水の星にて10
マコ 身体が水でできた少女。12歳。謎の少年ユキトに出会う。
ユキト 水の星に迷い込んだ少年。不器用だが優しい性格。
ヒムロ ユキトの姉。月から水の星に来訪してきた。
私が今までいた世界はたぶん綺麗じゃないと思います。ヒムロさんにも言ったような気がします。
マコは物静かな態度でヒムロに話す。マコは自分がユキトを愛している事を隠さずに全部話した。
「あなたは傷ついて傷ついて悩んだのね。昔のあなたを知らなくてごめんなさい…」
ヒムロはマコの背中を優しくさすりながら言う。
「いいえ。私は水みたいで…水なのに」
自分は水の星の住人だ。ユキトは月からの来訪者だ。自分はユキトが好きだ。愛しているのにうまく伝わらない時が多い。
「水は透明よね。ここも海だから…」
ヒムロが言い終わらないうちにマコはT シャツの裾を捲り上げる。目の前には海がある。
「ここで泳ぐの?」
「はい」
マコはT シャツを脱ぐと今度はショートパンツも脱ぐ。
まさか全部脱ぐのだろうか…?
ヒムロは恥ずかしくなり、後ろ向きの姿勢になる。
同性とはいえ裸を見るのは不味い。
マコはもっと恥じらうべきだ、とヒムロは思った。
マコは身体を水と同化させて海で泳いだ事が何度かある。
「大丈夫ですよ。ユキトはいないんで…」
マコは下着姿のままでヒムロに言う。
「そうじゃなくて…マコは可愛いから」
ヒムロは見てはいけないと自分に言い聞かせる。
マコは可愛い女の子だ。それはヒムロも分かる。
マコはブラジャーとショーツも脱ぐと裸になって海に潜る。脱ぎ捨てられたマコの服を見てヒムロはため息をつく。
マコは生まれたままの姿で海の中を泳ぐ。
海の底には珊瑚礁があってルリスズメダイの群れが泳いでいる。ルリスズメダイの群れは幼い頃に何度か見たことがある。
かわいい、とマコはルリスズメダイを見て思った。
青い魚の夢をよく見てたっけ。
水の星の事を月の人達は知らない。ユキトは笑いながらいつも月の話をしてくれる。
マコが海から上がるとヒムロがバスタオルを渡してくれた。
「風邪引いたら大変だわ。これで拭いて」
ありがとう、とマコはヒムロにお礼を言う。
マコは濡れた髪と身体を拭く。
マコの華奢な身体を見てヒムロが言う。
「マコって綺麗よね」
ヒムロの言葉にマコは思わず顔を赤くする。
マコは身体を拭いて服を着る。
珊瑚礁の事はいつかユキトに話そう。
あんな綺麗な海に青い魚たちの楽園があったなんて不思議だ。
「ヒムロさんも見ましたか?青い魚を」
マコの問いにヒムロは返事を躊躇う。
「ルリスズメダイよね。あの青くて…」
「そうです」
マコは裸足で砂浜を歩く。後ろからヒムロがついてくる。
「とても綺麗でびっくりしました。ヒムロさんやユキトにも見せてあげたかったな…」
「私もいつか見たいわ」
あの綺麗な楽園がずっとずっとありますように。
マコもヒムロも家路に着くまで珊瑚礁の事を考えていた。
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