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【読書記録】十二国記 風の海 迷宮の岸

幼き麒麟に迫り来る決断の時――
神獣である麒麟が王を選び玉座に据える十二国。その一つ戴国麒麟の泰麒は、天地を揺るがす<蝕>で蓬莱に流され、人のことして育った。十年の時を経て故国へと戻されるも、役割を理解できぬ麒麟の葛藤が始まる。我こそはと名乗りを挙げる者たちを前に、この国の命運を担うべき「王」を選ぶことはできるのだろうか。
「十二国記 風の海 迷宮の岸」新潮文庫 背表紙より

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感想

ネタバレしかない







魔性の子で記憶が失われていた1年だ!!!!!!
高里がどのように過ごしていたのか気になって仕方がなくてあっという間に読んでしまった。

まず泰麒に景麒が会いに来たところ、泰麒の影響だろうが、景麒も可愛いところあるじゃんと思った。前作での陽子視点の印象が強いせいかもしれない。子どもの扱いに戸惑いながらも泰麒の力になろうとする様子はとても微笑ましい。

王を選ぶ過程で知り合った李斎と驍宗と騶虞を探しに行き、饕餮に出くわす場面。「巨大な闇」と表現されたのを見て、その後何が起こるのかおおよそ理解した。

饕餮とにらみ合う泰麒の後ろで気配を殺し、負けそうになる泰麒を見れば的確な言葉を投げ士気を高める驍宗は、さすが名将と言わざるを得ない。これはもう少し後の話だが、景麒から泰麒の告白を聞いた時も。

その後泰麒は驍宗と離れ難いために彼と契約を交わすわけだが、ここからしばらくは読んでいた僕も泰麒と同じ罪悪感を抱えることとなり、胸が詰まる思いだった。
泰麒はこんな罪を犯すような人(麒麟だが)だったのかと失望する反面、泰麒にここまでさせる驍宗は本当に王なのではないかと期待もした。しかし、確か魔性の子で泰麒には角がないとか言っていた気がして、それは罪に対する罰なのではないかという考えもあった。魔性の子で土下座できなかったのは、麒麟が主以外に跪かないからだと気づいてはいたが、それが「出来ない」のか「しなかった」のか判別が出来なかったし、麒麟が選んだということこそ天命なのではないかと思ったりもした。実際そうだと分かるまでは本当に心臓に悪かった……。

今回の主役は泰麒だが、少しだけ景麒の話もしておきたい。
景麒は舒覚に出会ったとき、この方だ、と思うと同時に決して王には向いておらず、足りないものがあると感じていた。そして、実際道を踏み外してしまう。その後再び王を選ぶことになるわけだが、次の王との出会いはまた非凡で、「こんな主人は願い下げ」などと口にしており、景麒はまた面倒な王になったと内心思っていたのではないだろうか。つくづく女運ならぬ王運がないというか……。舒覚は足りないものを得ることはできなかったが、陽子はそれを得た。よかったね。
あと「王のそばにいることが嬉しくない麒麟はいないし、王と別れるのが辛くない麒麟もいない。」という台詞で景麒も王のそばにいて嬉しいと思うんだ、とギャップ萌えした。景麒、推しかもしれない。

ところで、この話は順風満帆な暮らしが始まりそうな終わりだったが、泰麒は1年でまた高里としての人生に戻ったはずである。その後何があったのか気にならない人がいるだろうか。記憶をなくし角をなくしまた蓬萊に戻った原因とは、そして泰王は一体どうなったのか……。これもまたどこかで語られていると信じて、引き続きこの世界を楽しもうと思う。

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