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浦和レッズvs川崎フロンターレの得点について 〜「GKのミス」との付き合い方〜

「批判は失敗した時ではなく成功している時にこそするべき。」
「リスクを取らないことこそが最大のリスク。」

(追記)
西川選手のコメントが出ていたのでリンクシェア
https://web.gekisaka.jp/news/jleague/detail/?386955-386955-fl

今日の浦和川崎について。
スコアは1-1のドローだったが、その試合の2ゴールにGKが大きく関わったのでGKに携わるものとしてちょっと考えをまとめたのでぜひ見て欲しい。

両チームのGKとチーム戦術の関わりについて。

まず川崎の上福元。足元の技術が高くビルドアップに積極的に参加しており。なんならDFと同じラインでサポートすることもかなり多いGK。守備面でも高いポジショニングでDFラインの裏のスペースを広くカバーするリベロGK。

そして浦和の西川。フィードの能力が高くショート、ミドル、ロングどの距離のパスも正確に蹴ることができる。守備のアクションは解説不要、現役日本人GKの中ではNO.1。

両GKとも攻守にストロングがありチームの戦術にリンクしている。

さて、では今日のゴール。

1点目(浦和の得点)
浦和のゴールキックから。川崎FPが全員浦和陣地にいることでできた裏のスペースに安居が走り込むと西川ロングフィード。そのボールに対して飛び出した上福元がヘディングでクリア。ボールはセンターサークルにいた関根に渡り、コントロールから50m弾を流し込む。

2点目(川崎の得点)
浦和のビルドアップから。西川の横に両CBが開き、間に岩尾が下りながら顔を出す。西川が岩尾につけそれを岩尾はワンタッチで西川に返すが西川がコントロールミスしボールはそのままゴールに入る。

2つのゴールはいずれもいわゆる「GKのミス」で表現できる失点であると思う。ただ、この失点をどう捉えるべきなのかは明確にしておいた方が良いと考える。

2つのゴール。すなわち失点には共通点がある。
それは、採用しているチーム戦術とGKのスタイル上、いつかは起こりうる失点であるということ。

川崎はペナルティエリアを出て、というか自陣全体を守備範囲としアグレッシブにDFラインの裏をカバーする上福元を継続してスタメンで使っている。事実、上福元がそれによってフリーのFWにボールが渡る前にカットしたシーンは今シーズンいくつもある。実際この試合の前半にも同じようにエリアを飛び出しヘディングで大きくクリアしたシーンもあった。

GKがゴールを開けてでも飛び出すということはDFラインを高く保ち高い位置でボールを奪胃に行けるメリットがある。しかし当然エラーが起きればゴールががら空きというリスクもある。

浦和は今回のビルドアップと同じような形を継続して採用してきた。今回のように西川がボランチに縦パスをつけることで相手を引き出し、もう1列前の選手にスキップパスを送って前進するシーンは今年の浦和の定番である。

GKビルドアップに参加するのはビルドアップにおける数的優位を作る最も有効な手段であり、ピッチの中央で受けるのは次のパスの射程角度を最大化するメリットがある。しかし、今回のようにバックパスがゴールに直接入ったりプレッシャーをかけてきた相手選手にボールを奪われたりするリスクもある。

要はトレードオフである。
2018年、アンジェ・ポステコグルーがマリノスを指揮して以降、マリノスのGKはロングシュートによる失点を度々喫し、一部のサポーターの中では「マリノスのGKになるための洗礼儀式」とまでいうようになった。
しかし、彼曰く、「GKの守備位置の高さはアタッキングフットボールをする上では欠かせないものであり、それが原因で3点取られても、それをすることによって5点取れる。だからこれはリスクではない。」(残像・要約・意訳)だそうだ。

話を戻す。

上福元がペナルティエリアから出なくなれば今日のような失点は今後起きないだろう。
西川がボールを受けなくなれば今日のような失点は今後起きないだろう。
ではそうすべきなのか。

GKの基本は「失点の確率を極限まで下げること」である。しかし同時に「相手より多く得点を取る」というチームの目的にも取り組まなければならない。

人間は誰もがミスを犯す。いくらGKが週3で財布をなくしたり他人のコーラのペットボトルを勝手にシェイクようなクレイジーなやつだとしても(一応)人間なのでミスをする。

その時に大事なのは、そのミスの裏に何があるのか。もしもそれが日常的にメリットが大きいのであれば多少のデメリットは目を瞑りながら改善していくしかない。もし1つの失点を恐るがゆえに消極的なプレーを採用するのなら、その後失点は1つでは収まらなくなる。

この「トレードオフ思考の欠如」は現代社会の問題と言ってもいいと思う。世の中に100%成功する方法などない。ハイリターンゼロリスクなど存在しない。「ハイリターンローリスク」に向き合い、リスクによる損失があったとしても得られるリターンごとそのものを手放すべきではない。

※仮にGKが「ハイリスクローリターン」なことをしているのであればそれはもはや選手のせいではなくGKコーチの責任である。

たとえ1000人の生徒たちに素晴らしい人生を送るきっかけを与えたとしても1人の生徒の胸ぐらを掴んだ瞬間、その教員は抹殺されるのだ。
(体罰を容認してるわけじゃないですよ。例え話です。)

上福元と西川。今日は彼らはミスを犯し相手にゴールをプレゼントしてしまった。勝ち点3を逃す原因にもなってしまった。しかしどちらのGKに対しても彼らがこれまでもたらしてきたものをなかったことにしてはいけないし、彼らがこれからもたらしてくれるだろうものを忘れてはいけない。


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