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水の星にて9


マコ 身体が水でできた少女。12歳。謎の少年ユキトに出会う。

ユキト 水の星に迷い込んだ少年。不器用だが優しい性格。

ヒムロ ユキトの姉。月から水の星に来訪してきた。

ヒムロは退屈しのぎに本を読んでいた。ヒムロがいるのはマコの部屋だ。マコはユキトと出掛けていて部屋にはいない。

ヒムロの読んでいる本は水の星の地理について詳しく書かれたものだ。ユキトは一度でいいから読んでみなよとヒムロにこの本を薦めた。難解な本だが10 ページまではなんとか読むことができた。

(あの子は本当にマコの事が好きなのね)

マコは可愛い。ユキトがマコの事を好きになるのも分かる。

ヒムロはユキトがマコの事を愛しているのに感心した。

マコはユキトと一緒に水の星でよく催される祭りを見に出掛けた。

ヒムロもユキトから誘われたが二人だけで行くのはどうかと言って断った。

私は姉として弟の恋を応援している。ユキトの幸せを願っている。

(地球も月も歴史は違うけど…いつの時代も人は争うのね)

ヒムロが読んでいる本には争いの事がいっさい記されていないのだ。

水の星の歴史について調べても争いが全くない。

争いは不毛だ。何も残さない。

地球では大昔に核の均衡があったり、水を巡る争いがあった。

人々はいつしか平和を求めて地球から出て新天地である月へと旅立った。

ヒムロとユキトの先祖は月へと移住した地球人だった。

ヒムロはノートパソコンを開く。メールボックスに一通のメールが届いていた。

ヒムロは誰からだろう?と疑問に思ってメールを見てみる。

父からのメールだった。

『ヒムロへ。ユキトの調子はどうだ?大丈夫か?』

父はユキトの事を心配している。

『父さんへ。勿論よ。ユキトはここへ来てからも元気よ』

ヒムロは幼い頃から父と一緒に博物館へ行くのが好きだった。

ユキトも父が好きでついていった。

父は笑いながらユキトの髪をくしゃくしゃにする。

ヒムロは父の無精ヒゲを見て笑った。

(父さん、面白い)

ヒムロもユキトも父と一緒に遊ぶのが好きだった。

ユキトはマコに恋をしてから大人になったような気がした。

自分もいつか誰かに恋をするだろう。

私がそれまでユキトを守らなきゃ。

ヒムロは静かに本を閉じる。本棚はどこにあるかなと部屋中を見渡す。本棚がなかったので仕方なくマコのベッドの上に本を置く。ヒムロはベッドの左側にある茶色のタンスを見つめる。タンスの引き出しの中には昔のコインがたくさん入っているとマコの母から聞いた。マコの兄は出掛けていて家にいない。きっと仕事に行ったのだろう。ヒムロはタンスの下から三段目の引き出しを開ける。引き出しの中にはコインではなくフリルのついたブラジャーとショーツが入っていた。ヒムロは慌ててタンスの引き出しを閉める。ブラジャーのサイズはA75くらいだろうか。下着の他にもTシャツやスカートが畳まれて入れてあった。タンスの引き出しの中にはマコの洋服と下着が入っていた。ここはマコの部屋だ。

(どうしよう。見なかったことにしなきゃ)

ヒムロは引き出しの中のことを忘れようとあれこれ考える。

ヒムロは読書に戻る。

読書でもして心を落ち着かせよう。

ヒムロはその後寝てしまった。



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