数年前、誰に聞かせるでもなく、あるいはどこかへ発表するつもりもなく書いた曲の歌詞カードであった。
  「自戒」というタイトルの通り、それは私が自身を戒めるために書いた曲で、私が私を刺すために選んだ言葉であるから、数年経って読み返して尚、その詞は私を傷めた。そして感傷的になった心地そのままに、今この文章を綴っているのである。
  何者でもない私のように瑣末なものがこんなことをするのは汗顔の至りであるが、その「自戒」の歌詞を掲載してみようと思う。


自戒

見失った歩く理由は  ハナからどうも末路みたいだ
見たことあるなこんな顛末  落伍の途を辿るだろうさ

夕日が空を訪い  落莫と茜に染まる
そこへ何かを見出だすのはいつだって己の心
惹起された憂愁にかまけ 矮小な思い出を貶す
この腐心も消え果てるならば 何をアテにすればいい

つきまとう影に怯えながら開き直る術を探す
退廃に足を取られてから踠き始める
巷の悪を誹りつつも 眩い星の凋落を望む
虚しい咎を言い訳にして 明日の自分へ後悔を投げよう

知る辺を払い 帆を切り裂き 流れるままに茫洋とさすらう
金色の烏が波の隙間に欠片を散らす 綺麗な静けさ

雄大な自然に焦がれ偽物のジオラマを愛でる
それを甘えと一笑に付し 愚にもつかぬ己に媚びる
一辺倒の理屈と芝居 小狡さと保身と逃避
他の全てを望まぬのなら井蛙のままでいればいい

満ち足りぬ業に抱かれながら来ないと知る救いを待つ
正論を妄言と唾棄し背き続ける
理想の日々は白紙のまま 眠る頃に夜が明ける
何も生まぬ指は老いて 明日もそのうち来なくなるだろう

孤独は決して癒えぬ病 魂の底へ蟠る
どんな幸せの最中でも過り蝕む
なす術もなく枯れるよりは帰る場所にしてやればいい
この故郷がある限りは誰も自分を失わぬだろう


  以上が「自戒」である。

  話は変わるが、今「水晶の池」という小説モドキを書いている。早ければ来週、遅くても秋の来る前には投稿したいと考えている。この駄文はその箸休めに書いてみた。

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