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こんなに楽しい地獄は初めてだぜ!なHades

約20名のインディー系会社開発の2Dアクションでありながら、ゲームオブザイヤーにもノミネートされるほどの傑作と言われた『Hades』をようやくswitchで遊べるようになった。マ~ジで長かった。最初は20年12月発売の予定が、主に日本語翻訳作業の多さによってここまで発売がズレ込んだそうな。でも、時間をかけたのも納得のそのテキスト量が世界観への没入感を高め、いつまでもゲームに浸っていたいと思わせられる最高の作品にしてくれた。

『HADES』は、ギリシャ神話をモチーフにした、見下ろし型視点のローグライク・アクションゲームだ。主人公は、冥界の神ハデスの息子ザグレウス。彼は父親への反発もあり、地下に広がる冥界での生活にうんざりし、オリュンポスが存在する地上世界への脱出を決意。何者も脱することは叶わないという、ハデスが統べる冥界での戦いに挑む。

会話の物量と個性豊かな登場キャラ

インディーのアクションゲームと言えば、猫も杓子もとにかく「ローグライク!ローグライト!」「すごいリプレイ性!」「ジッサイ何回でも遊べる!」と銘打って呼び込みをする。良しか悪しかは分からないが、まぁとにかく多い。実際そういう系けっこう好きだし、長く遊べるお得感についつい手に取ってしまうのも確かだ。

この『Hades』も、ダンジョンの途中で死んだらほぼ全てを失い、スタート地点へ戻されるローグライク(またはローグライトとも)ジャンルのゲームだ。このシステム自体はわりと普通だが、このゲームの面白さは死んだあとのキャラクターたちの反応だ

やられるたびにダンジョンはイチからのスタートになっても、登場するキャラクターはすべての出来事を覚えている、そんなローグライクを作れたら面白いのでは?というのが、開発のきっかけでした。(「Hello! インディー」 第40回 やられることで進んでいく、冥界の家族ドラマ。『HADES』開発者インタビュー。)より抜粋

主人公ザグレウスが死ぬたび、家でありパッパの仕事場でもある冥界の館へと引き戻されるわけだが、そのたびに館にいるさまざまなキャラクターの会話が前回のものから変わっているのだ。

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メインストーリーが進むごとにキャラの会話が切り替わるのが一般的だとは思うが、こういう仕様はなかなか見ない。

ダンジョンを繰り返し攻略するたびに相まみえることになるボスも台詞が変わる。

ボス戦

さらには、キャラクターと会話するたびに図鑑である「冥界の書」の説明文がアンロックされるので話せば話すほど蒐集が捗る仕様となっている。

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普通、ローグライク系は攻略の道半ばで死ぬと「はぁ…もう一回やんなきゃなのか…」と気が滅入る部分もあるが、このゲームは死んでもキャラクターの会話の変化を楽しめる。「死んでもケルベロスと戯れる」「死んでもデューサに会える」というのが、意外にもゲームのモチベーションになるのだ。

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雑用係として雇われてる頭だけのメデューサ「デューサ」。画像1枚だけでは伝わらないが、何度も会話していると、とても可愛らしいキャラなのが分かってくる


「やられても、登場するキャラクターはすべての出来事を覚えてたら面白そう」と言うのは簡単だが、ローグライクゲームは、有名な「風来のシレン」「トルネコの大冒険」のキャッチコピーを借りるなら、「1000回遊べる」ゲーム性を持つ。そんなゲームに死ぬたびにキャラの台詞パターンを変える仕様をいれるなんて、テキスト量を考えるだけで眩暈がしそうだ。それをやり遂げた開発元のSupergiant Gamesはすごい。そして膨大なシナリオの日本語ローカライズをやり遂げたハチノヨンもすごい。そりゃこんだけ時間がかかったわけだ。


登場するキャラの個性も多種多様。死んだザクレウスを出迎える位置にいる怠け者で調子の良いヒュプノス、師匠であり冥界脱出を案じてくれるアキレウス、武器の試し斬り用サンドバック役なのになぜかおちゃらけてる骸骨のスケリー、クセがすごいがなんか助けてくれるオリンポスの神々、死ぬたびに色々皮肉を言ってくるパッパのハデス。1面ボスであり、ちょいちょい館にも遊びに来てるメガエラ。みなキャラが立っていて、会話していて飽きない。

そしてなにより、主人公のザグレウスの父親に対して皮肉を言ったり、師匠であるアキレウスには尊敬のまなざしを向けてたり、飼い犬のケルベロスや下働きしてるデューサには優しかったり、「思春期の少年感」が冥界というサツバツな世界の中での一つの癒しであり魅力となっている。

アクション

アクション面も最高に良い。上述のインタビューでも「格ゲーを参考にした」というキビキビした動きが、動かしていて楽しい。ガンガンと派手な攻撃をしつつ、敵の攻撃動作をみてバシバシとダッシュで逃げてまた攻撃…と言ったサイクルがクセになる。だが、強いからと言って雑に動いてるといつの間にかダメージをくらってジワジワとピンチになってくるので、そのあたりアクションゲームの駆け引きのバランスを感じてとても良い。

武器は全部で剣、槍、盾、拳、弓、銃の6種類から自分のプレイスタイルに合わせて戦える。おススメは盾と槍。正直、近接攻撃と防御と遠距離攻撃(盾投げ)がこなせる盾が頭一つ飛び抜けてる。遠距離攻撃してくる敵も多いので防御ができるのは大きい。そこらへんバランスの悪さも感じなくもない。でもFGOのマシュとかキャプテン・アメリカとか、盾使って戦うのってロマンあるから好きなんだよね…。一応ぶっ壊れというほどの格差はなく、どの装備も基本強めの設定なので好きな武器を使い続けて強化していくのが良いと思う。

攻撃の強化も、神々の力である功徳(くどく)を付与することで色んな特性の攻撃ができるようになるので、出会う神様に一喜一憂しながらビルドしていくのも楽しい。この功徳にも多少の強弱があるが道中得られるのは(装備アイテムにより多少操作は可能だが)ランダムなので、強いのが引けなかった時のプランBも用意して臨むのが結果的に楽しい。功徳リセマラは精神的にしんどいぞ。


戦いは続いている

父の支配する冥界から地上に脱出したい、というゲームなのに、ずっとこの場所で戦い続けたいと思ってしまうほど、楽しくて魅力的な冥界<Hades>。
まだ最後の4面ボスを倒せてないのでもう少し頑張らないとですが、けっこうコツも見えてきたので、近日中には1回クリアしたい。こういうローグライクアクションはいったん区切りを迎えないとズルズルと時間をかけてしまうので。いやホント、気づいたら何時間も経ってるんですもの。
なかなか時間を「食ってしまう」ゲームなので万人に薦められるかというと微妙ですが、とても良質なゲームなのは間違いないのでぜひやってみてほしい。



そうそう、このゲーム、イッヌ(ケルベロス)を撫でることができます。めっちゃ可愛い。

<おわり>




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