活かせなかった掛け違い。基準と構造把握の関係性。

今回はマリノス戦2失点目のシーンでの伊藤敦樹選手のポジショニングから、「基準」と「構造の認識」の関係性を考察したいと思います。

そうかもな?くらいの気持ちで書いているので、そんな感じで読んでください。

シーンの時系列

1.岩波はマルコスの強いプレッシャーを受けるもパスで回避、そのまま逆サイド方向にズレてマルコスの背後を取る
2.敦樹は背後の相手よりも少しボール寄り、マーカーの出足が速かったため強いプレッシャーを受けてボールを奪われる

岩波、敦樹、マルコスの関係性

岩波とマルコス

まずは1のプレーについて。

岩波は幅と深さを取らなかったことでリリースまでの時間が短くなっている代わりに、マルコスの距離が近い分、背中を取るために必要な移動距離が短く済んでいる。

また、マルコスは強いプレッシャーをかけたことによって動き直しがスムーズにできないため、岩波は一時的だが完全にフリーになっている。

奪いにいっても回避されてしまうところに強いプレッシャーをかけると、周りにこういう掛け違いが発生しやすい。

活かせるかは別として。

仮想トライアングルでワンツー

パスを出す前の岩波をA、出した後マルコスの背中を取った岩波(のいる場所)をA’、敦樹をBとして、図形的に考えてみる。

この時、A’とBが相手に同時に消される状況にならなければ、トライアングルでマルコスのプレッシャーを回避できる。

そう考えると、敦樹はマルコスに完全には消されない(ここでは岩波が横≒A’方向プレッシャーをかけられているので)縦関係=縦軸上に近いポジショニングをとれている。

岩波もボールの至近距離に壁を作られない程度に幅と深さを確保して、引きつけてからパスできている。

“構造だけで言えば”敦樹が岩波にワンタッチで返せれば一番スムーズに中央や逆サイドへの展開できるシーンだった。

相手から離れる代わりに難しくなること

ここで岩波がマルコスのプレッシャーからより離れるために幅と深さを重視しすぎると、マルコスの背中も遠くなるため、A’に移動するには距離がある。

1stDFを外して相手を一気に混乱に陥れるような駆け引きは、離れるほど難しくなる。

代わりに西川がA’ の延長線上にポジショニングすることもできるが、プレッシャーを最後尾で回避できても、相手にとっては撤退してやり直すスイッチを入れやすい状況で、前進はできてもラインブレイクは比較的難しくなる。

相手にとって奪える気がするけど奪えない、ほんの少しのかけ違いを使って前方から脱出できれば、相手をできるだけ長い時間高止まりさせることができる。

まあ、ここは目的次第で、相手のプレッシャーを止めるだけでいいならそれでいいけど。

また、CBが広がるとネガティブトランジションのリスクは高まる。

まあそれも、奪われなきゃいいけど。

実際このシーンではボールを奪われてやばいとわかった槙野は頑張って戻って埋めようとしたが、その動きの逆を取られている。

マルコスと同様、強度の高い動作は外されやすい。

敦樹の選択と足りなかった駆け引き

実際には敦樹は前方にボールを蹴ろうとした。

どちらかと言えば背後にいるマーカーに対してどうプレーするか考えていた気がする。

背後のマーカーと縦関係気味だと、プレッシャーの方向を静的に捉えれば、確かに斜め前へのパスは出しやすく思える。

ただ、敦樹はマルコスから消されないようにボール方向にスライドしているので、完全に縦関係ではなく、扇原はボールと敦樹をほぼ同じ直線上に捉えることができる状態。

こうなると、逆サイド方向の可能性を作りにくい。

敦樹は裏を狙えるような状況でもないので、扇原はボールが出ると同時に前向きにプレッシャーをかけることができている。

特にマルコスがプレーを方向づけつつ、自分もマンマークされているなかで、割と難しいプレー選択と事前の準備になってしまったと言える。

どうやって基準をきめるか

多分、敦樹は岩波とマルコスと自分の関係を認識していない。

ここからは、僕にプレー経験がないのも含めて想像なんだけど、何を基準にポジショニングしてるかによって、構造をどのように切り取るか、その後のプレーの選択肢は大きく変わる気がする。

基準を変えて相手を拡散させる

相手が全体でプレッシャーをかけてくる場合、プレッシャーを拡散させるのは応手のひとつ。

特に中盤のように、後ろを向いていて背中に相手にはっきりつかれている時には、相手守備陣の、自分より外側にある縦横斜めのさまざまなラインを目印に、そこでボールを受けたらどんなことが起きるか予め想定しながら、「外側にあるラインに一つずつ移動する」とスムーズ。

列落ちなどがこれにあたる。

相手を最後まで引き出せたなら、結果的に疑似カウンターっぽくなる。

マルコス基準で2段階の列落ち

今回のシーンでいえば敦樹は、目印にするライン、基準になる相手を自分より後ろに設定することができる。

最寄りの目印として、マルコスの縦軸上(縦関係になれる位置)は選びやすい可能性になっている。

ここを基準にすると、自分+岩波on動き直しが難しいであろうマルコスの2on1であったり、西川を含めた3on1の関係は比較的認識しやすい気がする。

扇原がついてくる場合、岩波から西川に下げる選択と組み合わせて次の目印としてマルコスの横軸(横関係になれる位置)に移動すると、相手を狭いエリアに複数人密集させて他を手薄にする可能性も見えてくる。

まとめ

どこにポジショニングするか決める時、相手をその基準にすることと、一つの基準に複数の目印を想定できるのでは、という内容でした。

敦樹は、人と人の間にポジショニングを取ることも多く、相手を基準にポジショニングを調整している印象があります。

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今回はここまで。

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