銀沖小説[添い遂げる相手]

●銀魂の坂田銀時、沖田総悟のカップリング小説です●BL展開ですので苦手な方は回避お願いいたします●銀魂©空知英秋の二次創作で妄想です

銀時視点―運命の人―

思えば、アイツが変な事言い出したのはあの時からだ。
1ヶ月ほど前、いつものように居酒屋でダラダラ二人で呑んでた時だ。


「旦那、添い遂げる相手居ねーんですかィ」
急にそんな話振られてびっくりした。
コイツも大人になったということか。
初めて会ったときから、4年以上経ってるよな、確か。
真選組が江戸から離れてた期間が2年、俺が万事屋解散して松陽救いたくて旅してた期間が2年近く。
おいおい、そう考えたら4年以上余裕で経ってんな。
道理で艶っぽいハズだよ!…じゃねーよ。男に艶っぽいってなんだよ。


「地球も平和になって、アンタが一番救いたかった師匠も救えて。そんで万事屋再開して。そろそろ旦那自身が幸せになってもいーんじゃねーかと思いやしてねィ」

「珍しいこと言うねー」

「旦那、結構な女に好かれてますよね?ドS女はまあ分かりやすいですが、百華の頭領や、ザキの好きなカラクリ。ああ、泥水一家のお花畑娘なんてのも居たな。旦那に助けられた奴らみんな旦那に惚れただろって気がしてやした。もしかしたらメガネの姉御も旦那のこと好いてんじゃねーかと思ったことあったぐらいでさァ」
あれ、お前そんな風に俺のこと見てたの?

「モテモテで妬いちゃった?」

「そんな訳ねーでしょ。あれだけの女達ほっといていつまで独り身でいるのか心配になりやした」

「お前こそ、その顔とその腕と高給取りで一人じゃねーか。こうしておっさんと呑むか土方いじるのが関の山だろ」

「アンタのこと聞いてんです。どうなんです?それで」
今日はやけに突っ込んでくんな。どうしても答えさせたいみたいな真剣さがなんとなく伝わってくる。

「わーったよ。正直に言うわ。なんていうかな。誰とも“しっくりこない”んだわ」

「“しっくりくる”運命の人がどこかにいる!みたいなことですかィ?だーんな乙女ぇー、引くわー」

コイツ俺が真剣に答えたら茶化しやがった!ああ、こういう奴だったよお前は。
「勝手に引いてろ、俺がお前に合わせて真剣に答えてやったのに。もうじゃあこの話は終わりな」

「すいやせん旦那。実は俺も同じ感覚ありやして、思わず貶しました」

「なんでそこで貶すの!同じなら共感しろよ!!
…なんだろな。誰かと添い遂げるんだろうとは思ってんのに、色んな女見てもコイツだって確信がねぇ。なんか心の奥に引っ掛かりがあるというか、誰かいるというか」

「そうですかィ、俺も同じ感覚ありまさァ」
沖田くんがため息ついた。珍しいなコイツのため息って。
なんだろな、今日はいつもと違う。儚いような、寂しいような、なんかまた一人で抱えてやがんな。

「お前、悩んでることあるなら言えよ。女の悩みなんて百戦錬磨の俺がすーぐ解決してやっから!」

「ありやせん。旦那に相談するならその辺の草に言いやす。
俺らを救ってくれたアンタに。…旦那に、幸せになって欲しいんですよ、俺ぁ。
運命の人、見つけて添い遂げてくだせェ。
ってことでこの話は終わりにしやしょう!」

なんだよ、自分から話題振っといて。そんな淋しそうな顔して笑って。気になるじゃねーか。
コイツ、誰かに恋してんのか?そんな顔だな。まあいい。話したくなったら話すだろ。
そんな高を括ってた俺だったが、この時なんでシツコク聞かなかったのかと後悔することになる。

沖田視点―忘れ種―

タイムリミットだ。明日の昼にはスクープ報道が出ると聞いた。
俺はあの話が出た時から旦那に使おうと準備していた[忘れ種]を用意して、呑みに誘う。
天人の都合で作られたモンって便利だよな。

忘れ種を食べたやつは、その時から翌日までの記憶を完全に失う。
酒で記憶をなくす時があるが断片的なものは残っていたりもする、けどこれはその完全版らしいつまり全く思い出すことがなくなる。キッカケを与えなければ一生思い出さないらしい。


「すこし遅れたな、わりぃ」
旦那が遅れてやってきた。いつもの居酒屋、いつもの指定席、ここで何度二人で呑んだか。
言葉とは裏腹にちっとも悪びれていない旦那にさっそく仕掛ける。

「旦那!大福でさァー!!!」
いきなり旦那の口に、特注のパッションフルーツ大福(忘れ種入り・あんこ抜き)をぶち込む。
口を押えて無理やり飲み込ませる。よし、準備完了。

「だーっ!!!食っちまった!!!!!
なにすんだお前いきなり!これ俺が一生食べないこと心に誓った大嫌いなパッションフルーツ!!!!!
フルーツのくせに甘くない所が許せねーって言っといただろ!なんの嫌がらせだよ!!!!!」
忘れ種は一緒に摂取した食べ物や飲み物を口にしなければ、この時の記憶は思い出せない。
つまり、旦那が大嫌いなパッションフルーツは一生食べねーから、完全に今夜の記憶を消し去れるってわけだ。

「まあまあ、呑みやしょう旦那」
ごまかして酒を勧める。しぶしぶ飲み始める旦那。良かったバレてねぇ。

「沖田くん。今日は万事屋まで送ってくんね。俺一人なのよ、明日の朝まで」
酒が進むと旦那が甘えてきた。チャイナが宇宙から帰ってきて、さすがにもう一緒に住むのはやめるとかで、旦那が万事屋で一人寝しているのは知っていた。
俺が言おうと思っていたことを旦那から言ってもらえるなんて俺はついてる。
「いいですよ。俺も外泊届出してんですよ。今日は旦那と朝まで呑みたかったんでさ」

忘れ種には普段心の奥底に隠している本音や潜在意識を吐き出させる効果がある。それを聞ける。
そして、その話したことを忘れさせるって訳だ。
悪党の小物を捕まえた時に使ったことがある。悪事やアジトを白状させて、そのことを忘れさせて組織に返す。自白証拠は録音できるし、戻ったところを一網打尽にできるし、便利なもんだ。


「なーんか今日は沖田くんと寝たいなぁー」
万事屋で布団を引いて振り返ると、旦那が俺に抱きついてきた。

俺が伝えたかったことを伝える。記憶がなくなるからこそ言える。
「旦那、このままでいいんで聞いてくだせぇ。俺、旦那に惚れてたみたいです」

記憶がなくなるとはいえ、やっぱり反応が怖かった。だから、ただつらつらと旦那に反応の隙を与えずに話し続ける。

「よくよく考えたら、俺の添い遂げたい人ってーのは旦那でした」
旦那は何も答えない。

「男同士なんですが、今の時代男同士でも結婚できるでしょ。天人の技術で子供も作れる。それ考えたら俺の“しっくりくる”人、旦那以外に居なかったんでさ」
はー、言えた。もうこれでいいか。

「言えてスッキリしやした。じゃあ、もう眠りやしょ」

「お前、言い逃げか?」
強い声が耳元で聞こえた。旦那、酔ってねーの?

身体を離して旦那と向かい合う。後ろ頭がりがり掻きながら話すのは、この人が言いにくい事を話すときの癖。
「男同士で気持ち悪いとかねーの?」

「すいやせん旦那、気持ち悪い思いさせちまいやした。帰りまさァ」

立ち上がる前に腕を掴まれる。

「違う。男同士で抵抗ないんだったら、俺にも言わせてくれ。
俺だってお前がいいよ。
お前じゃねーと“しっくりこない”んだよ。
そんなこと嫌だと思ってるだろーから、ずっと心に仕舞ってただけだ。
俺だって惚れてるんだよ、お前に」

こんなことになると思わなかった。忘れ種のおかげだ。
でもどの道この恋は叶わない。明日になったらお別れだ。
これで終わりにしたら良かったのに、欲が出た。どうせ忘れるなら一晩の思い出が欲しい。


「じゃあ旦那、ホントに俺たち運命の人同士か、試しやせん?俺旦那の事抱きたい」

「ばっか、おめーが下だろ!どう考えても。俺が突っ込む方、抱く方ね!!」

「いやいやいや、甲斐性ある方が上でしょ旦那!」

ムードもへったくれもない会話しながら、お互い挑み合うようにキスして脱がして身体を求めあった。
だいぶ頑張ったが結局俺が抱かれちまった。

朝早くに身支度してると旦那がボンヤリ目を覚ます。
「おはようごぜーやす、旦那」

「あれ?沖田くん?なんでいんの?」
大丈夫ちゃんと忘れてる。ザキや土方さんで忘れ種の実験しておいて良かった。けど少し寂しい気もした。

「寝てて下せェ。酷い酔い方だったんで俺がここまで連れてきたんでさ。疲れて一緒に寝ちまいやした、すいやせん」

「ぜんっ全覚えてねーわぁー」
ありがとう旦那。俺、旦那に惚れてもらえて、抱かれて、幸せだった。
涙が出そうになるのをこらえて玄関まで急ぐ。


「それじゃ、俺行きます。さよなら旦那」

銀時視点―結婚報道―

「銀さーん!もういい加減起きてくださいよー!」
「新八、こんな昼まで寝てるぐーたら、そのままでもいいアル。昼ご飯は私がもらうネ」

飯!!!食われえうちにと飛び起きて支度する。

やけに布団が乱れてんな。
記憶無くすほど飲んだはずなのに、頭がすっきりしてる。二日酔いにもなってねえ。
あとは…この下半身のスッキリ感、それと全身運動した後のような気だるさと爽快感。
しばらくご無沙汰だったけど、こりゃあれだ。
ヤッたあとの感じだわ。しかも結構張り切った時の。


・・・え?もしかして俺ヤッちゃった?六股篇再びですか?
朝いたの・・・沖田くんですけど。男ですけど。アイツ何にも言ってませんでしたけど。
いやいやナイナイ。
本当に襲ってたらアイツなら斬りかかってくるわ。死んでるわ俺。


・・・ヤッてはないと思う、たぶん。でも昨日アイツに大福むりやり口に放り込まれた後あたりから記憶がねえ。
念のため、万に一つの可能性のため、一応本人に手ぇ出してねえか聞いとくか。


「銀さん!!!大変です、すぐテレビ見てください!!!!!」
なんだよ新八くん、大声出さないでくれる。今銀さん強姦魔になってないか心配してたところなんだから。

『いやー、史上最高の玉の輿じゃないですか?』
『本当ですねえ、宇宙最強のナベック星の王女と一介の地球人が結婚、夢があります。うらやましいです』
『彼はサディスティック星の王子様と呼ばれていたでしょう。今度は本当に宇宙一大きな星の王様になるわけですから』
『容姿は勿論のことですが、イボとは言え2年で江戸を征服するほどの手腕も買われたとか』
『ソーゴ・ドS・オキタⅢ世ですね。それを思えば今回の結婚、かなりしっくりきます』

しっくりくる。その言葉ひっかかる。
なんのこと言ってんのかとテレビをのぞき込めば

【スクープ!ナベック星の王女の結婚相手に真選組一番隊隊長沖田総悟が浮上!
正式発表はまだも本人たちは合意の模様】
と大きなテロップが出ていた。

「銀ちゃん、知ってたアルか?」
「銀さん、知ってました?」
二人同時にしゃべるんじゃねーよ。仲いいなお前ら。

「知らねーよ。スゲーなアイツ」
あくびしながら答えると、いつも以上に従業員二人が俺を睨んでくる。

「銀ちゃん。アイツが人のものになるってことネ。手の届かない所に行っちゃうってことネ。それで本当にいいアルか?」
「銀さん、なんでそんな落ち着いていられるんですか!?早く止めてください!!」
またほぼ同時に話しやがった。うるせーなー。

「何で俺なんだよ。止めたほうがよけりゃ真選組がやるだろ」

「銀ちゃん本当に自覚ないの?」
「銀さん…隠さないでいいですよ。僕たちそんな理解ない人間じゃないです」
はぁ?なんのことだ。

沈黙が俺たちの間に落ちた。

「まあ、あれだ。俺も別の事でちょっと沖田くんに聞きたいことあったから行ってくるわ。そしたら事情も少しは分かるだろ。この話はその後な」

これだけ言って屯所の方面へ向かう。
道すがら遠くに黒ずくめの隊服が小さく見えた。
頭の色も黒いから、ありゃ俺の探してる方じゃねーやと油断してるとその黒い点がドドドとこっちに向かって凄い勢いで大きくなってくる!
なんなの?土方くんその形相恐いんですけど!!!

「ハァ、ハァ、ハァッ、てめえ!何のんびりしてんだ!!!」
何でそんなこと言われなきゃなんねーんだよ、ニコチンコ!

「総悟が万事屋に昨日泊まったのは調べがついてる。テメエ何言った!なんで止めてやらなかったんだ!!!」

「なんだよお前もそのセリフ?俺はなんも知らなかったよ。結婚のことだろ?しかもなんで俺が止めなきゃなんねーんだよ!」

「総悟はてめぇに何も言わずに身を引いたのか?」
身を引いたって言い方なに?

「それよりさ、俺も沖田くんに話あんだけど、今どこ?」
とにかく色んなことを確かめたい。


「今や総悟は地球でも一二を争うVIPだ。政府御用達のホテルに連れていかれて隔離されてるよ。俺たちも会えねえし、連絡も取れねえ」

「婚約者だろ?なんか乱暴だな」

「ナベック星は地球を配下に置こうとしてる宇宙最大の星だ。総悟が結婚しねーなんて言い出したら大変なことになるんだよ。だから報道機関に情報流して、官僚主導で監禁状態を作った。」
アイツがそんなのに大人しく従うタマか?

「一般にゃ知られちゃいねーが、ナベック星と地球はいつ侵略戦争が起こってもおかしくない緊張状態にあった。その和睦の証としての結婚だと俺たちは踏んでる。まあ、王女が地球訪問の際に警護についた総悟を見て一目惚れしたってのは事実らしい。総悟は自分を犠牲にして地球の平和を守ってるつもりなわけだ」
バカなの?アイツ。

「今や平和になって、近藤さんを剣で守ることも少なくなって。最近言ってたんだよ。もう一人幸せになって欲しい人ができたとか何とか。そいつの幸せを護ってるつもりなんだろ」

「誰だよ、そいつ。ったく」

「てめぇだ!バカが!!!」

バカって名前のやつね。そんなやつ江戸にいるんだなー可哀そう・・・
「って、おれぇぇぇ???」

「俺たちの世界を守ってくれた人が幸せになって欲しい、万事屋と真選組がいつも笑いながらバカやってる江戸であって欲しい。そう近藤さんに行って大人しく連れ出されたそうだ」

気付いたら俺は、思わず土方にとびかかり、胸倉掴んで激しく責めていた。
「お前は何してたんだ!なんで大人しく行かせた!!!これまでにこの状況どうにかする手立て無かったのかよ!!!!!」

「っ離せ!!宇宙規模の問題だ、俺たちだって及ばねえ世界だったんだよ!!!」
愕然とする。


「なあ、本音教えてくれよ。
俺は、てめぇが総悟に惚れてると確信してた。違うか?
態度見てりゃわかる。お前たちには仲が良い以上の絆があったよな。お前は総悟を心底可愛がってた。
てめぇがいつも俺に突っかかってたのは、総悟と一緒にいるから嫉妬してたからだろ」

「…弟分取られるのは悔しいが、惚れてるもん同士だ。いつか万事屋と総悟が所帯もてるようなときが来ればいいって近藤さんと話してもいた」


頭が混乱してきた。俺の知らない情報がありすぎだ。
俺は沖田くんに惚れてる?いや、それよりも驚いたのは「惚れてるもん同士」って話だ。
同士って沖田くんも俺に惚れてたということか?


「すまねぇ土方。昨日の夜の記憶が一切ねーんだ。俺一度、万事屋に帰るわ。沖田くんが泊まったことは事実だ。なんか手掛かりがあるかもしれねえ」

「悪かったな。俺も取り乱した。また明日連絡する。とにかく総悟を助けて欲しい。それだけだ」

神楽視点―二人の関係―

銀ちゃんは本当に自分の気持ちに気付いてないんだろうか。
新八と私に遠慮して言わなかっただけじゃないの?

それとも、アイツのことタダの友達としか見てないの?

「おかえりなさい!銀さん。沖田さんに会えました?」

「会えなかったわ。ホテルに軟禁中だそうで土方も連絡が取れない。
新八、ちょっとウチん中探してくんねーか。昨日沖田くんココに泊まったんだよ。
なんかアイツ書置きとか残してねえかな」

「そうだったんですね!探します!!」


社長椅子に座ってぼーっと外を見ている銀ちゃんに声をかけることにした
「アイツ助ける前に、ワタシは銀ちゃんに本当のこと聞きたいネ」

「泊まったってやっぱり銀ちゃんとサドは付き合ってたんじゃないの?」

「すまねーな神楽。俺が今一番混乱しててな。何答えていいか分かんねーんだわ」
辛そうな声してるネ。

「銀ちゃん答えなくていいから聞いて。サドがいつも私に突っかかって来たのは、たぶん銀ちゃんとべったりの私に嫉妬してたからだと思うネ」

「悔しくてずっと認められなかったけど、二人はお似合いだって感じてたアル。
銀ちゃんとサドには仲が良いだけじゃない、なんていうか、お互いの気持ち信じあってるような、絆があったヨ」

「すみません銀さん。何も見つかりませんでした。
実は僕も神楽ちゃんと同じ気持ちでお二人の事見てました」


銀ちゃんがこっちを向いてくれたけど、表情が苦しそうで、私まで切なくなる。
「土方にも似たようなこと言われたよ。俺たちはお前たちが思うような関係は何もなかった。
関係はなかったが、気持ちがどうだったかと聞かれたら…、少し…考えさせてくんねーか」


新八と目で合図して、万事屋を出ることにした。
今は銀ちゃん一人にした方がいい。
その間に、私たちで何かできることないか探った方がいい。

「銀ちゃん、色々言ってゴメン。ただ幸せになってほしいから。
銀ちゃんにはそろそろ他の人の為じゃなくて、自分を幸せにするために時間を使ってほしい。
そのためだったら、私たちがいくらでもどんな事でもしたい。頼ってよ銀ちゃん」

「僕たち成長しました。今まで護ってもらった分、返したいんです。あなたが幸せになるところ見たいんです」

何も答えない銀ちゃんを置いて、新八と外に出る。
史上最高の玉の輿?冗談じゃないネ。
サド王子には年季の入ったドSマダオが最高にお似合いネ!

「すまねぇ新八、神楽。ありがとな。俺が沖田くんをどう思ってたか、まだ答えがでそうにねぇ」

銀時・沖田を除く万事屋と真選組―作戦会議―

「たのもー」
「恐れ入ります!志村新八です!ご相談があって参りました!」
真選組屯所に神楽と新八の声がこだまする。


慌てて出てきた監察方、山崎退。
「チャイナさん、新八くん!沖田さんの事ですよね?とにかく入ってください!!
今、局長と副長中心に対策を話し合ってるところです。一緒に入ってもらえませんか?」


勢いよく参謀室まで進む三人。その部屋を開けると、近藤と土方が青白い顔で向かい合っていた。
「よく来てくれた、チャイナさん、新八くん。…銀時はいないのか」

土方がすかさず言葉を発する。
「アイツは・・・、自分の気持ち分かってねーようだったからな。だいぶ混乱してたよ」

「すみません、近藤さん土方さん。銀さんには少し落ち着いて考えて欲しくて。万事屋に残して僕たち二人だけここに来ました。何かできること、無いですか?」
「まずはどうしてこうなったか聞きたいネ」


土方がナベック星と地球の関係性、平和を守るために沖田が自分を犠牲にしている可能性があることを伝える。


「トッシー。この神楽ちゃんに任せなさい!そよちゃんに頼んで何とかしてもらうアル」

「いや事はそんなに簡単じゃねえ。いくらそよ姫であられても、これは重要外交。
そして今回の件には3つ大きな問題がある。
一つに、ナベック星は今内紛状態でそれを統率できる強力な力を持つ奴が必要だということ、それに総悟が選ばれた。
二つ目は王女が総悟に好意を持っていて、それに対して総悟が拒否を示していないことだ。この点に関しちゃ、これを拒否すれば地球に戦争を仕掛けると脅されてる可能性が高い。
三つ目は総悟と万事屋の意思だ。総悟が万事屋から戻ったのは朝だ。昨夜二人の間に何かあったのは間違いねえと踏んでる。この三つ目が一番重要だと俺は思ってる」


ダダダダダダ!ガタン!大きな音を立てて戸を開けたのは山崎だった。
「副長!手がかり見つけました!!!!!」
全員が注目する。

「万事屋の旦那、昨日の夜の記憶が一切無いって言ってたんですよね。忘れ種です!!!
取り調べ室から在庫がなくなってます!
それにほら、実験とか何とか、副長と俺がこの前飲まされたじゃないですか!」

「どーゆーことネ!」「どういうことなのトシ?」「教えてもらえませんか、山崎さん」
事情を知らない三人に土方が忘れ種の効用と効果、記憶を引き出すカギについて話す。

「ただ問題は何を万事屋に食わせれば記憶が戻るかだ」

「任せてください!それも調べ上げました!!パッションフルーツです。種が紛れ込ませやすいし、さすが沖田さん抜かりないですよね。沖田さん馴染みの和菓子屋に大福の特注品を頼んでました。居酒屋でそのパッションフルーツ大福を旦那の口に突っ込んる所を給仕係が見てます!」
意外にいい仕事するよね。山崎。


「銀さん甘くもないモンは大嫌いだってパッションフルーツ一生食べないって言ってたことあります。だからだ」

「パフェに入ってて泣いて怒ってた事あったアルな」


「よし、俺がそれ手に入れるから新八くん。一緒に銀時のところに行って食べてもらおう。昨日何があったか思い出してもらわねば」

「はい、近藤さん」


土方が神楽に向かって軽く頭を下げる。
「わりーが、お前に頼みがある。そよ姫にコンタクト取ってくれねぇか。こんなことで外交に口出すのは何だが、やはり出来ることはしておきたい。例えば結婚が破談になったとしても、地球侵略を思いとどまってもらえるような交渉できないか何とか考えてもらいたい」

「ラジャー!神楽様に任せなさい!」

「あとな、銀時の本音が分かったら、それも姫様に伝えてやってはくれねえか。総悟には、添い遂げたい相手が別にいるってな。頼む」
今度は土方が深々と頭を下げた。


皆、気持ちは一緒だった。あの二人が惚れ合っていていることは見ていて分かる。
自分を後回しにする二人が自分たちの気持ちに蓋をしていることも見て取れる。
だからこそ、周りが協力して二人を幸せにしたい。幸せな二人を見たい。

沖田視点―俺の護りたいもの―

「沖田様。失礼いたします。ナベック星アシッサ王女より通信が入っております。私共は外に出ますので、心置きなくおふたりでお話し頂けますか」
盗聴器仕掛けてるくせによく言うよ。


「へいへい。どーぞー。こちら沖田」

大画面に王女の顔が映し出される。小さい画面で俺の顔も見られるな、ちゃんと取り繕えてるか確認するのにはもってこいだ。

『沖田様。どうしてこんなことになってしまったんでしょうか。どこからこんな噂が・・・』
王女様は知らねーって訳だ。地球の官僚たちと王女の側近が早くこの結婚まとめて、外交問題と国内の混乱を合わせて収束させたいと願ってることを。

「丁度いいじゃないですか王女。遅かれ早かれこうなるんだから同じこと」

『でも、沖田様!あなたは』

王女の通信を途中で遮って話し出す。
ネタバレは困るぜ、王女さん。盗聴器でどっちにもバレバレだからな。
「とにかく、祝言上げるなり何なり、色々準備もありまさァ。早めで良かったんじゃねーですかィ。アンタの星だって、長いこと国王不在って訳にはいかねーでしょーが」

『本当によろしいのですか?』

「もう決めたことなんで。護りやすよ、約束も国も。俺ぁ侍なんでね。またこっちからも連絡しますから、ひとまず今日は寝てもいーですかねィ」

『地球はそんな時間でしたね。ごめんなさい。ではまた明日。おやすみなさい』
通信が切れて一安心だ。

俺はアシッサ王女が地球訪問した時の警護担当だった。
いつも震えて怯えている様子に、つい声をかけちまった。
「王女様、なにが怖いんです?地球にいる間はこのおまわりさんが守りやすよ」
王女は少し肩を下げて、力を抜いたようだった。

それから2週間警護をするうち、王女は身の上話を俺にしてくるようになった。
同じ年齢だと分かった時からだったかもしれない。

ナベック星は内紛状態だ。理由は王女の父テンテ国王の突然の死去。暗殺の疑いもあるとか。
政府を倒さんとするテロ組織がこれに乗じて活発化したらしい。
地球訪問も実は命を守るために側近が外交の名のもとに派遣してくれたそうだ。
なぜ地球か、と言ったらテロ組織はナベック星支配を皮切りに全宇宙制覇を狙っていて、その後に虚を倒した地球にポテンシャルありとの考えから一番に地球侵略を狙っているとのことだった。

厨二病かよ!

王女様は地球に秘密裏にその危機を伝えるためやってきたそうだ。
ただ地球側はそれを信用しちゃいない。王女主導だろうがテロ組織主導だろうが、ナベック星は地球侵略を目論んでいると理解している。

王女がナベック星に帰る日。王女と側近がいる部屋に俺だけが呼ばれた。

「沖田様、この度無事に地球訪問を終えられましたのも、あなた様のおかげです。アシッサ王女を護ってくださったこと心から感謝いたします」

「俺だけじゃねーですよ、一番隊の力でさァ」

「あなた様の事を少し調べさせていただきました。沖田様は地球最強の剣士であると。江戸を支配下に置かれる統治をなさったことがあると」
それ、イボのとき。俺全然覚えてない。

「王女の片腕となって、一緒にナベック星にお越しいただけませんか?あなた様ならテロ組織と対抗できる。もしできるなら、アシッサ王女とご結婚いただきたい!国王として手腕を振るっていただきたい!」
は?飛躍しすぎじゃねーの?

「なんてことを言うの長老!沖田様のお気持ちも考えずにそんな勝手な!」
その通りだ、王女さん。

「だいたい、俺一人行ってもどうにもならんでしょ。宇宙最大の星でしょ」

「いえ。あなたならできる。われわれには20万の政府軍があります。テロ組織もほぼ同じく20万の軍隊。ただ統率力が違うのです。圧倒的統率力のあるリーダーがいれば、必ず我々は勝利します」
長老って呼ばれてるだけあって、なんか説得力あんな。

「それに王女はあなた様を好いておられる。長年見守っていた従者として分かります。国王になっていただけませんか!」
ええー!ちょっと王女助けてって、王女さん耳まで顔真っ赤にして顔覆ってるよ。
なんでこんな短期間で知らねー奴を好きになれる訳?その神経分かんねーよ。

「いや、ちょっと。俺だって地球でいろいろあるんですよ。ゴリラ守らなきゃいけなかったり、マヨラー殺さなきゃいけなかったりで。真選組から抜けらんねーですよ。」
あと、せっかく平和になって。俺ぁ、また旦那たちとバカやって過ごしたい。

ガタン!扉が突然開いて、地球側の官僚が入ってきた。隠しカメラか。
「失礼ながらアシッサ王女様、実はこの者のおります真選組は解散させようと思っていた組織でございます。ですから、ご安心なされませ」
コノヤロー、どういうことだ!!

クソ官僚が俺の方を向いて話す。
「一介の地球人が王女様と結婚できるなど、身に余る光栄。断る理由がありましょうか。あるならば、我が地球政府がそれを全力で潰します。そしてこの婚儀を機に、ぜひともナベック星と地球に和議を結んでいただきたい。今後一切、ナベック星が地球に侵略戦争を仕掛けることはしないと、お誓いいただきたい!」

「おお!それならこちらも願ってもない事。王女、どうかどちらの星も平和になるこの結婚をご承諾くださいませ」
おい長老!俺の意向無視すんじゃねーよ!!!

「そんな…でも…」
王女もハッキリしねーな!

俺が口を開いた瞬間、クソ官僚は俺に近づき小声で言った。
「君に断る権利はない。もし断ったなら、真選組局長、副長、はじめ全員国賊として打ち首だ。ただ、もしこの話を受けるなら、真選組存続と局長以下全員の身の安全を保障してやってもいい」
きたねえ。


「王女、少し時間をいただけやせんか」
とにかく今は時間が欲しかった。

「ええ、もちろんです!突然のことですから」
笑顔ですね、王女。このせいで今俺ぁ、脅されてんですよ。

「沖田様、テロ組織との交戦は激化しております。3か月以内にお答えをいただきたい」
長老が深々と頭を下げる。平和を願う気持ちと、王女を思う気持ちが伝わってきて胸が痛くなる。

そんなことがあったのが2か月前だった。
俺は近藤さん、土方に相談した。クソ官僚に脅された内容を除いて概要を説明するにとどめる。
近藤さん、土方さん、松平のとっつあんまで、俺のために動いてくれた。
政略結婚なんか止めろ、お前は惚れた相手と添い遂げろ。そう言って必死に動いてくれた。
でも状況は変わらなかった。


ただ、俺の気持ちには変化があった。
俺の護りたいものってなんだろうな。考える時間が多くなる。
近藤さんは前からだ。それと虚と戦ったからこそ感じる、平和になったこの世界を護りてぇ。
この世界を護ってくれた旦那たちの幸せを護りてぇ。
それにゃ、俺が婿入りするのが一番だ。

そこでふと考える。俺が添い遂げたい相手って誰だろな。
頭に浮かぶのは銀髪、木刀、片腕抜いたスンボラ着たのあの男。
いやいや男同士だから、このご時世結婚できるとはいっても、あのぐーたらと添い遂げたいってどうよ!

きっと、旦那に添い遂げる相手を見つけて欲しいんだ、俺。
いい加減、旦那自身に幸せになって欲しい。俺たちを護ってくれた大切なお人だから。
そう思って居酒屋で旦那に話したことがあった。
でも実はその時、俺は気づいちまった。

俺が旦那の添い遂げたい相手になりたい。
おれの“しっくりくる”運命の人はアンタでした、旦那。

クソ官僚が俺に連絡をしてきたのはそのすぐあと。
内容は真選組が不穏な動きをしているから、結婚に関するスクープ報道を出して俺を軟禁するというもの。
断れば近藤さんが危険だ。
身辺整理をしろと言われて猶予があった2週間。
俺は忘れ種を使って、旦那に気持ちを伝えることにした。

抱いてもらえるなんて、想いが通じてたなんて夢にも思わなかったが、それだけで充分だった。
俺は旦那にさよならを言って覚悟を決めた。

銀時視点―あの夜の事―

俺は沖田くんのことどう思ってんだ。
正直言って、コイツに幸せになって欲しい。それしか考えてなかった。
ねーちゃんの事件の後から、沖田くんを幸せにしたくてしょうがなかった。

その相手は俺なんかじゃねーと思ってた。
だってそうだろ。もっと相応しい相手がいるわ!


・・・違うな。目を背けてただけだ。
本当は沖田に「添い遂げる相手がいないのか」と聞かれたとき、心の中で答えは出てたんだろうと思う。
“しっくりくる”相手が見つからねー、誰かいるような気がするなんて言っちまった。
“しっくりくる”相手はもうずっと前から分かってたはずだ。
土方の言う通り、俺は沖田くんが俺のものにならないことに嫉妬していた。真選組のものだってことが悔しかった。


なんで気付かなかったんだ!なんで言えなかったんだ!
へんなプライド邪魔してたんだろ、俺本当にバカだよ。
お前に惚れてる、直接言いたい、言いたかった。
まだ、間に合うのか?


「銀さん!」「銀時!」新八と近藤だ。

「これを食べてください!」「これを食え!」ちょっと、何で二人同時で話す訳?
しかもなに!俺が一生食べないと誓ったパッションフルーツ!!食うわけねーだろ、嫌いなんだよ!!!

「「いいから早く!」」あ、ふたり揃った。なに?お妙好きが息あっちゃった?

無理やり口に突っ込まれた!!デジャブ!!!
沖田くんにもされたよ!その仕打ちー!!

酸っぱい果肉が喉を通っていくのと同時にあの夜の記憶が蘇ってきた。
「思い出した」

「そうなんですよ、銀さん!これで沖田さんがいなくなる前の日の記憶が戻るそうなんです」
新八が俺をのぞき込む。
「どうなんだ銀時、何か総悟は言ってたか?」
今度も新八の後ろから覆いかぶさるように顔を出してくる。


「沖田くん俺と添い遂げたいって言ってくれた」
「俺もお前が良いって言ったわ」

「やっぱり銀さんたち、想いが通じ合った仲だったんですね!沖田さん、最後にその事銀さんだけに伝えてたんですね!」
「そぉごー」
新八も近藤も泣いている。

「けどな、朝あいつ、さよなら旦那って言って出ていった。アイツはナベック星に行くつもりだ」
むかっ腹がたってきた!
ふざけんな!俺に幸せになって欲しいとか言ってたよな!
お前と一緒じゃなきゃ幸せになんてなんねーんだよ!!!

「取り戻しに行くぞ。俺の一番大事なモン」
立ち上がって木刀を腰に差す。

「行きましょう!」「行こう!」新八と近藤も立ち上がる。

「銀さん、あと他に何か思い出したことありませんでしたか?誰かに脅されていそうだったとか、沖田さんがこんなことしていたとか」

思い出したことはひとつ。

「想いが通じ合って、俺、沖田くん抱いたわ」
ドカーン!!!!!
近藤に殴られ俺は3メートルほど飛んで気絶した。

土方・神楽・そよ姫・信女―沖田奪還計画―

神楽から事情を聴いたそよ姫は驚いている。
「まあ。てっきり私は沖田さんアシッサ王女様と愛し合ってるものだとばかり思ってました」
そよ姫のびっくり顔よく見るな。

「一番状況を分かっている担当官僚から事情を聴きましょう。信女さん、津野官僚をこちらに呼んでいただけますか」


「そよ姫様。この件は沖田殿も望んでの事。今更どうにもできません。そんなことをしたら我々はナベック星に侵略されます!」
官僚は困り顔でそよ姫を説得している。その様子を見て、信女と土方が気付く。

「津野殿。この話が一番最初に出たのはアシッサ王女地球ご訪問の最終日と聞いております。どのようなお話が出たのでしょうか、お聞かせ願えませんか?」
土方がドスの聞いた声で唸るように話す。


「・・・それは・・・」

「津野。外交に関する交渉はすべて録画・録音済み。最終日のデータを今ここに届けさせてる。自分の口から伝えるなら今のうちだけど」
信女は官僚に刀を突きつけながら言っていた。


「申し訳ございません!地球のために、姫様のためになればと思い、私が勝手なことをいたしました!」
土下座して、涙でぐちゃぐちゃになりながら、事の一部始終をその場にいる全員に伝えた。

「真選組と地球のためか。まあ、これで真選組の安全は護られた、でいいですよね姫様」
そよ姫は土方に向かって、もちろんとニッコリ笑って手で丸を作る。

「ナベック星のテロが収まれば、地球侵略も結婚も無しでいいってことよね。沖田じゃなく、他の人を派遣するのはどう?」
信女が案を出す。

「マダオがいいアル!あいつは地球を救ったヒーローね!」
本気ですか!神楽ちゃん。

「その代わり、私も行く。星海坊主もバカ兄貴も連れていく、一家総出でテロ組織なんて潰してやんよ!」

「わあーすごーい!」そよ姫が満面の笑みで手をたたく。

「これでほとんどの問題は解決する。後はアイツらの気持ちの問題だ」

「トッシー、ゴリラに連絡してサドがいるホテルに銀ちゃん連れて来させるアル」

「爺や、マダオさんも呼んでください、お願いします!」

全員で沖田が監禁されているホテルに向かった。

沖田視点―添い遂げる相手―

外がやけに騒がしい。何してんだ?
ドーン!!
え?ええ?えええ?万事屋3人に近藤さん、土方。そよ姫と信女もいるってどういう事だ?
あとマダオ…なんでいんの?


「アンタら何してるか、分かってるんですかィ。こんな事したら真選組も地球も危ねえ!」
何やってんだよ!俺の気も知らねーで。


信女が勝手にアシッサ王女と回線を繋ぐ。何してんだよ!

「アシッサ王女様、突然のご無礼申し訳ございません。徳川そよです。
ご事情お聞きいたしました。
どうか、ナベック星のテロを鎮めるための戦士の派遣をお許しいただけませんでしょうか。
ここにおります最後の侍マダオ長谷川泰三は地球を救った勇敢な戦士。そして、宇宙に名高い星海坊主とその血を引く夜兎の2名があなた様の星をお守りするために参ります。
ですからどうか、この沖田との婚儀をもう一度、再考くださいませんか」

『おお、それは百人力じゃ!アシッサ王女!我々に勝機が巡ってきましたぞ!』
王女の後ろですべてを聞いていた長老が喜んでいる。
なんだよ、俺の覚悟どうしてくれんだ。


王女がゆっくりと話し出す。
『沖田様。あなたは地球に無くてはならないお人なのですね。そして、きっと貴方には、添い遂げる相手がいらっしゃるのではないですか。ずっとそう思っていました』

「それは…」言えねえよ。

「俺だ!王女様!!!」
何言ってんだよ旦那!

「すまねえ、アンタの惚れた相手は、ずっと前から俺が惚れてました。後先の問題じゃねーが、俺ぁコイツじゃねーとしっくりこないんです。コイツ以外に添い遂げる相手が見つからないんです」
旦那が土下座する。
「だからお願いします!結婚は諦めてください!!コイツを俺に下さい!!!」

気付いたら俺も土下座していた。
「王女、すいやせん。侍なのに約束を破りやす。俺もこの人と添い遂げてぇんです。許してはもらえやせんか」

『素敵なお二人です。わたくしはお二人を祝福いたします。どうか末永くお幸せになってください』
王女の目からはらりと涙が落ちた。


ナベック星のテロは収まり、王女は勇敢な指導者として国民に絶大な支持を受けるようになったというニュースが入ってきた。
宇宙最大の星、ナベック星と友好関係を築いた地球に侵略しようなんて輩はもう出て来ないだろう。
英雄マダオは地球に帰ってきてから、またも異常にもてはやされている。平和だな、地球。


「いやー、子供はいつだなんて、周りがうるさいんだよねー。俺まだ総悟くんとイチャイチャしてたいから、子供はもう少し後でもいいよねー」
旦那の頭の中も平和だ。

「アンタどーでもいーですけど、仕事しなせぇよ。老後が大変ですぜ」
子供作ったら教育費やらなんやら、金かかるし、ホントにちゃんとこのお人は将来設計してるんだろか。

「そうだな、俺たち一生添い遂げるんだから老後のこと考えるのは大切だ。幸せな未来しか見えねーけどな!」


まあいいか。何とかなるか旦那となら。
旦那に幸せになって欲しいって希望も、しっくりくる相手と添い遂げたいって希望も、俺は旦那に叶えてもらっちまった。
案外旦那も俺も、運持ってるんじゃねーかな。だからなんとかなるっしょ!


おしまい。

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