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【ERP導入①〜カットオーバーまで】

 かれこれ10年以上前になりますがユーザー部門としてERPパッケージを導入した経緯です。

 身バレしないように一部変更し「体験に基づいた」フィクションとしています(後半は100円となります)

操作説明からのスタート

200X年。いきなりだった。
初めてのERP導入プロジェクトの会合は標準画面の操作方法と基本となる業務フローの説明だった。

「えっ?そこからなん?」

システムの導入目的や期待する効果やそのパッケージのコンセプトや想定する業態などの説明は一切合切すっ飛ばしての操作説明。これが苦難の導入プロジェクトの幕開けだった。

標準画面

旧ホストでは一つのメニューでマスター情報を一括登録できたが、ERPでは複数の画面で個別登録する仕様であり手順も多く難解であった。また、画面によって検索方法が違ったり、デフォルトボタンの位置が違う、ショートカットキーの割り当てが統一されてないなどで

「今聞いても分からんから実際に使う時に覚えよう」

素人コンサル

導入プロジェクトに動員されたコンサルタントの力量はすぐに分かった。質問しても操作方法以外答えられない。さらに質問するとちょっとこなれた中ボスが出てきて業務フローをどう変える必要があるかなどを多少なりとも答えてはくれた。
しかし、結局最後は開発元に質問すると言う状況であった。我々は経験の浅い導入コンサルをあてがわれお金を払って彼らをOJT教育するような事態となった。

それは仕様

質問に対する開発元のERPベンダーからの回答はほとんど「これが仕様です」で余り役に立たなかった。それ以上の説明や適用条件など様々な質問をしたがそう言う具体的なことには一切答えられることはなかった。

そこが大事やん。ユーザーで考えろって?ベンダーはともかく導入プロジェクトは我々に何をさせたいかの意思はないの?

入力項目が多すぎる

マスターには100個ぐらい?にもなるとんでもない数の設定項目があった。そして、大半は使わなさそうな項目だった。
しかし、同時に我々が管理したい項目もかなりなかった。これらは後にアドオンすることになる。

迫るカットオーバー

コンサルとIT統括部からBOMやトランザクションのコンバートについて様々なやりとりがあったが部門によって随分と異なるためデータ移管プログラムの開発はきっと恐るべきものだったに違いない。と言うのもある時、プロジェクトからとんでもない指示が来た。

「トランザクション(注残、仕掛りデータなど)のコンバートプログラムがカットオーバーに間に合わないので手作業で移管してください。」

「‼︎」

新旧システムで並行生産と業績管理

「は?手作業で移管?どうやって?業績集計や原価計算はどうするの?メチャクチャなるよ?」

と聞くと

「現行部門は残してERP用の新部門を立てるので、製品は順次完成次第、新部門に移動させて出荷してください」

つまり業績集計の対象部門が倍になり(原価計算方法も変えたので世にも恐ろしい事に)、仕掛かりを旧ホストで生産しながらERPに移動させながら新規生産をERPでやると言う…。何ちゅう事させるねん!人員おんなじやで!頭大丈夫か!?会社傾くよ!?

カットオーバーの延期

GWにカットオーバーする予定だったが
夏季休暇にまで延期された。12月決算のため、IT統括部曰く

「これ以上遅らせられない」

そう言えば、最近コンサルは我々ユーザー部門のところに顔を出さなくなったな…

夏季休暇明け〜カットオーバー

ERPの門出である。初日の午前中は静かに時が流れた。だってERPを十分理解している人はほとんどいないのだから。しかし、昼過ぎからシステムに強い従業員あたりからざわめきが聞こえ始めた

「これ、BOMのコンバート失敗してるんちゃうか?」

移管仕様書と比べると確かに何かにおかしい…。

IT統括部に問い合わせてもあちらはあちらで大混乱に陥っていてまともに問い合わせに答えられず

「すみません。現在、原因と影響範囲を調査中です」

を繰り返すばかり…

BOMの移管失敗と再構築

生産管理、工程管理の係長と主任が集まって対応を協議。

「BOMのコンバートは信用できないので一つ一つ時間をかけて手作業で再構築する」

「そのため毎月、再整備する製品を選定して長期戦とする」

管理職はこれを承認。そう、困難を覚悟を決めて乗り越えるのはいつだって中堅層なのだ。

幸か不幸か、早い段階で旧ホストとERPで並行生産する事になっていたため少しずつ現場の努力で移管する方法を選択できたわけだ。

合わせてPDMから転送される部品表をERPの各マスターに製造BOMとして一括整備して登録するアドオンをIT統括部が緊急開発。ここの対応は良かった。

この火中の栗を拾ってくれたのは、一部のIT統括部の中堅達と新しく登場した中ボスのコンサルだった。BOM登録する上記のアドオン開発はこの中ボスコンサルの一言が決め手となった。

「過去の導入事例を見ても標準画面でBOMやマスター整備は厳しいと思います。皆さん、何らかのアドオンをされてる事が多いです」

今まで何やったんかな…。

MRPが…

カットオーバーして数週間経った頃。工程担当や生産ライン、外注から部品が入らないと言う声が出始めた。「あれ?納期がおかしいな」と思いつつ納期変更を繰り返すうちに、生産管理の担当者が気が付いた。よくよく見ると自動確定されているMRPの予定オーダーが不足日より随分未来の納期で手配していたのだ。中には部品の納期が製品出荷日より未来になってるものも多数…。製品出荷が滞り工場長や管理職の表情に焦りの色が出始めた。

シン・中ボスコンサル登場

「ああ、これはMRPの仕様がXXで XXなるため納期が後ろ倒しになるんです。まずは一旦、自動確定を止めて手動確定にしましょう」

新しい中ボスコンサルは即答した。どうやら今までのコンサルとは違うようだ。こうしてこの中ボスコンサルとはその後、10年以上の付き合いとなる。しかし、仕様が分かっても不足日を見る画面はMRPのオーダー確定画面とは別で奥の方にあってとても見ながら確定などしていられない…。

中ボスは、
「この画面で一品ずつ需給を見られますが手間かかるからちょっとしんどいですよね…。ここに欠品チェック機能があることにはあるのですが分かりにくいかなと思います」

「じゃぁ、他社はどうされてるのですか?」

「ERPとは別にビューアーを用意されてますね…」

誰?ERPだけで仕事しろって言ったんは?

…続く

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