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【施設レポート#3】起業推進都市・横浜ならではの女性起業支援とは?男女共同参画センター横浜 フォーラム「女性起業Upルーム」

こんにちは!「&ジェンダード・イノベーション」メンバー、お茶の水女子大学 学部4年の馬倉(うまくら)です。「&ジェンダード・イノベーション」では、読者の皆さまに起業をより身近に感じていただくきっかけをつくるべく、起業支援施設の調査レポートや、起業を支援されている方々の生の声を連載としてお届けしています。

今回取材した「女性起業Upルーム」は、横浜市の戸塚駅から徒歩5分の「男女共同参画センター横浜 フォーラム」内にある、横浜市男女共同参画推進協会が運営する女性向け起業支援施設です。
 
男女共同参画センターとは、都道府県、市町村などが自治体の男女共同参画行政の推進のために設置する、総合施設のこと。「男女共同参画センター横浜 フォーラム」でも、子育て、就労、暮らしなど女性が抱える問題全般の情報提供や相談が行われていますが、女性の起業支援に力を入れている施設は先進的で、全国的にも珍しい事例です。
 
女性起業支援を始めた経緯や、どのような支援をされているのかなど、館長の常光さんにお話を伺いました。


起業を目指す女性をゼロからサポート

―「女性起業UPルーム」はどのようにスタートしたのでしょうか?

常光氏 1988年に「男女共同参画センター横浜 フォーラム」が開館してから、女性の就労・自立のサポートを続けてきました。2006年頃から、インターネットを活用して、小規模でも展開できる起業の支援を開始、2007年に日本マイクロソフト株式会社、横浜市と協働して、横浜で起業を目指す女性の支援拠点として「女性起業UPルーム」を始動しました。
 
「女性起業UPルーム」では、起業する女性をゼロからサポートをしています。起業相談は年間200件ほど、相談者は30代から40代が中心で、横浜市外の利用者も受け付けています。
 
起業仲間のネットワークづくりやセミナーや講座など、実施プログラムは多岐に渡ります。

セミナーや講座は起業関心層、起業準備者層などターゲットを分けて展開しています。支援プログラムの軸になっているのは、本格的に起業を目指す方向けの「女性起業家たまご塾」です。ビジネスプランの作成や資金計画の考え方、ホームページの作り方などを、前期と後期に分けて、全10回にわたり専門家講師がレクチャーしています。「女性起業家たまご塾」は、40代から50代を中心に幅広い年代の方が受講していて、通常募集人数の2倍ほど応募があります。課題も多く、ボリュームたっぷりの講座ですが、みなさん前向きに取り組んでいます。

―「女性起業家たまご塾」にはどのような方が参加されていますか?

以前は結婚や出産といったライフイベントをきっかけに起業する方が目立ちましたが、今は自己実現・キャリア実現を目標に、「人生の棚卸」をする中で起業に踏み出す方が多い印象です。コンサルティングやカウンセリング業が最も多く、小物制作販売を志す方もいます。

講座修了生にはフォローアップセミナーを開催し、その後の活動の後押しや情報交換の場を提供しています。修了生が、起業に継続的に取り組んでいくためには、講座終了後のネットワークづくりや相談などのサポートも重要だと考えています。先輩起業家の活動をHPで紹介したり、修了者調査を5年に1回実施しています。孤軍奮闘になりがちな起業だからこそ、起業仲間とのつながりをサポートできればと思っています。

女性起業UPルーム内 卒業生からのお知らせ

男女共同参画センターならではの包括的な支援

男女共同参画センター内だからこその、手厚いサポートも特徴的です。

セミナー受講、専門家相談中に利用できる託児サービスや、フィットネスルーム、多目的スタジオなどの各種設備の他、シングルマザー等経済的な困難を抱えた女性対象の受講料の減免制度もあります。女性の働き方の選択肢の1つとして、起業を推進する姿勢が垣間見えました。

託児サービスを利用できる、こどものへや

起業推進都市・横浜の「女性起業UPルーム」

―横浜市は自治体を上げて起業を推進しています。市内の他施設では、スタートアップや学生起業への支援も実施している中で、「女性起業UPルーム」はどのような特徴がありますか?

常光氏 起業を志す女性にとって敷居の低い支援窓口であること、女性起業の裾野を広げることにフォーカスしています。他機関を利用する起業関心者は若い人や男性が多い傾向がありますが「女性起業UPルーム」は、例えば子育て期の女性も気後れせず、自分のキャリアや状況に応じて気軽に相談できることが特長です。

 他機関との連携も重視しており、市内の百貨店バイヤーなどから注目される「横浜女性起業家COLLECTION(横浜市経済局主催の女性起業家の商品展示会)」に出店するたまご塾修了生もいます。

おまけ 階段にジェンダード・イノベーション!

 センター内の階段を昇っていると、「この階段、なんだか昇りやすい!」と思わぬ発見がありました。常光さんにお伺いしたところ、女性利用者が多いことから、女性が昇り降りしやすい設計になっているとのことでした。
 
計測すると、階段の段差は12cm(一般的な公共施設の場合、段差は15cmほど)。思いがけず、ジェンダード・イノベーションの好事例に触れることができました。

女性の視点を活かした設計の階段

横浜市は人口の流出入が多く、転勤族の配偶者の相談も多いそう。ライフイベントが女性の起業・キャリアの転換のきっかけとなることも多いので、ワークとライフの両面からのサポートが、起業へのハードルを下げることに繋がると感じました。
 
また、常光さんのお話の中で登場した「人生の棚卸」という言葉も印象的でした。人生経験を積む中で得るスキルや考えを表現する場、と考えると起業がより身近なものに思えてきました。

今後も&ジェンダード・イノベーションでは、さまざまな起業支援施設の紹介や、支援者の声をお届けしていきます。


≪施設概要≫
男女共同参画センター横浜 女性起業UPルーム
公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が運営する、女性起業家支援事業。
起業準備中の方向けの講座・女性起業家たまご塾(有料)、専門家への女性起業準備相談(有料)などを実施。有料託児サービスあり。

〈開館時間〉
平日: 9:00~21:00
土日・祝日: 9:00~17:00
〈アクセス〉
JR・市営地下鉄「戸塚駅」6番出口より徒歩5分
〈施設HP〉
公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会 (city.yokohama.jp)
女性起業UPルーム|起業相談・起業セミナー 横浜・東京 (uproom.info)


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