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ジュニアアスリートメディカルサポート通信Vo.7 〜乳酸値測定を用いたトレーニング管理〜
ジュニアアスリートメディカルサポート代表の宮田大揮です。我々は、小中学生のアスリートをサポートして5年ほどが経ちました。2024年7月から、クローズされていたサポート体制をウェブ上にオープンしました。具体的には、医学の力をジュニアアスリートの能力を最大限引き出すためにフルコミットする形で使っていこうというのがコンセプトで、アジアから世界に誇れる選手を様々なスポーツで輩出することを目的としています。
第7回では「乳酸値測定を用いたトレーニング管理」を話題に取り上げたいと思います。我々の施設では、ジュニアアスリートにフルコミットする形でサポートしているため、夏場の試合の安全管理からトレーニング強度の設定管理まで多岐にわたる業務を行なっています。今回のテーマは、トレーニング強度の設定・管理のところで用いられている乳酸測定です。
乳酸値は、古くから知られている筋肉痛の原因物質と言われていましたが、最近の考えではそれは少し違うことがわかってきました。乳酸は、エネルギーを産生する過程で出てくる代謝産物ですし、乳酸そのものもエネルギーに変換されるために、高強度のトレーニングをした際に乳酸が多く産生されますが、それ自体が筋疲労の物質ではなく、リン酸など他の原因があることがわかってきました。
つまり、高強度のトレーニングを行うと酸素を用いる通常のエネルギー供給システムでは間に合わない運動量であるため、解糖系を用いてエネルギーを多く産生した結果乳酸が代謝産物として上昇しているわけです。もちろん、増えた乳酸もエネルギーとして利用しているのですが、そこから得られるエネルギー量はそれほど多くはありません。
では、そのような乳酸値測定することの意味やどのようにトレーニングに活かしたらよいのか?今までも多くのコーチたちに相談を受けました。その中で我々は現時点では2つの方法を提案するようにしています。
1つ目は、乳酸値を確認することで、過剰な負担がかかっていないか?を確認するために用いてもらいます。2つ目は、高強度のトレーニングを行う目安として利用してもらうことになります。
成人で言えば、乳酸値が4mmol以下の場合は、酸素を十分取り込めているような軽い運動であることを示しています。4-10mmolの場合は、数十分の運動継続は可能だが、酸素の取り込みが十分ではなく、徐々に乳酸値が上昇してくるような運動になります。10mmol以上の場合は、激しい運動で1分程度しか続けられない運動になります。
ジュニアアスリートで運動直度に測定をしてみると、コーチが高強度と考えるトレーニングを行った後で4-5mmolが最大値でした。サッカー、野球、バスケットの通常のトレーニングではほとんど4mmol以下で推移しています。まだ、3年程度のデータなので統計的有意差を出せるほどではありませんが、我々がバックアップ時の目安にしているものは、
1、試合前日や夏場で疲労を蓄積させたくない時の運動:1.5mmol以下
2、試合週の前日や日常的な高いトレーニングレベル :1.6-3.0mmol
3、フィットネスレベルを上げる場合や
合宿など高強度トレーニングレベル:3.1-4.0mmol
4、翌日休養が必要もしくはトレーニング部位を変更すべき
トレーニングレベル:4.1mmol以上
としています。もちろん、個人差がありますし、トップレベルのジュニアアスリートについては、個別に異なる対応をしています。一部だけ公開すると、トップレベルのジュニアアスリートの場合は、乳酸が高い状態で(4mmol以上)の状態でどれだけ良い動きができるか?をトレーニングするため、乳酸値を運動の上限を設定するために使うのではなく、トレーニング開始時のタイミングを図るデータとして使用してもらっています(チームや個人で数値を変更しています)。
つまり、乳酸値を運動時に測定することで、①過剰な運動になっていないか?を評価でき、②トップレベルのジュニアアスリートでは、高強度トレーニングを開始する基準を提示することができます。
どのように使うか?は、それぞれ違いますのでオーダーメイドで対応させていただいております。
このようなことに医学的にフォローすることは日本の保険診療ではできませんので、小児科などで相談することができない側面もあり、我々は2024年7月からジュニアアスリートメディカルサポートとして一般向けにオープンいたしました。ご興味のある方はぜひとも下記サイトもご覧ください。
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