銀沖小説「樹海の中心で愛を叫ぶ」

※ご注意ください

●銀魂の坂田銀時、沖田総悟のカップリング小説です●BL展開ですので苦手な方は回避お願いいたします●銀魂©空知英秋の二次創作で妄想です


好きだと自覚してから2回目のヤツの誕生日が過ぎた。
今年も何もできずに過ぎちまった。

ということは、1年以上片思い続けているということか。
このオッサンが、あの未成年のお巡りさんに。


ヤツはまず顔がいい。好みである以上に惹かれるものがある。
あのとんでもねぇ性格も、俺が殺られるかもしれねぇ剣の腕も、美しくて潔いまでの侍の魂も、惚れた理由を上げたらキリがない。

また俺になついてるときたら可愛いと思うし期待しちまうわな、男なのに。
初めてだよを男好きになったの。
女は全て平等に穴として口説いてた俺が。
それどころか、性別関係なしで気にいった相手にこんな風になにも言えず悶々としてるの、銀さん初めて。


どうしたもんかと思い悩みつつも答えは出ていた。この気持ちを伝えることはない。
俺に好かれていたと知っても沖田くんは迷惑なだけだろう。
ただの気の合うドSコンビの相手としか思っていないだろうから。
だから恋人になりたい欲も、独占したい欲も、触れたい欲も、自分の中に押し込めてきた。
分厚い壁を心のなかに作って外に出さないようにしてきた。

なのに、アイツ自身がそこに風穴開けてきた。

「この店くずまんじゅう年間通して売ってくんねーですかねぇ、最高でさァ」
沖田くんが嬉しそうに頬張るのを、見つからねえようにちらちら横顔盗み見る。

「まあ、夏しか食べられねえってところもいいんだろうがな」
巡回中にこうして偶然(いや、俺が居そうなところ狙って歩いてっから偶然とは言い切れない)会って、だらだら一緒に居られるのは幸せだ。
甘味もあるなんて日にゃ至福だ。

「ちょっと旦那みたいじゃないですかィ、透き通ってキラキラしてるところ旦那の髪みてェ。それ食ってるとなんかS心まで満たされるんですよねェ」
嬉しそうに笑ってら。
そんな顔見て、俺はつい調子に乗った。

「お前、俺のことそんな好きなの?」
弄るつもりで聞く。

「俺はずっと旦那のこと好きでさ」

「え?」驚いてすぐに沖田くんを見る。
本気か、なあ本気か?

「あっ」沖田くんがもらす。
思わず言っちゃった?どうなの?

「ん?」答えを求めてのぞき込む。
動悸がおさまらない。

「やっ」沖田くんが口に出す。
それは嫌ってこと?好きを否定してんの?

いつもなら軽口ポンポン飛び出す癖に、こんな時だけ会話に詰まるなよ。
期待するだろ。

「う…」沖田くんが唸りながら少しうつむいた。

その顔は頬をほんのり赤らめて、可愛いったらありゃしない!
これ、俺が猫になった時と同じ。
真選組ソーセージで、猫化した俺らとゴリラを釣ろうとしてた時のあのカワイイ顔と一緒!
滅多に見れねーよ、レアだよこりゃ!!

俺も言葉に詰まっちまった。
1年以上想っていた相手が自分のこと好きなのかもしれないと分かったら、こうなるだろうが。
手に入れられるかもしんねぇんだ。
慎重にもなるし、戦場で闘う時より緊張もする。


よし、俺も伝えなければ。ずっと好きだと思っていたことを。


…いや、まて坂田銀時。
こんなに都合の良い事があるかっ。
猫化した時だって結局俺らソーセージもらえなかったんだぞ!
そして相手は土方騙すためにモノローグまで偽装して三日三晩飲まず食わずで過ごすようなヤツだ。
浮かれるな、冷静に行け、まずは確かめろ。


「…沖田くん、俺のこと陥れようとしてねぇ?」

ガキンッ!

沖田くんがいきなり斬りかかってきた!間一髪洞爺湖で受け止める。
プルプルと震えるお互いの手。

「あっぶねぇ!銀さんの首持ってかれちゃうところだったよ!!なにすんだお前!」

至近距離で目が合った沖田くんは、悲しげな顔をしていた。
さっきまで赤くなっていた顔も耳もその色はなくなり、青白くさえ見える。
そして、瞳に薄っすらと涙がたまっているのが見えちまった。
あ、ホントに俺のこと…

「死ね!」
沖田くんはそれだけ言って逃げ去っていった。
全速力で、俺が呼んでも振り向きもせずに走っていった。

茫然自失。
俺はそれから1時間はその場から動けなかった。
あの反応、俺は都合よく解釈してもいいのか。
沖田くんは俺のことが好きだった、せっかくそれを伝えたのに俺に疑われてショックを受けた。
そうとしか思えねえ。
しかも俺は返事してねぇ。
どれだけ嬉しかったか、俺もだって、恋人になるかってすぐに伝えれば良かったのに、何やってんだよ。

例え、沖田くんの「ずっと旦那のこと好きでさ」発言が俺の期待するものでなかったとしても、まずは疑ったことを謝ろう。
そして、俺はずっと沖田くんが好きだったことを伝えよう。
「よしっ!」
声を出して気合を入れて立ち上がり、屯所の方向に向かう。

沖田くんとまんじゅう食べ始めたのは午前だったのに、もう昼になろうとしていた。

「おお!どうした万事屋!こんなところで!」
屯所前で偶然近藤に会った。
ちっ、ゴリラ。話しかけんじゃねーよ。
でも沖田くん呼び出すには使えるか。詮索されると面倒くせーが。

「お前こそなんだよ、俺は沖田くんに会いに来たんだよ。いる?」

「俺も今、志村道場の屋根裏警備から帰ったばかりでな。今日もお妙さんのパンチも蹴りも重かったから安心だ。」
そんなこと聞いてねーよ!

「総悟が大変だってんで急いで戻ってきたんだが、万事屋もそのことでトシに呼ばれたのか?」
俺がマヨラーに呼ばれるわけねーだろ。呼ばれても来んわ!
…って沖田くんが大変だってどういうことだ。

「部屋に遺書みたいな書置きして居なくなったとか。まあ、いつものイタズラの可能性もあるがな」
いつもそんな遊びしてんですか。
遊びの時こそ本気を忘れない、さすがの沖田総悟。でも…

「近藤さん。俺1時間ほど前に沖田くんに会ってたんだよ。その時アイツを傷つけるような事言っちまってな。謝んなきゃなんねぇ」

「それなら万事屋、一緒に中に入れ。トシは総悟がいなくなったのは1時間ほど前だと言ってる。事情を聞かせてくれ」

「ああ」
近藤について中に入る。
俺は沖田くんが心配だった。
屯所に入るなんて、近藤と土方に事情を説明するなんて面倒なことになると分かっていても、そうする以外の選択肢が浮かばなかった。

「あんでテメエがここに居んだよ!あぁん!!!」
元ヤン、さっそく突っかかってくるんじゃねーよ。本題に入れ。

「トシ落ち着いて!万事屋は総悟がいなくなる前に会ってたらしい。事情を聞けたらなにか手がかりが掴めるかもしれんからな」
近藤、お前は理解あるな。俺と沖田くんが付き合うことになったらまずコイツから説得しよう。


「まあいい。近藤さん、総悟が残した書置きってのがこれだ」


探さないでください、さようなら


…オイオイ、これやばいんじゃねーの!


「いつものお遊びって可能性はないのか?」
近藤が問いかけると、土方はいつにも増して眉間にしわを寄せて答える。
真剣な表情だ。

「総悟が出ていく前、青白い顔して目に涙浮かべて取り乱した様子で屯所に帰ってきたのを数人の隊士が見てる。もしこれがイタズラなら事前にそこまでするか?プライドの高いアイツが、隊士に涙見せると思うか?」
俺だよ、完全にその原因銀さんだよ!

黙る近藤に土方が続ける。
「実はな、近藤さん。総悟の携帯に付けてるGPS、樹海の方面に向かってる。あそこは自殺の名所だ。これは俺たちを驚かすためだけの行動か?」


俺たち三人言葉を無くした。


「なあ万事屋、お前総悟を傷つけるようなこと言ったって何をしたんだ?その時の様子教えてくれねぇか」
近藤が不安そうに俺を見る。

「テメエか!原因は!!!事によっちゃ、ただじゃすまねぇぞ白髪ニート」
土方は俺の胸倉をつかむ。

「あんなぁ。いつもは言わねえような素直なこと言うから。俺のこと陥れようとしてねぇ?って沖田くんを疑ったんだよ。そしたらアイツ俺に斬りかかってきてな、涙浮かべて」
俺のバカ!なんつーことを言っちまったんだ。
改めて落ち込む、後悔する。

「…思い出してきた。沖田くん逃げ帰る前、死ねとか死ぬとか叫んでたような…」
俺はあんとき、沖田くんに本当に好かれているのかもしれねえと浮かれていて頭がボンヤリしていた。
ハッキリなんて言ってたか思い出せねぇが、そんなこと言ってた!

「おい、こりゃあ…。万に一つも本気だったらマズイ。とにかく樹海へ俺たちも向かおう!」
近藤が俺と土方を見る。

「なんでコイツと!!!」土方は鬼の形相で睨んでくる。そんな場合じゃねーだろ!

「トシ!こんなことしてる場合じゃない。GPSは樹海の真ん中で止まってる、車から降りたんだ。これはいかん。とにかくすぐに行くぞ!」

俺たち3人はパトカーぶっ飛ばして樹海へ向かう。
その間中、近藤が沖田くんの携帯に電話をかけ続けていたが一向に出ない。
土方は汗流して運転している。
俺は沖田くんの無事を祈って、ただギリギリと奥歯を噛みしめていた。

樹海についたころ、GPS信号は消えてしまった。
電源が無くなったのか、沖田くんの身に何か起こったのか。

嫌な予感を頭ブンブン振って消し去って。ここに来るまでGPSが示していた樹海の中心部で俺たちは歩いて沖田くんを探す。


「総悟ぉぉぉどこにいるんだぁ返事してくれぇ」涙声の近藤

「出てこい総悟テメエ!遊んでんじゃねー!」怒りを隠さない土方

「沖田くーん!どこだぁー!」俺は無事を祈って名前を呼ぶしかできなかった。

モゴモゴッ、ガサガサッ

岩陰から音が聞こえた。何か口ごもるような音と枯れ葉が動く音。
「沖田くん!」

「くるんじゃねー!」
沖田くんの声!良かった生きてた。本当に良かった。

様子に気付いた近藤と土方が駆け寄ってきた。
俺は沖田くんを刺激させないために、一定距離で二人を制する。

「総悟何やってんだ、仕事サボるんじゃねーよ。早く戻るぞ」
土方の声が優しい。コイツも心配してたんだな。そして沖田くん甘やかしすぎだろ。

「な、総悟かえろ。まだ昼過ぎだから、夕方にたったらこんな所大変だから、今のうちに帰ろ」
近藤も激甘!お前らがあの傍若無人さを助長してんだよ!!!

沖田くんは何も答えない、そして岩陰に隠れたままでこちらに姿を見せてくれない。
どんな顔してんのか、どんな思いなのか、読み取れない。

「沖田くん、そのままで良いから聞いてくれ」
俺は言うべきことを伝えることにした。
例え近藤土方に聞かれても、この場で振られても、関係ねぇ!
沖田くんに生きていて欲しかった。


「疑って悪かった。陥れようとしてねぇかなんて言って悪かった。本当にすまねぇ」

「俺はな、ずっとお前のことが好きだったんだよ。もう1年以上前からだ」

「お前に好きだって言われてな、舞い上がっちまった。まさかそんな風に思ってくれていたなんてな、ちいっとも考えてなかったからな」
突然の告白に誰も何も言わない。

「だから、夢じゃねーかと思ってな。疑っちまった。大好きなヤツの言葉を疑うなんて、ホント馬鹿だよ俺ぁ」
切なくなって、悲しくなってきた。
周りがボンヤリとして見える、あれ、俺も目に水が溜まってきてるな。


「ブハア!!!やっと逃げられた!ほら沖田さん。やっぱり旦那、沖田さんの事好きだったじゃないですか!!!俺の勘当たってましたよね!!!!!」
岩陰からジミーな奴が飛び出してきた。
猿ぐつわ取って息を大きくついている。
あれ?あいつ誰だっけ、ボンヤリして誰だか分かんない。たぶんボンヤリしてなくても分かんないけど。

「何やってんだ山崎!」
土方が叫ぶが、すかさず沖田くんの声がした。


「旦那こそ、俺のこと陥れようとしてんでしょ。旦那が俺のこと好きになってくれるわけねェ」
いつもと違って声が震えているように聞こえる。

「何言ってんだバカ!俺がどれだけ言わずに耐えてきたと思ってんだ」

「俺だって耐えてきた!旦那にこんなこと言ったら気持ち悪がられるかもしれねぇ、もう茶飲み友達にも戻れねぇ可能性だってある、そう思ったら怖くて言えなかったんでさ。俺の事、旦那は気の合うドSとしか見てねぇ」

「信じてくれ。俺がお前を好きなのは本当だ。決まった相手作らない俺が、お前と恋人になりたいって思っちまった。そんなめんどくせぇこと思うんだ、本気で好きだって証拠じゃねーか」

「俺は男ですぜ、旦那」

「そんなの分かってるよ、でも止められなかったんだよ、好きになっちまってたんだよ」

「嘘だ」

「嘘じゃねえ」

「信じられるわけねぇよ旦那」


「嘘じゃねぇ!信じろ!
俺がお前で何回マスかいたと思ってんだァァァァァァ!!!!!」

叫んじまった。樹海の中心で、俺なりの愛を。


「旦那…」
沖田くんが岩陰から出てきてくれた。頬赤らめて、あの時と同じ顔だ。
分かってくれた⁈

俺は手を広げて待つ。沖田くんが俺の胸に飛び込んでくれるであろうことを信じて。
「おいで、沖田くん」

そう言うと沖田くんが笑顔で俺に向かって走ってくる。
ああ!思いが通じた!神様ありがとう!!!ついに何度も妄想したあの身体を俺の腕の中で抱ける…


って、飛び蹴りぃぃぃぃぃッ!!!!!!


地面に頭を思いっきり打ちつける俺。
そんな俺を沖田くんは優しい笑顔で上から覗き込む。


「旦那ぁ、最低なこと叫びやしたねィ。でも旦那らしいや。そんな所も俺ァ好きです」
上から沖田くんが抱きついてきた。
どんな照れ隠し⁈
そんな所ってどんなところが好きなんだよ!全く分かんねーよ!!

まあ、いいか。俺たちの気持ちは成就した。沖田くんも無事だ。
沖田くんの背中に腕を回し、ぐっと抱きしめる。はぁ幸せ。

「お前らふざけんじゃねー!」
俺たち以外の全員も、樹海の中心で叫んだ。

沖田くん樹海失踪事件の顛末はこうだ。


山崎が沖田くんに「旦那は沖田さんに惚れてると思います」と言ったという。
それを聞いた沖田くんはずっと告白できなかった俺に、思い切って気持ちを伝えることを決心してくれたらしい。

きちんと伝えるつもりだったものが、思わずくずまんじゅう食ってた時にバレて混乱したそうだ。
しかも俺が疑うようなことを言ったから、振られた、一生会えねえと思ったんだと。


「山崎、いい加減なこと言いやがって。俺は一生旦那に会えなくなっちまったじゃねぇか!殺す」
屯所に帰った沖田くんは山崎を拘束し樹海に捨ててくることを決めて、遺書らしき書置きを書かせた。
沖田くんの部屋にあった『探さないでください、さようなら』と書かれたものはその見本。
ジミーくんが居なくなったこと、書置きのことは、隊士だれも気付かなかったらしい。どんな存在感⁈


山崎を一人樹海に捨て置き帰ろうとしたところ、俺たちが来たということだった。

「いやぁ大変だったねあの後も。今度は俺が近藤と土方に命狙われながら帰ってきて」
いやホントに。いまだに狙われてっから。
近藤お義父さん、土方お義兄さん、沖田くんを僕に下さいって、ちゃあんと挨拶したのによ。
認められるまで手は出しませんって誓ったのによ。

「下ネタがいけなかったんじゃねーですかィ」
いやいや沖田くん。何をいってもあの保護者二人は認めないと思うけれども。
まあ、下ネタでやっちまったと思ったのは事実だ。

駄菓子屋の裏、小さな腰掛に座って話す。
ここは大通りから死角になっているから追ってくる土方も見つけられない場所だ。
デートもままならねぇなぁ。

チューパット飲みながら頬をほんのり赤らめて俺を見ている沖田くん。
まあいいか、俺たち恋人同士になれたんだもんな。

「グレープ味、うめぇ?」
隙を狙って唇を舐める。
うまい!沖田くんの唇が。

「俺もオレンジ味、欲しい」
あ、初めて沖田くんからちゅーしてくれた。

「混ぜたらもっと美味しいかもな」
人通りから隠れてることを良い事に、キスを深めて舌を絡め合う。
思う存分グレープ味とオレンジ味をミックスして味わった。


悪いなゴリラ、マヨラー。
お互い我慢できそうにねぇわ、これは。


おわり。

宜しければサポートお願いいたします。サド丸くんの創作活動に使わせていただきます。