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【琴爪の一筆】

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読書の際に「琴線に触れた」を超えて「琴爪で弾かれた」一文一節を紹介しつつ、その私的な心象や思考を綴ります。心を鳴らす言葉に出会った時の、その音色を忘れないように。
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#金重明

【琴爪の一筆】#10『「複雑系」入門』金重明⑤

【琴爪の一筆】#10『「複雑系」入門』金重明⑤

浮いちゃったんですよね。勢いこんで熱く伝えた、もしくは、恐る恐る覗き込むように伝えたものの「え、なにこの空気」ってなっちゃった。これ、一抹の寂しさはあるけど、その反面、とても素敵なことであると思わずにはいられないのです。

周りから浮くほど豊富な知見と、それに伴う何かの確信を得てしまった。こんな風に何かが視えた、視えはじめてしまった人は、必然的に多かれ少なかれ孤独を感じるはずなんです。この孤独が実

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【琴爪の一筆】#9『「複雑系」入門』金重明④

【琴爪の一筆】#9『「複雑系」入門』金重明④

さらに言い換えれば「そんな都合のいい話なんてあるわけねーだろ定理」です。定理名の話じゃなくその中身自体を伝えなさいと言われそうですが、例のごとく、この件の詳細は本書をご覧いただきたく。

ここでいう『動揺』とは、もちろん定理の示すセンセーショナルな内容に対するものですが、私の妄想的には「なんてテキトーな名前をつけやがるんだ!」という方面の動揺だったのなら、それはそれで面白かったのになと。
(その妄

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【琴爪の一筆】#8『「複雑系」入門』金重明③

【琴爪の一筆】#8『「複雑系」入門』金重明③

この一文は、『コッホ曲線』というフラクタル構造の一種で、両端が決まっているひとつながりの線であるにもかかわらず、理論上の長さが無限大(!)となってしまう特性をもつ線に関しての言及です。その興味深くも美しいフラクタル構造(自然界にも人体にも多数存在します)のお話は、当然のことながらぜひ本書をお読みいただきたく。

私にとって、特に数学の話においては「なんとなくわかるけど、なんとも腑に落ちづらい」なん

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【琴爪の一筆】#7『「複雑系」入門』金重明②

【琴爪の一筆】#7『「複雑系」入門』金重明②

ご承知の通り、これは「科学」の本です。
それゆえに、なぜこのような「大陸一の名工でもあるドワーフの長老が製作した稀代の一品を、くそ生意気なエルフの小僧にバカにされて、本人が30年ぶりにブチ切れた」的な一文が出現したのか、という謎が面白かったのです。
もちろんこれはメタファーであり、かつ、その対象も、特段誰かの怒気を含むようなものではありません。このメタファーの指し示す事象は、本書の中で今回の一文の

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【琴爪の一筆】#6『「複雑系」入門』金重明①

【琴爪の一筆】#6『「複雑系」入門』金重明①

ずっと似たようなことを考えていたのです。
きっとアプローチが違うだけなんだろうなと。

市井では、科学で解明できていないことは、やや否定的なニュアンスを含ませつつ、ざっくりと「オカルト」と括られたりする場合もあります。しかし、その本来の辞書的な意味の通り「見えていないもの」、つまりこの場合「現在の理屈では語りきれないもの」だとすれば、実は宗教でも科学でも、目指しているところは一緒で、いつの日か人間

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