【CHC】守護神Brandon Hughes爆誕に必要な要素
お疲れ様です、イサシキです。
時に、野球というスポーツでは長い歴史の中で投手の役割分業が進み、現在では先発完投型が希少価値の高い選手となり、どの球団にも「抑え」という役割を持った投手が1人は固定起用される時代になりました。
とりわけアメリカでも、ジュニア時代から極度な投げ込みや肩肘の酷使をさせないための球数制限は当たり前のような時代。当然MLBでも役割分業は存在し、各球団には「クローザー(候補)」と呼ばれる選手がいます。
私の好きなChicago Cubsという球団にもクローザーは存在しており、過去には80年代のクローザーであったLee Smithや2000年代初頭に活躍したRyan Dempster、近年では流動的な投手起用の中でHector Rondon、Wade Davis、Craig kimbrel、Aroldis Chapmanらが輝きを放つクローザーとして印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
そんなCubsのクローザーの歴史を受け継いで、今年のクローザー候補に挙がっている選手。それがBrandon Heghesです。
…ん?Brandon Heghes???
Brandon Hughesといえば昨シーズン途中からChristopher Morelと一緒にコールアップされたリリーフLHPで、ちょっとフォームが変則的で、イレギュラーな初登板だったにもかかわらず5者連続三振を奪って…。
ここまでHeghesのことを挙げられればあなたは立派なCubsFan。今日はそんなに注目度が高くないであろうHeghesのポテンシャルやら課題点やら将来像やらをアナライズしてみようというやつです。
投球スタイル
まずはHeghesの球種別割合。投球の53%が速球系で占めており、平均球速は共に93.2MPH。続いて投球の46%を占めるSliderは平均球速82.9MPH。残りの1%はChange-upですが、昨シーズン投じたのはわずか11球でしたので、実質4CとSliderの2ピッチと言えるでしょう。
続いてカウント別デリバリーを見ていくと、投手有利と言われるストライク先行時にはSliderの割合が高く、ボールが先行した際には4Cメインの組み立てとなっていることがわかります。またHughesのSliderはWhiffが49.1%、K%が38.1%で空振りを多く奪える特徴を有しているため、これが彼のマネーピッチ、いわゆる「決め球」ということができるでしょう。
続いてHeghesの球種別デリバリーですが、投球割合の高い2球種で主に右打者のインコースにより多くのボールを投げ込んでいるのがわかります。特に4Cは右打者のインコースへおよそボール1~1.5個分、Sliderはおよそボール0.5個分のゾーン管理がされていると捉えることもできますが、HughesのBB%が9.2%であることや、全投球の45.9%に留まったストライクゾーンへのデリバリーも考えれば、決して意図したコマンド能力を有しているわけでもないことは想定しておかなければなりません。もちろんこの手のタイプはボール球を振らせることを目的とした投球スタイルを確立できるかに主眼を置く場合もありますが…。
最後にHeghesの球種成分。上図のイラスト2枚はHughesの|各球種に何時方向の回転がかかっているかを示したもの《左:リリース時点で記録された回転方向/右:推測の回転方向》です。
下図を見ていただくと、4CはVertical(垂直方向)への落差が少ない代わりにHorizonal(水平方向)へのムーブメントがMLB平均を大きく上回っており、映像を確認する限りでは3塁方向へとSliderのような滑りを見せる「真っスラ」の使い手かなあと思います。
対して、上図からは4Cに関して大きな違いがないのに対し、Sliderの軌道が若干水平方向気味ではないかとの予測が出ています。
その証拠かどうかはわかりませんが、下図ではSliderのVerticalとHorizonalへのムーブメントがいずれも平均以下。簡潔に述べると「あまり沈まず、大きな横滑りをしているわけでもない」というSliderがHughesの特徴となります。なんじゃそりゃ。
サンプルとして昨シーズン9月末の公式戦でHarperへと投じたマネーピッチのSliderを見てみても、確かにそこまで大きな変化を見せているわけではないなあという印象を抱きます、軌道的にもスイーパーとはあまり近しい感じもしませんし。個人的にはGiants所属Alex WoodのSliderに似ているかなあと思ったりしていますが。
とりあえずここまでのまとめとして
ということを頭に入れていただけるといいかなあと思います。ひと昔前であればワンポイントリリーフとして起用されるケースもあったでしょうし、チームに1人はいて困る存在にはならない投手といった評価もできるかなあと思います。
投球内容と課題点
ここからは実際に、ルーキーイヤーとなった昨シーズンどんな成績を残したのかを見ていきたいと思います。
まずはスタンダードな部分から。昨シーズンはルーキーイヤーながらチーム2位の57試合に登板。57.2イニングを上回る68奪三振をマークして持ち前の能力を発揮した一方で被安打、与四死球はやや多め。WHIPも1.09あることから、ドミネート的な投球というよりはランナーをそれなりに溜めながらも奪三振でピンチを脱する劇場型のリリーバーに近いタイプかなあといった感じです。
続いて対右、対左などの詳細な部分について。限定的なシチュエーションでの登板は少なく、どちらを苦にしている印象はあまり見受けられません。
ただAS明けから、試合の局面を左右する場面で特に右打者からの被弾が目立つようになり、後ろを任される投手としての資質や耐久性などが試させた結果となりました。
またホームフィールドにあたるWrigley Fieldでの被打率の高さも少々気になるところですが、それ以上に奪三振に目を惹かれるので、「現地ファンに胃薬を常備させるファンサービスを欠かさない」投球がお披露目されていると思っておけば大丈夫でしょう、いや大丈夫じゃない。
個人的には右打者に相当ハードヒットを許しているのではないかという印象を抱きます。ここには示していませんが、右打者に対するFIPは6.08というトンデモ試算で、FB%も55.7%。うちHR/FBは20.4%なので、右打者相手に5回フライを打ち上げられたら1本はHRになっているという現状です。
さらにもう少し踏み込んでHeghesの投球をアナライズしていきましょう、自項目はカウント別打席結果です。
全体的にカウント有利な状態でも不利な状態でもそれ相応の成績かなあと感じますが、目立つのはカウント0-1からの被HR8でしょうか。このカウントは昨シーズン最も多いシチュエーションであり、Heghesの初球ストライク率が67.2%であることも鑑みれば決して悪いことではなく、むしろ相対的に指標も跳ね上がりやすい部分であるのは百も承知ですが流石にこれは打たれ過ぎです。私はこの部分に不用意な配球ないしは球種選択、コマンド能力不足があると考えています。
また2ボールカウントではすべてのシチュエーションでBB%が10~40%台を記録しており、特に2-0からの同指標は36.4%。ボール先行のカウントにしてしまうとそこからのリカバリーができずに四球へとつながってしまう部分も課題と言えるでしょうか。
続いてはSwing&Takeにおける得点増減について。各4分野はそれぞれ下記くらいで捉えてください。
際立つのはShadowゾーンのRunValueが-13を記録していることでしょうか。このゾーンへの投球割合は40%と最も高く、Swing時のRunValueが-12。BaseballSavantでは「Zone17」に指定されている、右打者の膝元へと食い込むSliderとMLBでトレンドになっている高めの4CがHeghesにとって1つ武器になっているといってもいいでしょう。特にZone17近辺への投球数297で被打率.027はもはや一流投手ですよね(買い被りの可能性大)。
反面、Heart内でRunValue+2と、ややストライクゾーンでのデリバリーに課題があることも言えるでしょう。まあHeartは正直打たれても仕方ないかなあと割り切れる部分でもあるんですが、同じ左の変則派リリーフとしてMLBでは代表格に挙げられるであろうPadres所属のJosh HaderはHeart内のRunValueが-8と非常に優秀。Heghesが今後一流のリリーフとして名を馳せるにはゾーン内での投球を改善させることが必須となってくるでしょう。
ということでこの章をまとめますと
といったところでしょうか。良い部分もあれば改善したい部分も点在するのはどの選手も同じなので、
ここからはいよいよ守護神Hughes爆誕のために必要な要素を予想していきたいと思います。
とはいえあれもこれもなんて書いているうちにトレードに出されるなんてことになったら大変なので、私から提示する要素は1つの球種に対してのみです。そう、それは…
4Cの質+Extensionの向上
です。
前段階でSliderよりも4Cの被打率などが高い説明をしたと思いますが、具体的には上記の表に挙げた指標あたりの改善と根本的な球速アップ、それからExtensionを伸長させることあたりがブレイクアウトの要素に絡んでくるかなあと考えています。
まずは指標面。SpinRateはMLBでも中の上レベルですので、後は
「当てられない・上げられない」4Cへと進化させていくことが必要かと思います。
「当てられない」はやはり球速を上げることを大前提として、各コーナーへのコマンド能力向上や真っスラ成分を活かした右打者へのバックドアを定着させることがキーポイントかなあと感じています。
球速は現在のAverageである93.2MPHからもう2~3MPHほどの上昇が欲しいというのが私の私利私欲まみれの願望で、コマンドはMLB平均レベルでいられればいいかなあと思います。バックドアに関してはもし扱えたら、程度です。ただ如何せんHughesの投球フォームはHaderのようにインステップを踏んでいるわけでもないので、角度のあるクロスファイヤー+真っスラの組み合わせはあまり現実的ではないような気がしますが、実現すれば非常に大きなウェポンとなり得るでしょう。
「上げられない」は正直努力義務みたいな感じで述べています。2Cボーラーではない故に打球管理が劣るのも仕方ないくらいの許容ですが、そうであればやはり低めへのコマンドに対する意識やポップフライを量産させるための工夫が欲しいところでしょうか。
その工夫が、私の中では「Extensionの伸長」ではないかと思っています。
Extensionって言えば「契約延長の話か?」と思う方もいるかもしれませんが、こちらは単純に「プレートからリリースポイントまでの距離のこと」を指します。一般的にはExtensionの長い方がよりホームプレートまで短い距離で投げている、つまり体感速度や視覚的にも打者を惑わす効果がある可能性が高いということになります。
Hughesの4Cは6.3ftで左投手の中ではややMLB平均より短め。つまりHughesはいわゆる「球離れが早め」の4Cであることがわかります。
もしこのExtensionが伸長して4Cでも勝負できるようにするためには、少なくともHaderの2CでのExtension6.8ftは欲しいところ。
たった10cmボールを前に手放すだけとは言えず、大幅な投球の変化であるためフォームの崩壊を招く恐れもあるでしょう。もしかしたら持ち味のSliderが消えてしまう可能性だってあります。
ただその10cmで球持ちが長くなり、ボールに対する力を伝える時間が増えることによって球速アップや回転数に飛躍的上昇が見込めるのであれば試す価値はあると思います。
希少なLHPリリーフとして
ここまでHughesのブレークには何が必要かを考えてきました。
Cubsは現状40人枠にもHughes以外めぼしい左投手のリリーフがいない状況であり、このHughesの役割とそれによる結果のもたらし方はチームに大きな影響を与えると言っても過言ではないでしょう。
もしプロジェクション通りにHughesがオープニング・デイをクローザーで迎えるとしたならば、一抹の不安とそれ以上の期待を込めて見届けたいと思っています。
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