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7月某日のワークショップ その前に

2年前の最後の舞台。
私は舞台上で泣いていた。

新作をやると決まって、準備から本番までの数年間、色んなことがあり過ぎた。
今となっては何が一番の原因か分からないけど、『ああ、この舞台が私の最後かも』と、何度も思った。
口には出さなかった。出したら、本当に戻れなくなるかもしれない。本当は、やめたくない。少なくともこんな形で。
歯を食いしばって、足を踏ん張って、本番に挑んだ。

千秋楽。

王子さまとキツネが2人で並んで語る場面。


王子さまは、Hちゃん。キツネは私。
音大を出て実力もあるHちゃんは、劣等感の塊な私の、良い所も悪い所もはっきり伝えてくれる、同い年の頼もしい同志。
後から入り、実力も無いくせに良い役ばかり貰える私に対し、Hちゃんは、どちらかと言うと2番手になる事が多かった。けれど確実に、私なんかよりも劇団に必要な存在。
準備期間中、Hちゃんは、この作品を辞退しようとしていた。世界的に蔓延した病に振り回され、疲弊していた。
私は必死で止めた。
懇願した。
まるでストーカーだった。
そのおかげか?何とか思いとどまってくれたHちゃん。
そのHちゃんと2人で肩を並べて語る場面。ふと、Hちゃんの横顔を見た時、その一瞬で、私は色んなことが一度に思い出されて、涙になって溢れてしまった。
マズイ!

マズイマズイマズイ!


涙を止めようと思っても、どうしようもなく溢れてくる。
困った。困った。

こんなに困っているのに止まらない。
そんな事ってある?


『時間を費やして飼い慣らしたものには、責任がある。君はそのバラに責任がある』


キツネのセリフ。
わたしは何度もこの言葉を自分に言い聞かせてきた。


もう、無理だ。

そう思った。
舞台の上で。


舞台が終わり楽屋へ戻ると、若い子達から
『ぎぶさん泣きすぎ〜。もらい泣き〜』
と言われた。

役に入りすぎたと思ったみたい。


違うんだ。
そうじゃないんだ。


言えずに、笑って返した。



もう無理だなぁ、、、って思った。
限界だなぁ、、、って。


色んな人が敵に見えて、誰を信じたらいいのか分からなくなって、意地を張って、自分で自分を追い込んだ。


貴重な時間を使って、お金を払って観にきて下さった方々。ごめんなさい。
この作品のために、時間を割いて協力して下さった方々、ごめんなさい。
一緒に作ってきたみんな、ごめんなさい。
好きな事をしてる筈なのに、訳もわからず、苦しんでる私を支えてくれたあなた、ごめんなさい。

歌が嫌い  って思ってしまって、ごめんなさい。

ここまで育てて下さった方々、ごめんなさい。


もう人前には立てない。
これが、25年お世話になった劇団を辞めることとなった原因の一つ。


あれから2年。
心残りがある。

あの作品では、最後まで辛かった。
楽しめなかった。
全然楽しめなかった。

それが心残り。

最後に楽しく歌いたい。
歌を通じて分かったことが沢山ある。
私は何も出来ないけど、楽しく歌って終わることが、恩返し。
自己満足だけど、それしか思いつかないから。
そうだ、ワークショップに参加しよう!

そう思って申し込んだワークショップも、やはりどこかで、人前に立つことの恐怖を想像して、何度も辞退しようと考えた。
けど、
けどけどけど。

行ってきました、ワークショップ!

今回2度目。
前回、9年前。それはとても楽しくて、楽しくて。
それはもう、楽しくて。
歌が楽しくて、その後に出た舞台もものすごく楽しめたのです。
あの感覚。
皆んな、色んな声で色んな歌い方をしている。色んな解釈の仕方があって、色んな表現の仕方がある。
上手な方もそうで無い方も、皆んなステキに人間味に溢れ、楽しく歌を歌っていた。あの感覚を、もう一度味わいたくて、その中で楽しく歌って、歌ってやっぱりいいね!って言って終わりたい。

怖い気持ちと、楽しく終わる事で恩返しとしたい気持ち。
どちらも自分勝手な事だけど。
勇気を出す。
でなければ終われない。

当日まで気持ちが行ったり来たりしたけれど、ついに、行ってきたのです。
ワークショップ。

そしてついに、会えたあの方のことも。
次回、改めてUPしたいと思います😸✨✨


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