「底辺からもむしり取ろうとする詐欺的年金制度」

何年か前までは年金は満25年間払い込まないと、老後に最低額の年金すら受け取れないことになっていた。今はどうなのか知らない。どれだけ払い込んできたとしても、氷河期世代以前の若年層は年金さえも貰えないらしい。だから私は年金を貰えないのだと諦めていた。今の40代から50代は皆そう思っている。積み立てた年金を老後に貰えないとしたら、なぜ払う必要があるのかと疑問に思うだろう。憤りを隠せない。国を動かす政治家は、どいつもこいつも「今だけ、カネだけ、自分だけ」。ふざけやがって。

人生に絶望して仕事を転々としていた私は途中で年金が払えなくなった。満25年の払い込みには、あと7ヶ月分足らない。7ヶ月分払えないだけで、老後の最低額の年金さえ受け取れない。こんなバカげた制度があるだろうか。だったら、今まで払い込んできた年金を1円残さず返してほしいと思った。50の私が20代の頃は国民年金は13,300円だった。それが今では16,000円近くなっている。不足している7ヶ月分を払おうと思うと10万円を超える。完全にムリ。

国民年金が払えなくなって何ヶ月もすると、年金機構から督促状が届いた。「年金を払い込まないと資産を差し押さえる」旨が封筒に目立つように記されていた。脅迫以外の何ものでもない。詐欺、カツアゲ、庶民イジメだ。私はその督促状を持って近くの年金事務所に行った。年金事務所の二階に相談窓口があった。私は職員に言った。
「年金機構からこれが届いたのですが、資産差し押さえってはっきり言って脅迫ですよね?やっていることは消費者金融と同じでしょ。何なんですか、これ?」
「いや、そういうわけじゃないですけどね」
年金事務所の職員はしどろもどろに言った。
「良かったら減免申請しましょうか?申請してみないと審査の結果は分かりませんけど」
そう言うので、減免申請することにした。数日後に「納付猶予」という審査結果が届いた。「納付猶予」というのは、年金を払ったことにはならない。払わなくてもいいが、払い込んだことにはならないという、ただそれだけのバカバカしい結果である。

しばらく何年かは、この納付猶予がずっと続いていた。老後に年金を貰えなくてもやむなし。ただ、たった7ヶ月分足らないだけで、老後の年金が0だとしたら、今まで払ってきた年金はいったい何だったのか?それならいっそのこと、今までの払い込んだ分を全て返してくれよと思う。

つい先日、年金機構からハガキが届いた。今まで継続して納付猶予だったのが却下された通知だった。却下されたから年金を払えという通知だった。そして、その数日後に年金払い込みの納付書が届いた。
多分、実家に住んでいること、親と同居していること、もっと言えばクルマを所有しているからだろう。そんな余裕があるなら年金を払えるはずだとイチャモンをつけてくる。

この手の国の制度というのは非常におかしくて矛盾している。
たとえば老後の年金は所得と見なされて、年金からも所得税を取られるとか、私のように家庭の事情から食うにも困っている人間が、親と同居しているとか、クルマを所有しているだけで、年金を払えるはずだと判断されるとか。一日三食食べられない人間が年金を払える余裕なんかあるはずがない。クルマを所有しなければ、働きに行くことさえもままならない。ひょっとしたら、親の介護にもクルマが必要で、老後に貰えるか貰えないか分からないような年金など払う余裕がないとか。私のような境遇の人はとても多いと思う。

いわゆる底辺、貧困層に、こうやってイヤでも払わせる年金制度とは一体何なのか?本当に誠実な年金制度とはとても思えない。今日を生きるのに必死、食うのにも必死。そういう困窮している人間や世帯に生活保護やセーフティーネットすらない日本の制度の中で何とか食いつないでいる人間は数え切れないくらいいるはずだ。なぜこのような困窮している人間から、有無を言わさずカネをむしり取ろうとするのか。個人個人によって金銭事情も労働事情も家庭事情もみんな違うはず。ソーシャルワーカーのような相談員すらいないのに、一律カネをむしり取ろうとするこの国の腐りきった制度には怒りを隠せない、やり切れない。税金、年金、保険税を払えない弱者は死ねと言っているような国。それが今の日本の姿であり、今の日本の政治である。

私はこの国の総理大臣、省庁官僚、政治家、役人、公務員、どいつもコイツも権力をふりかざして、底辺層から搾取するだけの詐欺師だと思っている。日本はそういう悪意に満ちた人間に操られている、誠に気の毒な国だと思っている。