見出し画像

土木学会ダイバーシティ推進委員会でインタビュー講座を実施しました

こんにちは、尾形です。

「今度、オーラルヒストリーのインタビューをするんだけど、どうすればうまくできるかを講座のような形で、みんなに教えて!」と尾形が小樽商大で研究をしていた時の同僚より相談を受けました。

私はこれまで様々な現場でのインタビューは実践してきましたが、オーラルヒストリー(テーマに対して個人の体験を口述してもらい、記録、分析する)のインタビュー経験はありませんでした。

それでも、インタビューの核となる部分は共通しているし、オーラルヒストリーでやろうとしていることに調整して伝えてくれることを期待されてのご相談だったと思います。そこで、私のこれまでの経験からインタビュー実施の大事な点をまとめてお伝えするという場を作っていただきました。

ということで、やってきたのが四谷の土木学会。

「女性土木技術者のオーラルヒストリー実践に向けたインタビュー講座」と題して、ダイバーシティ推進委員会の皆さまに参加いただきました。

インタビューは目的達成に向けた共同作業

インタビューと言えば、基本的には聞き手が話し手から質問して聞きたいことを聞くという相互のやり取りのイメージがあります。ただ、私のイメージは聞き手と話し手の間に仮想の真っ白いキャンバスがあって、そこへ聞き手と話し手が一緒に情報を描いていく共同作業と捉えています。

別な言い方をすれば、私がインタビューをする時には、お題に対して仮想のキャンバスに何をどのように描いていくか、という戦略を立てるように考えています。

例えば、インタビュー実施前の計画段階。「仮想のキャンバスにどのようなレイアウトで情報を描いていけばよいか、おおまかなあたりをつけておこう」とイメージして質問項目や質問の構成を考えることができます。

これでインタビューの全体像や質問の粒度など俯瞰して捉えやすくなり、これが半構造化インタビューの計画をすることにつながります。

また、インタビュー実施中は、聞き手は次に聞く質問をどうするか瞬時に判断しながら進めていくことになりますが、頭の中で仮想のキャンバスがあると、どのあたりにどれくらい情報が描かれているかを意識しながら進められるので、深掘りする質問や視点を切りかえる質問が思いつきやすくなります。

仮想のキャンバスの空白領域をどう埋めていくかを考えることは、インタビュー時間のマネジメントにも有効で限られた時間内で、目的達成に必要な情報を得ることができる進行を意識することにもつながります。

聞き手と話し手の共同作業という点においては、聞き手が仮想のキャンバスの状況を話し手に伝えることで、話し手は不足している点を補ったり、誤って認識されたことを修正したりすることができます。

その作業を進めていくことは、聞き手だけではできないため話し手との共同作業と個人的には捉えています。

このような概念を、講座ではインタビューの心構えとして次のような言葉にまとめてお伝えしました。

3つのモードを使い分ける

さて、インタビューを進めていくにあたっては、聞きやすく、話しやすい順番で進める方がスムーズにいきます。その上で、話し手の本音を引き出していく、そんなアプローチをしなければならないときに、私は3つの階層・モードの使い分けを意識しています。

第一階層:観察モード

インタビューを実施する目的は、その人がなぜその行動をとったのか?という理由や背景にある考え方を知りたいことが多いのですが、まずは、事実としての出来事を聞くことから始めます。

よく5W1Hといいますが、この段階ではWhy?を除く4W1Hの観点から、話し手の話した情景が浮かぶまで聞くようにします。

さらに、ここに時間軸の観点を入れて、いつもやっていることなのか?たまたまその時だけか?いつからやっていることなのか?などを含めて、現場に行って観察する意識で聞き手に質問をしていきます。

第二階層:分析モード

その人がなぜその行動をとったのか?という理由や背景にある考え方を探るために、第一階層で得られた出来事の情報を分析するモードで質問をします。

出来事に対してのWhy?が中心になっていきますが、理由や考え方をさらに深堀りしたいときは、次元の両極端を提示して比較し、その理由を聞くといったフリップフロップテクニックというやり方も有効な場合があります。

第三階層:解釈モード

話し手が対象をどのように捉えているか、その意味や存在意義は何か、を聞き手が解釈するための質問をします。

「あなたにとって●●とは?」のような質問です。ここで話し手の価値観や思想を推察するきっかけとなる情報を得ます。

インタビューを進めるにあたっては、第一階層(観察モード)からはじめて、第二階層(分析モード)に行ったり来たりを繰り返しながら、第三階層(解釈モード)に入るという進行の基本型をこのように捉えると、応用も効くようになってきます。

仮想のキャンバスを可視化する

ここまでは、話し手の頭の中にある仮想のキャンバスをイメージしてインタビューを進める話をしてきました。

しかし、話し手と聞き手の共同作業の側面をさらに強化することを考えると、その仮想のキャンバスを物理的に見える形(インタビューシート)で提示して、話し手と一緒に聞き手もそこに描きながらインタビューを進めるスタイルが考えられます。

今回は、オーラルヒストリーのインタビューに応用することを考えました。シートの横軸に時間軸、縦軸に感情の度合いをとってキャリアにおける感情の起伏を話し手に描いてもらいます。

その結果を見ながらインタビューを進めることで、話し手と聞き手とで出来事を共有しやすくなります。そのため、観察モードと分析モードでの質問のやり取りもしやすくなる効果が見込まれます。

この点については、論文にする予定なので、また報告できるタイミングでお伝えしたいと思います。

ということで、実際にミニワークを含めながら4時間の講座が終了!
今回はワークの内容をグラグリッドの小野、名古屋がグラフィックレコーディングし、参加者とのやり取りを通して理解を深めていきました。

▼ミニワークのグラフィックレコード
作成:小野奈津美(グラグリッド)

作成:名古屋友紀(グラグリッド)

今回の講座では、聞き手と話し手の共同作業という心構え、出来事・事実から聞く、仮想のキャンバスを可視化するといったことが参加者の皆さまに伝わったようで有意義な時間となりました。

(尾形)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?