銀沖小説「こいわずらい」
※ご注意ください
●銀魂の坂田銀時、沖田総悟のカップリング小説です●BL展開ですので苦手な方は回避お願いいたします●銀魂©空知英秋の二次創作で妄想です
「面白ェ。やっぱりあの旦那、面白ェ」
万事屋のエース坂田銀時vs真選組のエース沖田総悟デスマッチ。天下一私闘会。
エクスカリバーで旦那と戦ってから五日が経とうとしていた。
この五日、俺は睡眠不足だ。
夜になるとこうしてあの時を思い出しちまう。
旦那との決闘は俺にとって久々の血沸き肉躍るものだった。
ワクワクした、ドキドキした、本当はもっと剣を交わしたかった。
あの時間が長く続いて欲しかった。
また旦那と交わりてぇ。
そんな風に考えちまって眠れないのだ。
一昨日は土方の死体を数えたら5000体超えた。
昨日は途中で眠るの諦めて土方藁人形で遊んでたら全身杭だらけ。今朝土方コノヤローは「なぜか全身が痛い」と言っていた。ざまあみろ。
こうなってんの俺だけか?今度旦那に会ったら聞いてみたい。
「おう総一郎くん。お前もうマガナギで刺したところ大丈夫なんですかぁ?」
公園のベンチで一人ぼーっしていたら旦那が声をかけてきた。
「総悟です。へぇ、身体はなんともねーですが睡眠不足なんでさァ」
「まだ魔剣に支配されてるとか言わねーだろーなー。めんどくさいのはやだよ銀さん」
旦那は鼻に小指突っ込んで、本当にめんどくさそうな顔した。
なのに隣に座ってくる。話を聞いてくれる気持ちはあるみてぇだ。
「旦那はそんなことねーですかィ。夜になったらあの戦い思い出して興奮して眠れなくなるなんてこたぁ」
「近づいた時のお前の顔は夜になると出てくるけどな。総悟くん」
旦那があの時と同じように、普通に俺を名前で呼ぶ。
ぐっと顔を近づけて言うからドキっとする。
「…俺の場合は、旦那強え、面白れぇ、また剣交えてぇ。旦那はなんであんななんだろーなとか、そんなことばっかり考えちまうんでさ」
特に次いつ旦那と絡めるかと考えるとウズウズして眠れなくなる。
「お前それ、恋煩いじゃねぇの?」
旦那がにやけ顔で俺に向かって言った。
「なんでい、そりゃ!そんな訳ねーでしょうがァ」
「だって銀さんのことばっかり考えて眠れないんでしょ。自分より強い奴と対峙して惚れちまったんだろ」
「惚れるってアンタ…恋ってアンタ…男相手に」
「じゃあお前女相手に恋したことあんの?ゴリラのことは人間的に惚れてねぇの?」
言われてみたら俺は恋どころか姉以外の女を好きだと思ったことが一度もない。
近藤さんは確かに人間的に好きだ、これが惚れてるという感情なのかどうかは分からない。
言葉に詰まった俺に旦那が続ける
「おめぇは経験不足で分かんねーだけだろ。俺はしてっからな恋煩い。だから分かんだよ」
ズキっとした。
旦那が誰かに惚れている。恋をしている。それ聞いて俺はモヤモヤする。
「まあ、あと三週間様子みろや。んで銀さん所に泊まりに来なさい。俺が寝かしつけてやっから。それまではその空っぽの頭で考えてみな」
寝かしつけ日の約束をして旦那は笑顔で去っていく。
俺はその日から約束の日までの三週間、旦那に言われたことを順番に考えてみることにした。
一週目は“恋煩い”について考える。
恋煩いって言葉の意味を知ることからだ。何となくは想像できるが改めて携帯使って検索した。
『恋煩いとは、恋の悩みによって病気にかかったような状態、眠れない夜、感情が不安定になるなど』
なんて書かれていた。
眠れはしねえが本当にこれが“恋”なのか?今度は恋を検索してみる。
『恋とは、特定の相手のことを好きだと感じ、大切に思ったり、一緒にいたいと思う感情』
ウィキペディアは何でも答えてくれんな。
試しに“俺が睡眠不足なのはなんで?”と入力してみたが“新規作成しましょう”と出た。
さすがにこの答えはなかったようだ。
特定の相手…旦那が好き?大切に思う?のかは分からねえ。
でも、一緒に居たいと思うのは前からだ。同じ時間過ごすのがすこぶる楽しい。
エクスカリバーで手合わせして、でたらめな型して強いのも改めて凄げぇと思った。
イカれた旦那の戦い方も好きだ。剣でてめーの身を護るどころか、てめーの剣を護るための鞘になっちまう。
大っぴらには出さねぇがクサナギだけじゃなく俺を傷つけずに戦ってくれた優しさも大好きだ。
…なんだ。好きばっからりじゃねえかコレ。
自分でもおおよそ信じられなくて、この一週間は攘夷浪士かたっぱしから見つけてひたすら剣を振るう。
ちょっと旦那の型真似してみたりして。
相手はすぐやられちまうから真似もちゃんとできずにフラストレーションが溜まる。
やっぱり旦那がいい。旦那と剣交えたい。旦那に会いたい。
そんなこと考えてもまだ約束の日まで何日もあるから、また攘夷浪士見つけて剣を振るう。
検挙率がえらく上がったと近藤さんに褒められただけの一週間だった。
二週目は“旦那が好き”について考える。
『心惹かれそれに接することにより快を感ずることを好きという』
好きとはどういうことかと検索すると、またウィキペディアが答えてくれた。
言葉の意味は理解できても、俺が旦那が好きなのか確証がねえ。
誰かに聞いてみるかと思案しながら団子食ってたら悩みの元がへらへら笑ってやってきた。
「おぅ!良い所にいんじゃねーか。俺もひと皿貰っていい?」
「いや旦那。アンタ俺が居そうな時狙ってきてんでしょ。奢り目当てで」
「お前が目当てで来てんだよ。団子はついでな」
耳が赤くなる、身体が熱くなる、なんだコレ。
「なっ…なんですかィ俺目当てって。恥ずかしいこと言わねぇでくだせえ」
くそ。旦那が半笑いで覗き込んで来やがる。
顔が赤いのもドキドキしてるのもバレたくねぇ!
「まあ、いーけど。あと十日したら万事屋に泊まりに来てくれんだもんな」
寝かしつけてくれる日まであと十日か。
「めんどくせえから今教えてくだせェ。どうやったら不眠症治るんですかィ?」
相変わらず俺は旦那の事ばかり考えて夜ろくに眠れない。
それどころか、サボって昼寝する時も旦那の顔が思い浮かぶ。アイマスク付けたまま眠れない時間を過ごしてばかりいた。
「お前がどっちの意味で俺の事好きなのか試さねぇと答えてやれねぇよ。だから今ここじゃなくて十日後な」
旦那が今まで見たこと無い顔をして俺に言ってきた。
近藤さんや土方にもこんな眼で見られたことねぇ。
優しいような、鋭いような、何かを欲しがってるような、惹きつけられる眼。
「…旦那は答え知ってるんですかィ?」
「どっちの意味かは触れ合ってみたら分かる。あとは恋煩いならそれを治す方法を知ってる」
ウィキペディアに書いてあった『接することにより快を感ずる』って触れ合って気持ちいいかどうか、そういうことか?
そーいやぁ旦那も誰かに恋煩いしてんだっけか。
「旦那はもう治ったんで?」
「今その途中だな。治るかどうかはお前次第」
どういう意味だ。なんで俺に関係あるんでぃ。
話してても埒が明かねぇ。めんどくさくなってきた。
「はぁ。なんか食欲もそんなねぇんですよね。俺の注文した団子食ってくだせェ」
ほとんど食えなかった。皿ごと旦那に差しだす。
「お!遠慮なく頂くわ!お代はお前持ちだろ?」
なーんか嬉しそうに、俺の食いかけの団子食ってるところ見てたら腹が立ってきた。
俺がこんなに悩んでるのに、楽しそうにしやがって!
「はい旦那。恐喝の現行犯で逮捕でさァ。俺に団子代金をせびった罪」
ガチャッと手錠をかける。
これで白夜叉とっ捕まえたから、今週も近藤さんに褒められる。
「オイお前!ふざけんな!善良な一般市民に!」
「仕事も無くて税金もちゃんと払ってない市民は善良でもなんでもありやせん。団子の金払えねぇなら留置所に行きやすぜ」
「…あの、総一郎くん。銀さんほんとに今すっからかんなの。パチンコの帰りでね。許してくんない?」
旦那が今更甘えてきたが俺のイライラは収まらないのでそのまま屯所に連れ帰る。
屯所で近藤さんから「総悟はえらいよ、えらいけど、さすがにこれは越権行為で不当逮捕だよ」と泣きつかれたので仕方なく旦那を解放した。
三週目は“触れ合う”について考える。
近藤さんは明らかにメガネの姉御に惚れている。好きだという気持ちも分かるだろう。
旦那より年が上だから近藤さんに色々教えてもらう方がいいんじゃねぇか、と俺は考えた。
昼飯に誘って聞いてみる。
「近藤さんは恋煩いしたことありやすか?」
どんどん口に寿司が放り込まれて行く。近藤さんの食いっぷりはいつ見ても気持ちが良い。俺の方はまだ何となく自分の気持ちが分からねぇせいで沢山食べる気になれない。
「おっ!なんだ総悟、珍しくメシに誘ってくれたと思ったら恋愛相談か。総悟もそんなお年頃かぁ、感慨深いなぁ」
近藤さんの笑顔はいつも温かい。
触れ合いたいとは思わねぇが、こうして時間を共有できるのは幸せだ。
「俺のことはいいんで。近藤さんはどうなんです?姉御に惚れてるってなんで気付いたんですかィ?」
近藤さんは照れることもなくハキハキと言い切った。
「お妙さんに“ケツ毛ごと愛します”って言われたときにドキ―ッとしてな。この人が運命の人だと思っちまった。なんてぇかな、そんなお妙さんの心意気や生き方に惚れたな」
俺も旦那の生き様が好きだ。侍の魂も、誰でも護っちまう優しさも。
やっぱり俺は旦那のことが好きなんだろうか。
「近藤さんは姉御と触れ合いてぇですかィ?」
「そりゃあもう!アレもコレもしたい、ってそれだけじゃないけどね!人間的に惚れただけなら触れ合いたい気持ちよりも時間を共に過ごしたい気持ちの方が大きいだろうがな。恋するとダメだな。触れ合いたい欲求はどうしても出るな」
「触れ合ったら気持ちいいんですかねィ?」
「当然だ。恋した相手と手を繋ぐだけでも天にも昇る気持ちになれるぞ、総悟!」
近藤さん。なんか文字上は良い事言ってますけど、鼻血出てやす。
頭ん中は、もっとすごい事想像してますよね。
「試してみねぇと分かんねえな」
旦那の言う通り、俺の睡眠不足が恋煩いなのか、旦那に抱いている気持ちが恋なのか、俺は旦那の事が好きなのか。
全部、触れ合ってからじゃないと答えが出ない気がした。
「総悟。試すのもいいが、ちゃんとした触れ合いは恋人になってからしろよ。自分が相手のことを好きだと分かったら、俺の恋人になって下さいときっちり宣言するんだ。触れ合いはその恋が実ってからな」
話さなくても近藤さんに色々バレてんな。すげえや。
それにちゃんとしてんな近藤さんは。爛れた旦那とは大違いだ。
「へい、分かりやした。ありがとうごぜーやす」
近藤さんはガシガシ俺の頭を撫でてくれる。子供の時からこうされるのが大好きだ。
嬉しくてたまらねえ。でも“気持ちいい”とはちょっと違う。
好きな相手と、惚れた相手と『接することにより快を感ずる』ってどんな気持ちになるんだろうな。
約束の日がやってきた。
三週間考えたが明確な答えは出ていない。
眠れねぇのは相変わらずで、考えてた分だけ酷くなっているような気がする。
「旦那ぁ、早く教えて下せえ」
万事屋の扉を開けるなり言うと、がたっドタドタドタと音がした。
「沖田くん待ってたよ銀さん。遅かったじゃねぇか、気が変わったかと思って心配してたんだかんな」
旦那が慌てた様子で玄関までやってきて、俺の手をひっつかんで中に連れていった。
掴まれた場所が熱くなる。やめてくだせぇよ旦那。
「風呂入って寝間着用意してたらこの時間になっちまったんでさァ。まだ日付変わってねぇから約束通りでしょ?」
いろいろしてたのは事実だが、答えを知るのが少し怖い気もして遅くなったのもある。
もう0時近いのに旦那は起きて待っててくれたみたいだ。
「チャイナもメガネも、でけぇ犬も居ねーんですねィ」
「当たりめぇだろ。お前と寝るのになんで他の奴が必要なんだよ」
必要ってこともねーが、わざわざ二人きりになる意味が分からなかった。
「なんでもいいから寝かしつけてくだせェ、約束でしょ」
そそくさと持ってきた寝間着の浴衣に着替える。
ガッと勢いよく和室を開けると布団が一組しか敷いてない。
「旦那ぁ、何やってんでさ。布団が一組足りませんや。こんなに遅くなったのに準備も出来てねえなんてままならないお人でさァ」
俺は勝手に押し入れの扉を開いて布団を引っ張り出す。
「お前あれだよ、銀さんちゃんと大切なものは準備してるからね、薬局で。安心しなさい」
何の話だ。
「睡眠薬ですかィ?安易な手ですね旦那、それじゃあ問題解決しやせんぜ」
言いながら準備し終えたので布団に入り込んだ。
「睡眠薬なんて用意してねーわ!初めてなのに、無理矢理はナシでしょ。同意のもとに甘い夜にしてあげたいだろうが大人としては」
「だからさっきから何の話をしてんです?さっさと寝やすぜ」
はぁーっ。旦那が大きくため息をついて項垂れた。
様子を見ていると「わかってねーんだな」とかなんとかブツブツ言いながら寝間着に着替えていた。
旦那が自分の布団に入ったところで寝たまま声をかける。
「さあ、寝かしつけてもらいやしょうかねィ。どんな技使うんです?」
俺はちょっと楽しみだった。剣交えた時のような発見や興奮があるかもしれないとワクワクする。
「お前さ、それより恋煩いの答え出たの?」
旦那が布団に寝っ転がったまま、俺の方を向いて聞く。
頭を手で支えているせいか、ちょっと困ったような顔に見えた。
「完全には出てねぇんでさ。恋ってのは好いた相手と触れ合いたくなる、触れられたら天にも昇る気持ちになる、そんなことくらいしか分かりやせんでした」
俺の言葉を聞いた旦那が少し笑った。
「お前らしくていいかもしんねーな。ほら。寝かしつけてやるから、こっちこい」
旦那が俺の布団を引っ張る。
二人の布団がぴったりくっついて、手を引かれるままに俺は旦那に寄り添って寝そべる。
結局は狭い一組の布団に二人して入ることになった。
「旦那、なんかドキドキしやす」
少し甘いような匂いがして、旦那の体臭だと分かったら心臓がせわしく動いた。
「俺もドキドキしてる」
「旦那も?なんで?」
「好いた相手と初めて触れ合えるんだから、ドキドキするだろ」
そういうもんなの?
…へ?そりゃ、もしかして…
「旦那って俺に惚れてんの?」
二週間前と同じ顔して旦那は笑う。
優しいような、鋭いような、何かを欲しがってるような、惹きつけられる眼で。
「そうだよ。俺の恋煩いの相手は沖田くんだ」
考えてもみなかった。
俺が旦那を好きになるんなら分かる。
旦那は強い、言われた通り俺の剣に太刀打ちできる奴はそうそう会ったことがねぇ。旦那は別格だ。
生き方も好きだ、ドSとして趣味も合う。会話も弾む。
とにかく旦那と一緒にいる時間は嬉しくて楽しくて早く過ぎちまう。
でも、旦那が俺を好きになる要素が見当たらない。
「信じらんねぇや。旦那が俺なんか好きになるなんて」
「お前は強いけどな、脆いんだよ。ゴリラや真選組を護るためなら自分の命も顧みねぇところとかな。ドSもカワイイじゃねぇか、強がってるところなんて特に。顔も好みだよ、けどな、中身に惚れちまった。どっか俺に似てるような気がしてよ。だから俺なんか、なんて言うなよ」
旦那が俺の頭を優しく撫でてくれた。
近藤さんのガシガシとは全然違うのに、心が温かくなる。体がフワフワ浮いてくるように心地いい。
もっと、ずっと、して欲しい。
「お前はどうなんだ」
「俺ァ…たぶん旦那が好きだと思うんですが、確信が持てねぇ」
正直に言った。
「もう少し触れ合ってみっか。嫌ならすぐ離れろ。俺が好きなら頭で色々考えるより身体が反応するから」
ここに頭を乗せろと旦那が言うので、その通りにする。
所謂うで枕ってやつだ。
腰に手を回されて引き寄せられた。
身体の大部分が密着する。
顔に旦那の息がかかる。
それと…
「旦那、反応してやす。固いモンが股間に当たってまさ」
「お前だってちょっと反応してんだろーが」
確かに俺も、旦那ほどではないが反応していた。
嫌じゃなかった。
多分他の奴にこんなことされたら斬ってたと思う。
ここまでくっつく前に伸してるだろうが。
俺は旦那のことが好きなんだ。
旦那の事ばかり考えて眠れなかったのは恋煩いだったのか。
やっと納得した。
「旦那、寝る前に聞かせて下せェ。恋煩い治す方法、知ってんでしょ」
「恋が実ったら治せる。俺とお前が惚れ合ってるって判ったら、お互いに恋煩いから解放される」
ああ、近藤さんが言ってた。ちゃんと恋が実ってから触れ合えって。
でもちょっとなら許されるかな。
「手繋いでもいいですかィ」
「もちろん」
旦那に腕枕されて、身体をくっつけて、手を繋いでもらって。
心も体も温かくフワフワしている。幸せってこういうもんか。
旦那んちのせんべい布団に寝ているはずなのに、ふっかふかの羽毛布団に寝ているような気分になる。
この感じが近藤さんの言ってた『天にも昇る気持ち』なんだろう。
これが恋か。俺の初恋は銀髪天パに持ってかれた。
答えが分かって猛烈に眠くなる。そりゃそうだ、ずっとほとんど寝てなかった。
「おやすみなせぇ旦那」
それだけ言って眠りの闇に落ちていく。
旦那が何言っても遠くの雑音程度にしか認識できなかった。
「え!?ちょっと沖田くん、この状態で寝ちゃうの?銀さん生殺しですけど!!」
気がついたら朝になっていた。
「んぁーっ、よく寝た!おはようごぜーやす旦那!!」
昨日は久々にぐっすり眠れた。目覚めもいい。差し込んでくる朝の光が心を一層晴れやかにする。
俺を抱えたままの旦那の頬っぺたベチベチ叩いて起こす。
「んだよ。おはようのちゅーで起こせよ」
酷い顔した旦那が半目を開けた。
誰かに殴られたみてぇに目の下が黒ずんでる。
「旦那、くま」
「そりゃな。お前の生殺しのせいで一睡も出来なかったからね!」
いい気味だ。俺も旦那の事考えて眠れなかった日があったんだからおあいこだ。
うるさい旦那を引っぺがす。
なんか言ってるが放っておいて顔洗って歯磨きして帰り支度を整える。
「じゃ、旦那。またお願いしまさ」
そう言って玄関から出ようとすると、後ろから声をかけられる。
「またお願いしまさってなんだよ。お前俺の事好きだってわかったんじゃねーの?俺たち想いが通じ合ったんじゃねーの?それでその態度?」
後ろ頭掻きながら俺の初恋相手が言う。
「俺だって三週間生殺しにされやした。旦那も同じだけ考えて下せぇ」
旦那が口をあんぐり開けて固まった。
丁度良いのでそのまま万事屋を出る。
三週間後が楽しみだ。その時は俺から旦那に言おう
「俺の恋人になって下せぇ」
そのあとちゃんと触れ合いましょうね、旦那。
おわり。
宜しければサポートお願いいたします。サド丸くんの創作活動に使わせていただきます。