ショートショート 「スカートをめくる」
とある女子生徒のスカートをめくる。別にそういう趣味が有るわけではない。俺が見たいのは、彼女の太ももに付けられた根性焼きや、針で刺された痕。昨日より増えている。
「誰にやられた?」
「…」
「仕返しが怖いのか?大丈夫だ。先生が守ってやる。だから言ってごらん。誰にやられたんだ?」
「…」
彼女は口を開こうとしない。いつもだ。俺はいつもの様にズボンを脱ぐと、タバコに火をつけた。生徒の前でタバコというのは好ましくないが、致し方ない。彼女にタバコを渡すと、根性焼きや、針で刺された痕で埋め尽くされた自分の太ももを彼女の前に差し出した。
「ほら、好きなだけやりなさい」
彼女はいつだって容赦ない。
「ぐっ…」
タバコをふかしつつ、根性焼きの数を増やしていく。
「うぅっ…」
間違っている事をしているのは良く分かっている。こんな憂さ晴らしの様な事をさせたって、彼女の心の傷が癒える訳もない。ただ、俺は彼女に恋をしていた。同じ痛みを分かち合いたいという自己満足。教材室で低いうめき声をあげる。
「ふっ…んんぐっ…」
タバコの火が、より一層強く押し付けられる。「これで終わりだよ」という彼女からの合図だ。
「はぁ…。どうだ、少しはスッキリしたか?」
「…」
彼女は無言で頷いた。タバコを持った彼女の手が、俺の口元まで伸びる。
「ふん…!」
俺の舌でタバコの火を消すと、俺のスーツのポケットにタバコを入れて教材室を出ていった。
「誰にやられた?」
「…」
俺は今日も彼女のスカートをめくっていた。跡は増えていない。気のせいか、スカートのサイズがいつもより大きい気がした。
「顔だけか…」
彼女の少し腫れた頬を触る。強く触ってしまったようで、彼女は少し顔を歪ませた。
「あ、悪い!痛むか?」
「…」
首を縦に振る。
スカートどころか、制服がいつもより大きいサイズに思えた。
「冷やしたか?」
「…」
首を横に振る。
「じゃあ今すぐ保健室に…え…?」
彼女はセーラー服を脱いでいた。いまいち状況が理解出来なかったが、この場面を見られたらマズイという判断は咄嗟に出来た。彼女の視線を感じながら教材室の鍵を掛ける。
「何してる?」
「…着て」
「…え?」
下着姿でセーラー服を俺に押し付ける。
「着て」
セーラー服を握りながら俺のスーツを脱がす。俺は、混乱からなのか、それとも夢にまで見たシチュエーションに本能が抵抗する事を許さなかったからなのか、動く事が出来なかった。
「今日はお姉ちゃんの制服着てきたから…先生でも着られると思う」
「…」
ちょっとだけ微笑みを見せた彼女。ネクタイに彼女の手が伸びた時に、なぜか自らネクタイをそそくさと外しだす俺。
「お姉さん居るんだ」
会話の言葉選びに困り、どうでも良い世間話をふる。
「うん。4つ上。このサイズなら先生でも着られるでしょ?」
「そう…だね」
162cmしかない俺なら、たしかに着られると思った。
「着たい?」
「着た…い…」
欲望を口に出したところで授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。夢から覚めた様な感覚になり天井を見上げる。
「急いでネクタイ着けないとだね」
少し生意気な笑みを見せる彼女。
「う、うん…。そうだね」
「放課後、ここで待っててね」
「…もちろん」
水曜日の3時間目は、私が担当する古文の授業はない。シャツの乱れを直し、ネクタイをつけ、少し伸びをしながらスーツを着る。大事な授業に雑音を混ぜぬよう、静かに教材室を後にした。…その瞬間、大事な事を忘れていたことに気づいた。
「タバコ買うの忘れてた~…」
別にタバコが好きな訳ではないが、彼女との絆を深める為には必要不可欠な物だ。現代の風潮として、教師が勤務時間中にタバコを吸う事は禁止とされているが、うちの高校は校長がヘビースモーカーであるためか、敷地外での喫煙は良しとされている。もちろん、生徒や近所の方に見つからない事が絶対条件であるが。とは言え、やはり問題になると面倒な事も多いため、殆どの教師は勤務中の喫煙は自重している。が、そんな中でもタバコを我慢出来ない大馬鹿教師を俺は知っている。いつも木に囲まれてタバコを吸う木偶の坊教師。
「またこんな所で…」
「バレなきゃ良いんでしょ?だいたい、お前もここに来たってことはそういうことだろ?」
「違うよ。俺は1本貰いに来ただけ」
「結局吸うんじゃん」
「今は吸わないよ」
「え?」
「とにかく、1本頼む」
「まぁ、良いけど。はい」
「どうも。明日1箱にして返す」
空の箱に、貰った1本を入れた。
「じゃあ、俺戻るわ」
「5本あげたら5箱になる?」
「1本でいい!」
放課後の密会に気分が上がっていたのか、つまらない冗談にも笑顔で返せた。
「はぁー」
時刻は午後4時30分過ぎ。彼女を待つ教材室で、お利口さんにネクタイを外す。ライターの着火チェックをしていると、彼女が静かに教材室に入ってきた。入るとすぐに鍵を掛け、足早に寄ってくる。つま先とつま先がぶつかる位まで近づくと、いきなりビンタをお見舞いされた。
「え…?」
「全裸になってなきゃダメでしょ」
「あ…ごめん」
すぐにスーツを脱ごうとすると、手を抑えられた。
「私が脱がせてあげる」
「あ、ありがとう」
「私のは、先生が…だよ?」
「え…もちろん」
手が震えていたせいか、セーラー服を脱がせるのに手間取る。彼女を全裸にする頃には、「ハクション」とくしゃみをする程度の肌寒さを感じていた。
「バレたら大変な事になっちゃうね」
「そ、そうだね…」
彼女の裸は直視出来なかった。すぐに、自分がさっきまで着ていたインナーを彼女に着せる。「スンスン」と匂いを嗅ぐ様な音が聞こえた。彼女は「おじさんみたいな匂いだね」と生意気な顔で笑う。
2人の着せ替えが終わる頃、時刻は5時を過ぎようとしていた。お互いのコスプレをした2人。彼女は、俺が着ていた物を全て身に纏っている。俺はというと、サイズの関係や諸事情あって、キャミソールとショーツは着る事が出来なかった。彼女は、タバコとライターを手に持ち準備万端だ。俺が椅子に座ると、彼女はタバコに火をつけた。そのまま、ひとふかしする彼女を俺は止めなかった。スカートをめくり、俺の太ももへタバコを押し付ける。声を出すのは我慢した。太ももに根性焼きの痕が残る。
「誰にやられたの?」
彼女が意地悪な笑顔を見せた。
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