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【東京六大学野球】2022年春季リーグ戦 序盤振り返り

こんにちは、宜野座パーラーです。4月9日に開幕した東京六大学春季リーグ戦ですが、第3週まで終了し各大学2カードずつ消化しました。ここでは、現時点での各大学の戦いを振り返っていきます。

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 開幕前に個人的注目ポイントについて書いた記事です。

 第3週終了時点での順位表とチーム成績は以下の通りです。まだ序盤ですが、慶大と明大が勝ち点2で一歩リードしています。チーム成績で見ても、慶大と明大は特に打撃成績でかなり良い数字をここまで残しています。

慶應義塾大

勝ち点2でのスタートも投手陣は不安だらけ

 結果だけ見れば4勝1分の勝ち点2で、今季も好調に滑り出したかのようにも見えますが、投手陣はかなり苦しんでいます。橋本達弥(④長田)増居翔太(④彦根東)は揃って本調子ではなく、生井惇己(④慶應義塾)もここまでベンチ入りから漏れています。橋本達は開幕戦の東大1回戦に先発しましたが、立ち上がりに3失点するなどパッとせず、2カード目の立大戦ではリリーフに回りました。要所を何とか抑え、防御率こそ0.63ですが、K/9は3.14(昨年は8.61)、BB/9は7.53(昨年は3.91)といずれも大幅に悪化しています。増居も2勝はしていますが、BB/9は8.50と毎回のように四球で走者を出しており、昨年までの安定感は全く見られません。
 現状では生井を欠く以上、ロングリリーフもできる橋本達をブルペン待機させるのがやはりベターな戦略だと思います。空いた先発の1席を誰が埋めるかという点では、ルーキーの外丸東眞(①前橋育英)が立大2回戦で初先発し5回2/3を3失点と、そこそこの結果を残したのは好材料でしょう。

廣瀬や朝日など好調な上位が打線を牽引

 苦しんでいる投手陣の一方で、野手陣はここまでかなり順調です。ここまで全試合で3番に座る廣瀬隆太(③慶應義塾)はリーグトップの3本塁打を記録し、特に立大1回戦では値千金の逆転3ランを放っています。また、2番や7番に入ることの朝日晴人(④彦根東)は打率.500、4番の下山悠介(④慶應義塾)も出塁率.542と、簡単に途切れない打線で効果的に得点を積み上げています。積極的な打撃が持ち味の切り込み隊長・萩尾匡也(④文徳)も7打点と、下位打線から作ったチャンスも活かせているのは強みです。 
 また、野手陣でも新戦力の活躍が見られました。栗林泰三(③桐蔭学園)は立大1回戦で代打起用されると、リーグ戦初打席初安打を記録しました。さらに続く立大2回戦ではスタメンに抜擢されると、見事なホームランを放つなど、次週以降も活躍が期待されます。

明治大

蒔田、村田の両投手が安定感のある投球を見せる

藤江星河(②大阪桐蔭)の離脱もあり不安視していた投手陣ですが、ここまで蒔田稔(③九州学院)村田賢一(③春日部共栄)がともに活躍を見せています。蒔田は早大1回戦で2失点完投勝利、同3回戦では先発で4回1失点と、エース級のフル回転でした。特に完投した早大1回戦では6回以降をパーフェクトに抑え、終盤になるほど球威が増したようにも見えました。ここまでのK/9は10.89は法大・篠木に次いでおり、高い奪三振能力を誇っています。
 また、村田もここまで好調です。早大2回戦こそ敗戦投手になりましたが、6回2失点と先発としての仕事は果たしました。翌日の同3回戦では2番手としてロングリリーフすると、5回1失点の好投で今季2勝目をあげました。蒔田と対称に奪三振は少ないですが、ここまで16イニングで四死球なしの抜群の安定感です。

中軸の破壊力は欠くも、宗山を中心に好調な野手陣

 慶大に次ぐチーム打率.301の野手陣も総じて好調な滑り出しになったと言えるでしょう。特にここまで絶好調なのは宗山塁(②広陵)です。昨季は打率.378でベストナインに輝きましたが、それを大きく上回る打率.556、11打点はまだ気が早いですが目下二冠王です。今季は3番に座り、2本塁打を放っており、長打力も兼ね備えてきたように見受けられます。
 また、今季は1番や2番に入る上田希由翔(③愛産大三河)も打率.409、3盗塁と、中軸に座った去年までと異なり、足も活かした活躍を見せています。出遅れを心配していた山田陸人(④桐光学園)もふたを開けてみれば打率.350と、ヒットを打つことに関してはさすがの技術ですが、加えて長打も増えてくれば言うことなしでしょう。さらに、ルーキーの瀬千皓(①天理)も1本塁打、長打率.588と、大学野球にしっかり食らいついています。

法政大

篠木の素材はピカイチも、投手陣を負わせるのは時期尚早

 開幕戦の早大1回戦で見事完投勝利の篠木健太郎(②木更津総合)がリーグ随一の素材であることに異論はないでしょう。ただ、投球術にはまだ若さが見られ、力配分やマウンドさばきなど、学ぶことは多いと思います。常時140キロ台後半以上で、150キロ超も連発するストレートの力強さが魅力ですが、立大1回戦では甘く入った球を狙われ痛打される場面も見られました。
 まだ2年生の篠木にフル回転を期待するのは時期尚早で、軸となるべき投手がもう1人必要でしょう。ただ、開幕週は登板のなかった扇谷莉(④東邦)が立大2回戦で先発に抜擢されましたが1回を持たずにノックアウトされるなど、先発2人目を確立できていないのが気になります。扇谷を含め、尾﨑完太(③滋賀学園)塙雄裕(③常総学院)武冨陸(③日大藤沢)らの中から誰か1人でも抜き出てくれないと、リーグ戦後半にかけて、もつれた展開になると厳しいでしょう。

野手陣では齊藤大や浦の復調次第か

 野手陣もここまで、いまひとつ乗り切れない展開が続いています。特に苦しんでいるのはドラフト候補で主将の3番・齊藤大輝(④横浜)と4番の浦和博(③鳴門)です。ここまでの4試合で齊藤大は打率.067、浦は打率.176と、主軸の不調が勝ち切れないチーム状況に直結しているように思えます。
 1番の宮﨑秀太(④天理)は出塁率.444、5番の今泉颯太(③中京大中京)も打率.333、下位の野尻幸輝(④木更津総合)も打率.100ながら出塁率は.375とそれなりに状態の良さそうな選手もいるだけに、その前後を打つ選手の復調次第で得点力が上がる可能性は大いにあります。現状の投手力に鑑みれば、打ち勝つ展開がメインかと見込んでいます。第4週以降に状態が上がってくることを期待しています。

立教大

荘司が大エースの活躍も、池田が離脱なら投手陣はスクランブル体制に

 開幕前の段階ではまだ荘司康誠(④新潟明訓)の成長が半信半疑でしたが、もうすっかりフル回転で大エースの活躍です。初戦の法大1回戦で7回1失点の勝利投手になると、2カード目の慶大1回戦でも勝敗つかずも7回無失点の好投を見せ、さらに同2回戦では同点の最終回に登板し三者凡退で締めました。しかし3連投で3回戦にも先発すると、さすがに本調子ではなかったか、5回4失点と慶大打線に捕まり敗戦投手となってしまいました。特に慶大戦では際どいコースを攻めた結果の四球も見られ、BB/9は4.95とやや高めですが、WHIP1.05は十分の数字です。
 荘司と並んで先発での活躍が期待されていたのが池田陽佑(③智辯和歌山)ですが、法大2回戦で走塁中のアクシデントで途中後退し、翌週の慶大戦ではベンチ入りから漏れています。このまま離脱が長引くと、荘司の連投も含めて投手陣は早くもスクランブル体制になりそうです。慶大2回戦では島田直哉(④龍谷大平安)が先発しましたが、4回途中で降板し試合を作ることができず、まだ不安も残ります。また、沖政宗(②磐城)はここまで3試合で未だWHIP0.00の好投を続けており、宮海土(④國學院栃木)も四球こそ多いですがK/9は14.40と相変わらず高い奪三振能力を誇っていますが、先発として長いイニングを任せられる投手がいないのが懸念材料です。

状態は悪くないが、拙攻が目立った野手陣

 ドラフト候補の4番・山田健太(④大阪桐蔭)が打率.357、2番の宮﨑仁斗(④大阪桐蔭)も1本塁打7打点と、個人で見ればそこまで状態が悪いようには思えない野手陣ですが、打線として見たときにあと一本が出ない場面が目立ちました。特に逆転負けを喫した慶大1回戦では、9安打8四死球で作った再三のチャンスを活かしきれず、終わってみれば2得点にとどまり、残塁は15を数えました。ここまで5試合平均での残塁数は10.4と、いまひとつ打線が嚙み合わない展開が続いています。また、大当たりしている選手もおらず、相手から見たときにあまり怖さがないようにも感じられます。
 リーグ戦後半に向けて、リードオフマン・道原慧(④駒大苫小牧)の復調は必須でしょう。ここまで打率.174、出塁率.240にとどまっており、持ち味の走力も塁に出なければ活かしきれません。

早稲田大

齋藤正と加藤が粘るも、ここまで1勝止まり

 プロ入りした先発2本柱が抜け、今季は「誰が先発してもリーグ戦初先発」という状況でのスタートでしたが、ここまでは齋藤正貴(③佐倉)加藤孝太郎(③下妻一)が踏ん張って投げています。加藤は明大2回戦で6安打完封のリーグ戦初勝利をあげるなど、防御率0.60、WHIP0.93と抜群の安定感を誇っています。一方の齋藤正は2カードともに1回戦で先発起用され、エースとしての活躍を期待されていますが、ここまでは3敗を喫しています。
 リリーフ陣では伊藤大征(③早稲田実業)中森光希(②明星)が3試合で防御率0.00と好投を見せています。明大1回戦でデビューしたルーキーの伊藤樹(①仙台育英)も2試合目の明大3回戦では3イニングを任されるなど、徐々に期待感は高まっており、展開次第では今季中の先発登板があるかもしれないです。

打線では蛭間と中川卓の復調に期待

 ここまでリーグ5位のチーム打率.212に沈んでいる早大ですが、中心を担うべき蛭間拓哉(④浦和学院)中川卓也(④大阪桐蔭)の不調が響いています。蛭間は打率.200、中川卓は打率.158と2カードを消化した時点でまだ本調子とは程遠い成績にとどまっています。特に蛭間はここまで5四球と簡単には勝負してもらえない状況にはありますが、それはスラッガーの宿命でもあり、その中でなんとか結果を残してもらいたいところです。
 ここまで打率.158と苦しんでいますが、中村将希(③鳥栖)にも注目です。中川卓をセカンドにコンバートさせ、不調であっても3番でフル出場させるだけあって、チームからの期待も感じます。右の大型内野手としてスケールがあり、実際に見てみると、我慢して使いたくなる雰囲気を感じる選手です。

東京大

今年のチームは一発長打からの得点狙いか

 昨年はチームで春に24、秋に19で合計43の盗塁を決め、積極的な盗塁から得点を狙っていることが明確な打線でした。他大学に正面から立ち向かうだけでは勝ち目が薄いのは事実で、自分たちの強みを最大限に生かした戦略だったのでしょう。現に春秋1勝ずつ挙げており、十分に効果的だったと評価できると思います。
 では、今季は何を売りに得点を狙っているのか。個人的にその答えは「長打」ではないかと踏んでいます。荒削りですがバットが振れている選手も多く、シンプルな攻撃力は例年以上に高いチームだと思います。ここまで完封負けもなく、プレーしている選手たちも「何とか点は取れる」という感覚で臨めているのではないでしょうか。ただ、打率.417の宮﨑湧(④開成)以外の主力は軒並み打率.200を下回っており、もう少し確実性を高められないと今季の1勝、その先の勝ち点奪取は厳しいかもしれません。

投手陣は基本通りに四球を減らすところから

 今季もやはり投手陣が苦しい状況が続いています。勝てる可能性が高いのはエースの井澤駿介(④札幌南)が先発する試合でしょうが、今季は立ち上がりが課題になっています。特に明大1回戦では初回に2四球からピンチを招き、一挙5失点の立ち上がりとなってしまいました。2回以降は見事に立ち直りましたが、6回5失点で負け投手となりました。被安打が多すぎるわけではないですが、BB/9が12.27ととにかく高く、毎回のようにピンチの場面を迎えているようでは、やはり簡単には勝てないでしょう。
 井澤に限らずチームでのBB/9も9.00と、平均して1回に1個の四死球を与えていることになります。四死球からピンチを招き失点することもそうですが、四死球が多いと球数も多くなり、明大1回戦の井澤のように立ち直っても長いイニングを投げさせることができない点でもかなり厳しくなります。投げてみなければ分からない投手が多い現状に鑑みれば、状態の良い投手をできるだけ長く引っ張りたいところですが、今季も苦しい台所事情が続きそうです。

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