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20230926 日記333 アリスとテレスのまぼろし工場の感想

観ました。

ユーフォの映画を観に行った時に予告編が放映されていて、予告編から岡田麿里作品だ……と思ってニヤニヤしていた。

なんとなくTLの感想をみていると評価が絶賛とあんまりで2分していて、真ん中がいない感じの感触だった(TLの評価を伺うのやめな)ので、楽しみにしていました。

個人的にはめちゃくちゃ良かったです。

生を実感するために痛みを感じることをやってるところとか、中学生が車の運転するシーンとか、おじいちゃんが電車の運転手するシーンとか、最初のラジオのくだりが後半でリフレインされる感じとか、大将!やってんね~~~!と思いながら悪い笑顔を浮かべていたのが7割くらいだったのだけど、最終的になんかすごい泣いていたし頷いていた。

永遠に抜け出せないかもしれないし、次の瞬間には消えてなくなしまうしれない。

その同時性を孕んだ世界で、それでも瞬間瞬間に生きていく意志こそが、痛みであり、大好きであり、大嫌いであるという話だったように思えた。

ダンボールから唐突に発見された、行方不明になった正宗のお父さんの日記に、抜け出せなくなった世界で、何も変えることもできず、何者にもなれなくても、ただ絵が上手くなっていっている正宗をみて「正宗みたいになりたい」と綴られていたシーンで悪い笑顔が涙に変わっていったことを覚えている。

すげえことするな……と思ったのが、最終盤に大人も子供も「この世界でどう生きるか」というのをそれぞれの意志で行動に移し、そのどれもがキャラクターの行動原理に従ったものとして描いた結果、岡田麿里版大乱闘スマッシュブラザーズ状態になっていったところだった。

汽車の中で「未来はあなたのものよ。でも、今の正宗の気持ちは私のもの」と睦美が五実に言うのもすげえことするな……と思った。

母としての愛情を持ってしまいそうな直感から距離を取っていて、母としてトンネルの先にある彼女の未来を願いながらも、あくまでもここにいる睦美は中学生で、変わらない世界で正宗と生きていくことを選んで、そういう愛憎入り乱れた感情が込められていて良かった。

佐上の暴走から人々を我に返らせ、常識人のように立ち振る舞っていた叔父さんも、正宗母を「いい母」では終わらせないため、結果的に行動としては佐上と同じ「この世界のツギハギを1日でも長く維持する」という方向に舵を切っていく矛盾も、人間の意志による変化の一つとして描いているのが良かったと思う。

結局、正宗も叔父さんに言った「色ボケじじい」と同じ穴の狢ではあり、正宗だけではなく、ハンドルを握って、アクセルを踏んでいた人たちはみんな等しくそうであったのだけど、そこに生まれた人の感情の大きさや内容に貴賤はなく、ただ意志を持って踏み出した一歩を描きたいのだろうなと感じた。

だから、父である正宗とあの世界で過ごした瞬間に抱いた感情を、五実(菊入沙希)が、現実に戻っても「初めての失恋」と称したラストシーンは、時間が止まった見伏で揺れ動いた全ての感情が、変わろうと願って起こした全ての行動が、確かに意味を成した瞬間でもあったようにも思う。

神機狼(しんきろう)に食われるか食われないかのジャッジ、後輩が「諦めとかマイナス方面の感情を持った人は食われていて、未来に向けた変化はむしろ見逃されている」と話していてちょっと笑ってしまった。厳しすぎるだろ。

神機狼(しんきろう)は、皆さんの『本気』の覚悟を応援しています!

ただし、その覚悟が命を賭けるほど本気で無い場合は〇す……。

叔父さんが色ボケのために180度意見を変えて、結局佐上と同じことを言ってるのに「そうだそうだ!」とついてくる特に何も考えていない人たちがあの世界で生き残っているので、逆に神機狼は諦めの感情を糧に生きてる可能性もある。(キュウべぇか?)

正宗と睦実がめっちゃキスしあうのを長尺で五実がみつめていて、そのせいで世界にヒビが入りまくるシーンを観て、思わず「セックス!!!!!!!!!!」と叫びそうになった。(このシーンまではずっと悪い笑いばかりを浮かべていた)

冒頭で正宗が女の子が好きだけど女の子みたいと言われるのは嫌な気持ちじゃないと言ってるのは、いいな……と思った。(本筋とはあまり関わってこなかった)

正直、五実を乗せた汽車がトンネルに入って、残された正宗たちが痛みを自覚しながら「赤ちゃんみたいな声が聞こえる……」と話したシーンで「はい。胎内回帰」と思ってしまったところはある。(思うな)

そして、トンネルを抜けた先がだったことから「生まれ直しの話なんですよね」と確信し、胎内回帰・生まれ直し加点(当アカウント独自の採点基準)が大幅に為されたこともあった。

その上で、エンドロールで主題歌:中島みゆき『心音(しんおん)』と表示されたので声が出そうになってしまった。

岡田麿里監督の作品、感想を語る時になると、岡田麿里成分の濃さに悪い笑みを浮かべてしまったところを取り上げがちではあるのだけど『さよならの朝に約束の花をかざろう』の感想を振り返ってみたら、こちらも絶賛していたので、実は、本質の部分で相当自分の好みと噛み合っているのだろうなと感じた。

一緒に観に行った後輩はかなり明確に好みではなかったと話していた(俺が否で後輩が肯のケースはたまにあるが、逆パターンは珍しい)のだけど、テーマ性というよりは語り方の問題と言っていたので、それもそれで分からないでもなかった。

とても良い映画でした。アリスちゃんとテレスちゃんの出演はありません。

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