スピリチュアル系量子力学は基本カス-"観測"について-
昨今、Y◯uTubeやTikT◯kで流行りの量子力学。これとスピリチュアルの親和性は驚くほど高いようで、たいへん興味深い(笑)ことが多い。
スピリチュアル系を見過ぎたせいか、「電子レンジで9割の栄養素が破壊される」、「波動が下がる髪型」などと言った動画をおすすめされる始末。
波動が下がる髪型はともかく、電子レンジの方はなんとなく信じてしまう人もいそうである。
こういった動画、記事は巧みに嘘と真実が混ざっており非常に悪質なのだ
今回はその悪質極まりない、スピリチュアルの無法地帯と化している"量子力学"について、特に「観測」の意味を中高生にも伝わるように記事にしてみたのでぜひ最後までご覧頂きたい。
私たちが"見る"ということ
私たちは普段、身の回りの物をどうやって見ているだろうか。
少しややこしい話になるが、私たちはありのままに物体を見ている訳ではない。正確には「物体から反射してきた光」を見ている。
この「反射してきた光」というのが重要なポイントである。
私たちが生活しているスケールでは、光を当てたら椅子が変形しました〜みたいなことはまず起こらない。
光が反射したところでその椅子の場所や動きが変化することはない。
物理っぽく言うと、位置も運動量も変わらない。
しかし、量子レベルの小さな世界では話が変わってくるのだ。
量子力学における"観測"
前述の通り私たちが何かを見る-観測する-には、見たいものに光を飛ばして、跳ね返ってきた光を見るのだが、量子レベルの小さいものに光を当てるとどうなるか。
誤解を恐れずに言えば、その量子はぶっ飛んでいくか、光が通り過ぎていくらしい。
わかりやすくするために、光をサッカーボールだとしてみる。
量子力学を必要としないスケール、すなわちマクロなスケールの場合は、ビル🏢にサッカーボール⚽️を当てるようなものであり、ビルはびくともせず⚽️は素直に跳ね返ってくるだろう。
ところが量子力学が必要なミクロのスケール、つまりラグビーボール🏈に⚽️を当てることを考えてみる。
この場合、まず当てるのが難しくなりそうだが、当てられたとしても🏈と⚽️は2つともあらぬ方向へ散り散りになるだろう。
すなわち、観測対象である🏈は⚽️を当てることで変化してしまうのである。
⚽️をゴルフボールにしても良い。
するとさらに🏈に当てるのが難しくなるだろうが、🏈の変化は小さくなりそうだ。
もっと詳しく言おう。
短い波長の光(強い光)を当てれば、量子の位置がより限定的にわかるが、ぶっ飛んでいきやすくなるため、動きがわかりずらくなる。
長い波長の光(弱い光)を当てれば、量子を派手にぶっ飛ばすことなく、動きの変化は少ないものの、光が通り抜けていきやすいため位置がわからなくなる。
つまり、観測には何かしらの相互作用を必要とし、量子力学で考える小さな世界では場所と動き(位置と運動量)を同時に知ることはできない。
これは観測機器の精度と関係なく、原理的に知ることができない。
ここで注意することがある。
まるで量子の場所と動きが、はじめは定まっているように書いているが、量子力学ではそう考えない。
「量子の位置も運動量も、観測するまで決まっていない。」と考えるのである。
どういうことか。
またまた誤解を恐れず言うと、量子力学の世界では、"椅子を見るまでは椅子がそこに無い"という観測第一主義を取っている。
もっと言えば、月が空を見上げたときだけ存在すると主張しているようなものである。
どうしてこんな意味不明な考え方をするのか。
それは、そう考えざるを得ない実験(二重スリット実験)があったからである。
気になる人は調べてみてほしいのだが、こいつのせいで大変なことになったのだ。
スピリチュアルで狙われるポイントと解釈問題
ここからが本題である。
既にわけがわからなくなっている方も多いと思われる。
しかしこの不可思議な前提を利用して、極端に簡略化した結論のみを解釈し、お金儲け等に使っている人がいる。
特に有名なものを紹介しよう。
観測によって結果が変わる
これです。
ここでよく使われるのが、「量子は観測する前は波で、観測した後は粒としてふるまう」というものである。
「観測」という言葉に引っ張られて、まるで自分の意識が物理的な影響を及ぼすかのように主張される方がいらっしゃるようだ。
とある科学の△△シリーズではこれを元ネタにしているらしい。
思い返して欲しいのだが、量子力学における観測とは測定を可能にする物理的作用のことである。どうして我々の意識とかが関係するのだろうか。
スピリチュアル界隈では"引き寄せの法則"なんて言うらしい。
基本的に、観測の話で物理的相互作用を出さない動画、記事はカスである。
ごめん言い過ぎかもしれない……が、少なくともこれを知っておくだけで大半の怪しげなスピリチュアル系量子力学は論破できる。
また、遅延選択量子消しゴム実験では過去改変(笑)などが言われているらしいが、これも全然違う。
もはやわかりやすく言うことを諦めると、測定結果を後から消したとかではなく、測定しなかったときの結果を取り出してるだけなのだ。
ところで、「量子は観測する前は波で、観測した後は粒としてふるまう」という主張はコペンハーゲン解釈と呼ばれている。
"解釈"と言ったが、それが重要なポイントで、二重スリット実験に明確な「答え」は無いのである。
つまり、コペンハーゲン解釈も二重スリット実験を説明するための学説の1つに過ぎない。
他にも「パイロット解釈」や「多世界解釈」など色々な学説があるが、コペンハーゲン解釈が現在最も有力なのだそう。
観測するまで量子は美少女だ!という「美少女解釈」なんてのもありかもしれない。
終わりに
この記事を書いてる人は一般工学部生です。
誤解を覚悟でわかりやすく書いてるつもりです。一応真面目に量子力学を勉強していますが、不味い表現や間違った理解を含んでいる場合があります。遠慮なくご指摘頂けると幸いです。
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