見出し画像

ロサ会館でテトリス

「こちらは池袋警察署である。客引き行為は違法である。ただちにやめなさい!」

ものものしい男性の声のアナウンスが流れる池袋R通り。
至る所に監視カメラが配置され、数十メートルおきに立っている警察官が目を光らせる。夜ともなればギラギラとしたネオンに吸い寄せられた多くの人々で賑わっている。
このR通り、飲食店が並ぶ池袋屈指の繁華街だが、どこか昭和を思わせるレトロなたたずまい。アジアの街のようなカオスも感じる。


そんなR通りの中心に位置する商業ビル、それがR会館。
……もったいぶってイニシャル表記にしたが、あまり意味がないので実名で書こう。


◆ロサ会館

ロマンス通りにあるレトロ商業ビル、ロサ会館。
地上8階、地下2階のこのビルは、映画館、ボウリング場、ダーツ・ビリヤード場、フットサル場、ゲームセンター、ライブハウスなどなどが入った総合アミューズメント施設。
ロサ会館には私の人生の思い出が詰まっている。


同窓会で、職場の親睦会で、友達と遊びに行って、ボウリングを楽しんだロサボウル。

シネマ・ロサで観たいくつもの映画。

ネットカフェに入り浸っていたころもあった。
あの狭い異空間に一人でこもっているのはいい気分転換になったものだった。


ロサ会館。
よく行っていたが、改めて考えると謎の多いビルだ。
ざっくりと調べてみた。


◆ロサ会館の歴史

戦後すぐ、この場所に映画館「シネマ・ロサ」が作られたが、1960年台、映画館事業の斜陽化で総合娯楽施設を作ることになった。
それが「ロサ会館」である。

1968年オープンのロサ会館は、特徴あるピンク色の亀甲模様の外壁と、どの方向からでも入れる入り口の多さが印象的。
大規模なゲームセンターの先駆けとなって1978年のインベーダーブームで大盛況。来客が急増した。
元々はベージュとゴールドっぽい色だったようだが、1989年に集客のテコ入れとして外壁をピンク色に塗り替えている。

ロサ会館は近々行われる池袋再開発地区の対象になっており、この姿を見られるのはもう僅かな時間だろう。




さて、先日私がそんなロサ会館を久しぶりに訪ねたのは、1階のゲームセンターに行くためだった。私は、

✨テトリスが大好き✨


なのである。
以前はあちこちのゲームセンターにあったアーケード版テトリスだが、最近はすっかり見なくなった。行ったことのないゲーセンを見かけるとテトリスがないか確認しているのだが、今現在、私が知っているゲーセンでテトリスがあるのはここ、ロサ会館だけだ。

アーケード版じゃなくてもいいじゃないか、と思われるかもしれない。
だが、私はあのアーケード版テトリスの椅子に腰を下ろした時のワクワク感、レバーやボタンの感触、コインを入れる緊張感、それがたまらなく好きなんである。

落ちてくる7種のピースをいかにうまくはめて消していくか。
あえて隙間をあけるのもいい。
正方形や長いやつが連続でしつこく現れ、我慢を強いられるのも嫌いじゃない。
だんだん落ちるスピードが速まり、あのBGMで煽られるも、それを乗り越えた時のカタルシスが、何かとてつもない脳内物質を分泌しているように思う。

私はテトリス大好きゆえに、やりすぎないようゲームセンターに行くと自分に厳しい規律を設けていた。
すなわち両替は1回のみ、財布の中の百円玉が無くなったらやめること。

長年このマイ規律を忠実に守っていた私だったが、先日行ったとき、最後の百円玉のゲームで落下速度が速まるところを乗り越えられないという、くやしい終わり方をしてしまった。

……おのれ、もう1回やりたい。
しかし百円玉はもう無い。
くっ……。


その時、私の視野に電子マネー決済の機械が飛び込んできた。
気付くと、パスモを機械に当てている自分。
ピピッ、という電子音。


……この時ほど自分だめじゃん、と思ったことはなかったよね。



完全にタガがはずれた。
おそらくもう戻れない。







この記事が参加している募集

心に残ったゲーム