見出し画像

X(旧Twitter)上の音楽系投票企画について

先日、相互フォロワーのADITLさんと飲んだ。現在まで音楽系投票企画を3つ主宰され、先日「2010年以降洋楽ベストソング100」のランキング発表を終えたところだ。

ADITLさんは、投票企画を主宰する前に、8つの音楽メディアのランキングの得点から、客観的な順位付けを発表するという企画をされていたそうだ。

これ、なかなか凄いと思う。昔「教養としてのロック名曲ベスト100」という、米ローリングストーンと英NMEの中間値のランキングを掲載した書籍を読んだことがあるが、王道なRSと尖ったNMEの複合から得られる「なんじゃこりゃ?」なランキングになっていた。
8つの異なる主観の複合により、更に興味深いランキングになっていることだろう。
ハッシュタグを使っていなかった故、検索し難い状況にあるとのことだが、後日ゆっくり拝見したいと思う。

そこで1位だったのがThe BeatlesのA Day in the Life、だからADITLというアカウント名なのだそうだ。

私は「#オールタイムUKベストソング100」ではじめてXの音楽系投票に参加した。実は私、USのバンドとして分類されるジミヘンの曲を間違えて投票していたのだが、ADITLさんの指摘を受けて曲を差し替えたのだ。それがなんとADITL。
しかしUKで最初にビートルズを投票してなかったとは…

音楽系投票企画の歴史

X上で音楽系の投票企画をよく見かける。Xの音楽界隈がめちゃくちゃ盛り上がるやつだ。が、私が初めて投票したのは去年の「#オールタイムUKベストソング100」からで、過去にどのような企画があったのかあまり知らない。調べようとXを開くとPeterさんが纏めてくれていた。本当に助かる。

Peterさんは過去に「#良さが分かるまで時間がかかった名盤」の投票を企画されていたようだ。こんな面白い企画、当時Twitterしていたら必ず投票しただろうに、残念ながら参加していないのだ。

ADITLさんはもちろんであるが、Xの音楽界隈が盛り上がる企画をしてくれるアカウントには本当に感謝である。

この纏めによると、Twitterでの音楽系の投票企画は一番古くて2014年の#ATB=オールタイムベストの複数のプログレ系の企画。

その後、アーティスト単位のATB企画が続く。ゆら帝やスピッツなどはいかにもTwitterの音楽好きが喜びそうな企画。

投票企画が活発になってくるのは2020年から。なんとこの年には9個の企画が実施されていた。

2020年といえばコロナ禍の真っ只中。当時はお店も閉まってるし、在宅がほとんどだったので心からヒマな状態。今のアカウント持ってなかった上にSNSで情報収集もロクにしていなかった。
それにしてもTwitterでこのような企画が盛り上がったのは、外界との接触を大きく遮断されたコロナ禍と関係あったのは間違いないだろう。

2021年に年代別の企画が初登場。80年代のアルバムと名曲。音楽界隈で有名なJMXさんもPeterさん同様、複数の投票企画を主宰されている。

2022年には良さが分からない名盤と良さが分かるまで時間がかかった名盤という攻めた二大企画が。あと年代シリーズが充実してくる。

2023にはオールタイムUKベストソング100。UKロックは私の音楽遍歴の肝でもあり、30曲に絞るのは大変だったが楽しい作業だった。しかし、選定作業はその時の気分に大きく左右される。なかなか後々まで納得のいく選定は難しいものだ。

企画のルール

このような投票企画、アーティストや国縛りの場合は明確なルールはあるけれど、そうではない趣旨の場合、一定のルールを設けないと成立しないだろう。

何れにせよ、まず必要なのは投票曲数と配点。これは集計する側の作業を楽にし、ランキングに説得力を持たせるために重要な要素だ。

ADITLさんは30曲に設定しているそうだ。例えば100曲のランキングを発表する場合、30曲は選び甲斐のある数字だと思うし、配点とのバランスにより、客観性も担保できると思う。

UKオールタイムの場合、対象が広大だったたため、30では少なかったとADITLさんは振り返っていた(私もこれは同感、切るのがめちゃくちゃ大変だった笑)。

あと、年代縛り企画においては、どんな線引きをするかも重要な要素だろう。例えばレッチリの楽曲Californication。アルバムのリリースは1999年でシングルカットは2000年。ベストソング企画の場合、これをどう扱うかはなかなか頭を痛める。

ビルボードチャートでもこういう例がある。フーファイターズのLearn to FlyとデスチャのSay My Name、アルバムリリースもシングルリリースも1999年なのに、シングルのチャートアクションが目立った時期は、秋から年末のカットということもあり2000年に入ってから。だから印象は2000年ヒット曲。これを90年代にカテゴライズするのもなかなかしっくりこない。

それ以外にも細かいルールを設定しないと、「あれどうなるのこれどうなるの」となってしまいそうだ。

投票者のルール

投票する側に着目すると、ルールというよりは選定のコンセプトなど、個々人の主張やこだわりみたいなものが感じられる。例えば、年代ベストソング編などでは合計30曲しか選べないので、同じアーティストの曲は複数選ばない(それは私です)など。

逆に特定のアーティストへの愛に溢れる投票者なら、30曲中かなりの曲数を同じアーティストで固めるなんてこともありそうだ。

あと、選定する楽曲にこだわりを感じる投票者が多数いる。音楽愛とこだわりに溢れるリストを眺めていると「あー、この方こんな感じが好きなんだなあ」と微笑ましくなったり関心したりする一方、集計者にとって全く不知の曲もあるようで「この曲一体何なの?」みたいなこともあったそうだ。

いずれにせよ、そこがこだわりを持った音楽好きが集うXの投票企画の良いところで、その集計結果は単なる人気投票とは全く違う様相を見せており、とても興味深い。

投票者にとっては、30曲を熟考しながら選定し発表(投票)することが、音楽好きとしての意思表示であり名刺代わりのようなものだろう。

面白いのは投票結果発表が終了した後も、企画で選ばれなかった楽曲を愛情たっぷりに紹介するツイートを続ける投票者が一定存在するのだ。
しかも、企画ハッシュタグの後ろに「選外供養」を付けて文字通り無念さを供養する動きも過去にはあったらしい。
Xで検索してみると、おー、あるある笑

更に、投票結果を自分なりに分析し、noteで記事を書くライター系アカウントも多数。

Xの音楽好きがみんなで作る投票企画は、発表が終わっても、いつまでも続く。

選ばれたら嬉しい

投票企画に参加するXの音楽ファンは、愛を込めてその作品を投票するのだから、自分が選んだ作品が発表されると狂喜乱舞する。反対に自分が選んだ作品が選ばれないとめちゃくちゃ悔しがる。そしてその思いとこだわりを込めて引用リツイートで発信する。

「あんたの作品ちゃうやろー」とは思わない。その人とその作品の間には、その人にしか感じられない思い出や印象があるわけで、それ自体がその人の作品みたいなものだからだ。

ランキングの発表と同時にリアルタイムで参加できるSNSの企画ならではだし、なんなら投票していなくても引リツやリプライであれこれ反応できる。
一定期間、共通の音楽テーマについてネット上で盛り上がることができるのは素晴らしいことだと思う、シンプルに。

おわりに

先日、3つの投票企画の立案・集計・コメント考案・発表までを無事終えられたADITLさんから、所感を忌憚なくお話しいただいた。それは主宰者にしか感じることのできないものだが、予想どおり苦労も大きかったようだ。

しかし、コメントを考えるために曲を聴き直した際に新たな発見があったり、参加者やネットの反応が嬉しかったりと苦労を上回る喜びがあったそうだ。
あと、集計の途中経過を見ながらドキドキニヤニヤするのは主宰者にしか味わえない感覚だろう。

酒の席で、自分が考えていることを少し話すと「じゃあ、帰ったら早速100曲に絞り込みますわ」と。

やってみるか

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?