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感情を画面に乗せて

映画館の席に座り、スクリーンに映し出される物語に心を奪われる。そんな体験は、時に忘れられない記憶となる。友情や初恋の甘酸っぱさ、そして時にはドラマのような誤解も。直人にとっても、そんな体験の一つだった。彼は、目の前にいる彼女と映画を観た記憶を辿っていた。しかし、その記憶が実は別の人物とのものだと気づくのだった。


直人は確信を得るため、奈津に問いかけた。「この間、一緒にホラー映画を観に行ったよね?」とスマホでメッセージを送る。しかし、奈津からの返事は予想外のものだった。「ごめん、それは私の妹だったかも」とのこと。


記憶は不確かなもの。時には人の顔や出来事を混同し、小さな誤解を生むこともある。このような小さな誤解は、恥ずかしさや驚きを引き起こす。奈津は、映画を観に行ったのは自分ではなく、姉だったと直人に教えてくれたのだ。
 

「えっ、あの視聴覚室で見かけた子の妹さんなの?」と、驚きを隠せない様子で尋ねる直人。しかし、その瞬間から、直人は奈津についてもっと知りたいという思いが抑えきれなくなっていた。それはただの好奇心ではなく、奈津の笑顔、話し方、一緒にいると感じる安らぎが、直人の心を掴んで離さない。そして、直人は自分でも気づかないうちに、奈津のことを想う時間が増えていったのであった。


ドラマチックな展開の中で、実世は突如として直人と奈津の会話に加わった。直人のスマートフォンを手にし、実世は奈津と秘密裏のようにメッセージを交わし始める。そして、スマートフォンが直人の元へ戻ると、三人のLINEグループが完成されていた。予想外の展開に、この小さなデバイスを通じて結ばれる人間関係の温かさと、それによって生まれる喜びが直人の表情から読み取れた。直人は、彼女たちとの新たな繋がりに心からの喜びを感じていたのだ。



画面に表示されていたのは、奈津からの「よろしくね」というメッセージ。
 


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