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もしも芸者が弁護士だったら

前回投稿した「印籠ば~ん!水戸黄門的映画のすすめ」のコメント欄が私の記事にしては珍しい賑わいを見せた。皆さん楽しそうに時代劇を語っていらっしゃって、ああ、時代劇好きな方が多いんだなあと改めて感じた。

なのにこの令和の時代における時代劇の少なさはどうなのよ…。
時代劇ができる俳優が少なくなったのも一因かもしれない。
先日亡くなった千葉真一さんもかっこいい、時代劇の似合う俳優さんだった。
2009年放送のドラマ「サムライ・ハイスクール」の三浦春馬さんは、それはそれは美しくて色気のあるかっこいい若侍だった。
三浦春馬さんは必ずすばらしい時代劇俳優になると確信していたので、突然の訃報にただただ呆然とするしかなかった。


ところで私は一時期宝塚歌劇にハマっていた。
一番よく見ていたのは剣幸(つるぎみゆき・以下敬称略)が主演を務めていた頃の月組で、2番手男役が涼風真世、若手スターに天海祐希がいるという構成。

トップスターの個性によって組の雰囲気は大きく変わる。
ダンスが得意なら踊る場面が多かったり、歌もまたしかり。タッパのある美しいトップスターなら華やかなコスチュームものの芝居にしたり、演技力に定評があるならじっくり見せる芝居をやる。
当時の月組は実力派で演技力が高かったトップスター剣幸、フェアリータイプで歌唱力のある涼風真世、背が高く天性の華やかさのある天海祐希、といった布陣。剣幸、こだま愛の実力派トップコンビが演じる「ミーアンドマイガール」や「川霧の橋」は今も忘れ難い。

皆宝塚卒業後も活躍していて、当時の月組に思い入れのある私としては気になって見守ってしまう存在なのだ。



時代劇のことを書いてふと思い出したのが、宝塚卒業後の涼風真世が主演した土曜ワイド劇場「京都の芸者弁護士」
以前1回だけ見たことがあったのだが、いろんな意味で衝撃のドラマだった。
弁護士の涼風真世が夜は芸者となって悪事の証拠を集め、法廷に芸者姿で現れてしらばっくれている犯人を白状させるという、どこをどう見ても遠山の金さんなドラマだったのだが、法廷シーンのあまりのインパクトに常々もう1回見たいものだと思い続けてきた。
だが、なかなかその機会は訪れなかった。
その後、高島礼子主演の「芸者弁護士 藤波清香」を見たが、法廷に芸者姿で現れるといったシーンは無く、時がたつにつれ、あの時見たあの法廷シーンはまぼろしだったのでは‥‥とすら思うようになっていた。

調べてみると、なんと!日本映画専門チャンネルにて涼風版芸者弁護士の放送予定があるではないか!
これは見るしかない。そして私の記憶が正しいか検証するのだ!


涼風真世演じる主人公の藤波清香は昼は弁護士、夜は売れっ子芸者。
無実の罪を着せられた被告人の弁護を引き受けた清香は、芸者としてお座敷に現れ、真犯人の悪事の証拠をつかむ。

ドラマは終盤の法廷シーンへ。
清香は証人として法廷に立った実行犯の女に鋭い質問を浴びせるが、鼻で笑いとぼける女。
どうにも埒が明かない。

30分休廷。

審議が再開されるとなぜか弁護席に清香の姿がない。
同僚弁護士が質問を続けるもしぶとくかわし続ける女。

「はん、あほらしゅうて開いた口がふさがりませんわ。そんなこと言うた人の顔見てみたいわ!」

次の瞬間。法廷に響き渡る声が。

「嘘ついたらあきまへんえ」

扉が音もなく左右に開き、お囃子の笛の音とともに後ろから進み出る紫色の着物の芸者。

驚く傍聴席。
悪事の現場をその芸者に見られている女と傍聴席の共犯者は顔面蒼白。
しかし、
「芸者なんかに言われとうないわ!」
となおも罪を認めない女。

ぽん ぽんぽんぽん ぽんぽんぽん ぽんぽんぽん ぽんぽんぽん ぽん!

振り返った芸者の左胸には金色に輝く弁護士バッチ―――。

「芸者弁護士・藤波清香。なめたらあきまへんで!いさぎよう白状しなはれ!」

‥‥‥‥‥がっくりとうなだれ、
「芸者やと思って侮ったうちの負けや…。」
とすべてを白状する女。芸者姿で聞いている清香。

「終わります。」
裁判長に告げて弁護席に芸者姿のまま座る清香。


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私が昔見た芸者弁護士はまぼろしではなかった。

芸者が弁護士なのに普通に進行する裁判。いたって沈着冷静な関係者たち。
このシュールすぎる絵面をいったいどう表現すればよいのか。
もしかしたら私が知らないだけで、京都では法廷に芸者がいるのは普通の光景なのかもしれない。
展開は完全に遠山の金さん、シュールさはセクスィー部長のごとし。

これ、1時間ドラマにして「ドクターX」みたいにスタイリッシュにしたら、けっこうウケるんじゃなかろうか。

ウケないかなぁ~~~~。

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