ゴリラ奉行 とおやまのゴリさん
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西町奉行・とおやま左衛門尉さま
ご出座ぁぁ~~~~
ドン ドン ドン ドン ドンドンドン・・・・・・ドン!
お白洲にひれふした一同の前に、裃姿の西町奉行・とおやま左衛門尉が姿を現した。
「グフゥ。
これより木の国屋下働き・リラ蔵殺しについて吟味いたす。
一同のもの、おもてを上げぇ~い!」
お白州に引き立てられた木の国屋佐吉、チンピラたちと、参考人として出廷した代官田中安兵衛、そして町娘おリラは、名奉行と名高いとおやま左衛門尉の気品ある裃姿に気圧された。
「グフゥ。
さて木の国屋佐吉。そのほう粗悪な木材を高く売りつけんがため田中安兵 衛と図り、それを知った下働きリラ蔵をここに並ぶやくざ者たちに殺害さ せしこと既に吟味の結果明白であるが左様相違無いか。」
「何を証拠にそのようなことを。
まったく身に覚えのないことでございます。」
「嘘です!
お奉行様、兄のリラ蔵はこの人たちに殺されたのです。
兄は私に楽をさせたいって懸命に働いていました。それなのに……」
「とおやま殿、証拠も無しにこれ以上の審議は無駄であろう。
名奉行とおやま左衛門尉殿の名にかかわりますぞ」
「そうだそうだ!」
「証拠を出してみろってんだ!」
「お奉行様、ゴリさんがすべてを知っています!
ゴリさんはこの者たちから私を助けてくれたんです!」
「ゴリさんだとぉ?
あんな遊び人の言うことなんか誰が信じるってんだよ!」
「そのゴリさんとやらをここに連れて来れるもんなら連れて来いよ!」
「そうだそうだ!」
「連れて来いってんだ!」
ウホ、ウホ、ウホ、ウホ、ウホ!
ウッホホ、ウホホ、ウッホホホ~~~!!
「えっ?」
「お奉行様?」
「何て?」
「とおやま様は
『やい、やい、やい、やい、やい!
さっきから聞いてりゃ勝手なことぬかしゃがって!!』
と、申されておる。」
「御冗談を」
「勝手などと」
「ですから濡れ衣で」
ウッホホホホホホホホ~~~~!!
とおやま左衛門尉は長袴の右足を一歩踏み出すと、おもむろに180度回転し、豪快に諸肌脱いだ。
ウホホホウホッホウホウホウホホ、
ウホウホウホッホウホホホホ~~
ウホ~~ウホ~~
ウホホホホホホ~~~ウホ!!
「え?え?え?」
「かっこいいけど」
「何て?何て?」
「とおやま様は
『じゃかあしいやい!!
あの日あの晩あの場所で
見事に実ったゴリさんの山盛りフルーツを
まさかてめぇら、見忘れたとは言わせねぇぞ!!』
と、申されておる。」
「山盛りフルーツ?」
「なんか見たっけ?」
「え?何?何のこと?」
「フルーツの彫り物……!
ゴリさん!お奉行様はゴリさんだったのですね!!」
「えっわかるの!? ゴリさんだってわかるの!?」
「毛深くてよくわかんねぇけど
胸のあたりにりんご?みかん?
みたいなのがちらっと見えたような」
「そもそもあの遊び人にフルーツの彫りもんなんかあったっけか?」
「私には見えます。
モフモフの下のとてもおいしそうな山盛りフルーツが!
ああ、お奉行様はゴリさんだったのですね!!」
「とおやま殿、お戯れが過ぎますな。
りんごをチラ見せした程度では何の証拠にもなりませぬぞ!」
ポコポコポコポコポコポコポコ! ポコ!
とおやま左衛門尉が胸をたたくと、心地よいポコポコ音がお白州に響き渡った。
「こ、この音は……!」
「くっ……間違いねぇ……あの晩の!」
「お、お奉行様が遊び人のゴリさんだったなんて……!」
「…………! おのれ、とおやま!!」
田中安兵衛が往生際悪くとおやま左衛門尉に切りかかろうとしたその時、強烈なゴリラパンチがさく裂。
田中は20メートルぶっとばされた。
とおやまはついでに佐吉とチンピラたちも20メートルぶっとばした。
「グフゥ。
おリラ。兄の分まで強く生きろよ。
さすればいつか、お前の心にも山盛りのフルーツが実るであろう……。」
「お奉行様……ありがとう……ありがとうございます。」
グフゥ。
これにて一件落着!!