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もしも叶うなら(原題:Magari)

イタリア映画祭2021 5本目の紹介。今年の映画祭の作品は、大人に翻弄される子どもが題材となっている話がそういえば多い。

「もしも叶うなら(原題:Magari)」 ジネヴラ・エルカン監督作品。この女性監督はかつてベルトルッチ の「シャンドライの恋」(原題:L'assedio)の助監督をつとめてたこともあったりと映画業界は長いが、本作品が監督としてのデビュー作。

知らなかった方が多いのでは無いだろうか。(私は存じ上げませんでした)それでも私が『無名の監督』と書くのに躊躇したのは理由があって、エルカンという苗字でピンとくる方もいるかもしれないが、彼女は何を隠そうイタリアで超のつく有名な資産家ファミリーAgnelli家(もともとFIATの創始者)の一人で、経済界でも政界でも(もちろん社交界、芸能界でも)大変な権力を持つと言われている元FIAT会長、著名実業家のGiovanni Agnelli、の孫である。育ちもイギリス、フランス、ブラジルと、なんとなく生粋のイタリア人とは異なる国際人である。

というわけで、デビュー作にしてリッカルド・スカマルチョ、アルバ・ロルヴァルケルの豪華キャストである。

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この作品、あまり全面的には出していないので気づきにくいが、舞台は80年代である。ところどころ子どもが話をしているアメリカのTV番組「L'uomo da sei milioni di dollari(600万ドルの男)」やゲーム機、歯の矯正の仕方などで「なつかしー!」と叫んでしまう年齢層の人もいると思う。1979年生まれのジネヴラ・エルカン本人の幼少期は少なからず素材になっていると考えられる。

また面白いことに実はスカマルチョもロルヴァルケルも同じく1979年生まれ。それぞれ生まれや育ち境遇は異なるものの、何かあの頃の共通の感覚のようなものに思い巡らせながら皆で作品作りをしていたのではないだろうか。そう思うと微笑ましい。

両親が離婚し、パリで母と暮らすジャン、セバスティアーノ、アルマの 3 兄妹。母は新しいパートナーとの間の子を妊娠し、自分の休養のためにと子どもたちを年末休暇中にローマに住む父親のもとへ送り出す。父は映画脚本家になる夢を捨てきれずに仕事にも恋にも邁進しているが、と同時に離れたところに住む子どもたちをとても溺愛している。アルマは魅力的な父と美人の母が大好きで、また元どおりの夫婦になることができると信じていつも願っている。

親になること、親の権限、子の権限、子育てとは、家族とはという永遠のテーマを、アルマの妄想などロマンチックなシーンが入れながらも甘すぎず、品のあるコメディ仕上がっている映画。スカマルチョは裕福で奔放だけど魅力的な男を演じるのははまり役で、ロルヴァルケルもこの時代の奔放な女性はぴったりであった。新しい家族の形を再提案してくれる優しい眼差しの映画。


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